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愛の戦士登場! いざアシスターのアジトへ

「もう身体は大丈夫か?」

魔剣の守護者との戦いで衰弱してしまったエメラダを回復させるため、俺達は遺跡の内部で休憩をとっていた。

「えぇ。もう大丈夫よ……」

口では大丈夫と言いつつもエメラダはなんだか元気がない。

「どうした? まだ体調が優れないなら無理しなくていいんだぞ。エメラダが元気になるまでそばにいるから」

「身体はほんとに平気よ」

エメラダはばつが悪そうにもじもじしている。

「さっきは……その…、情けないところを見せたわね」

「一緒にいてくれる?って可愛いくおねだりしたことか♪」

エメラダの顔が一気に紅葉のように赤くなった。

「あれは……その……、なんていうか…嘘ではないんだけど……」

こんなことめったにないのでここぞとからかう。

「デレたよね? デレたエメラダも可愛かったな~♪ なんならもう1回言ってくれてもいいんよ♪」

ますます赤くなって身体がぷるぷると震えている。

あんまりからかいすぎるとまた魔法で吹っ飛ばされそうだからこのへんにしとこ。

「さて、エメラダも元気になったことだし、そろそろ地上に帰ろっか」

「覚えてなさいよ…」

出口に向かって歩きだした俺にはポツリと呟いた言葉は聞こえなかった。


海の中を再び泳いで戻ったら海岸は伝説の武器を手に入れて凱旋、といった雰囲気ではなかった。

「これは!?」

海水浴客で賑わっていた砂浜は閑散とし、荷物や破壊されたパラソルが散乱していた。その中に倒れたエリナとカトレアの姿を見つける。

「エリナ! カトレア!」

ユイトが真っ先に2人の元へ駆け寄る。

「大丈夫か? 一体何があったんだ…?」

「その2人は暇潰しにもならなかった」

少し離れたところ、監視員の椅子に男が座っている。

隆々とした赤黒い体に頭からは2本の角を生やしている。

「まさか魔人………」

「お前が2人を襲ったのか?」

ユイトは2人に回復魔法をかけながらキッ、と睨む。

「ユイト…気をつけて…」

「あの男……私達の攻撃がまったく通じなかったわ…」

「そいつらはただの暇潰しさ。だが俺の能力『女嫌い(ウーマンヘイト)』は女からの攻撃を一切受け付けないから 虫けら以下だったがな」

男は退屈そうにあくびをした。

「俺の名はニッツ。偉大なるアシスター様の部下だ。

知ってるぞ。お前、勇者ユイトだろう? まぁ、俺の目的はお前じゃないがな」

ニッツは監視椅子から飛び降りる。

「俺の目的はそっちの2人と手にしてる魔剣だ。イーワンを倒したそうだが、奴はアシスター様に仕える我ら『三鬼神』の中で最弱。俺にも勝てるなんてくだらない期待は持つなよ」

まるで今から海に入るかのように準備体操をしている。

「あら!」

体操を終え、俺を見たニッツは驚きの顔で声のトーンを上げた。

「まぁヤダ、可愛いぼくちゃんねぇ。私のタイプよ~ん♪」

「は?」

その場にいる全員の目が点になった。

ニッツはいきなり女口調になって、気色悪く身をくねらせている。

「決めたわ。あなたお持ち帰り決定よ♪ 誰にも邪魔されないところでた~っぷりと可愛がってあげるわ~ん♪ んむぁっ♪」

おえ~げろげろ~。

ニッツが投げキッスを送ってきた。全身に悪寒が走り、ぞわぞわ~と鳥肌が立つ。

「さぁ、私達の愛の巣へ行きましょう♪」

ニッツがこちらに向かって一歩を踏み出した。

「ぎゃ~~~~!!」

俺はくるりと踵を返し一目散に逃げ出す。

「砂浜で追いかけっこなんてロマンチックね~♪ うふふ♪ あはは♪ 待ってぇ~ん♪」

がに股で腕を“く”の字に曲げて腰を振りながらも、ズドドドドッ!とバッファローのように砂ぼこりを立てながら猛追してくる!

「フォックス!」

ユイトが飛び出てニッツを攻撃する。

「うふふ♪ あはは♪」

しかしニッツの皮膚はユイトの剣をガキンッ、と弾き返した!

「無駄よ! 私のもう一つの能力は『愛の戦士(ラブウォーリア)』。恋をすれば全ステータスが10倍になって相手の能力を封じるのよ」

また全ステアップ持ちかよ! しかも10倍って特攻倍率かよ!

「あんぎゃーーー! 来るなーーっ!」

あまりの恐怖に持っていた魔剣で空を斬る。

「きゃんっ!」

魔剣の一振りは蒼白い斬撃波となって、ニッツの厚い胸板を斬りつけた。

「この私にキズをつけるなんてやるじゃないの。ますます気に入ったわ。

私の身体をキズモノにした責任をとってちょうだい、ダーリン♪」

うわあぁっ! セリフだけ聞いたら誤解されそうなことを言いながら追いかけてくるー!

「あははははははは!」

エメラダはお腹を抱えておもいっきり笑っている。

こぉんの裏切り者ーー!

「待ってぇー♪ 私の愛で抱きしめてその柔らかそうな唇をぺろぺろちゅーちゅーしてあげるわぁー♪」

「おんぎゃああぁぁーー! だーれか助けてーーっ!!」

筋骨隆々のスキンヘッドマッチョおっさんに力いっぱいハグされて唇奪われた日には、血の涙流して即行であの世行きだわっ!

「うわっ!」

砂に足をとられて転んでしまった。

「フォックスちゅぁ~ん、愛してるわ~♪」

ニッツが闘牛のごとくズドドドドと突進してくる。

「ちょっ、止めて…ホントに……、うわあぁぁー!」

「さあ、つ~かまえたびゃびゃびゃびゃびゃっ!」

ニッツの体に電撃が走り、ビリビリビリと骸骨が透けて見える。

「なにしやがんだゴルゥァアッ!」

あ、男に戻った…。

「なかなか面白かったわ。だけどそのへんにしなさい」

「なんだとっ! 女からの攻撃は効かないはずなのになぜだ?」

ニッツの能力『女嫌い(ウーマンヘイト)』はどれだけ威力が高かろうが女からの攻撃は一切通じない、と本人は言っていたが…。

「今のアタシにそんな能力は通用しないわ。フォックスは誰にも渡さない」

「あらやだまぁ、恋敵(ライバル)ね、燃えるわ! フォックスちゃんは私が貰うわよん♪」

また身体をくねらせて、腕をクロスする。

「食らいなさい、『愛のパワービーム』」

バツの字にクロスさせた腕からピンク色の光線が放たれる。

とことん何なんだあの男(?)は?

「『巨怪亀水渦陣(ザラタンファルプゥ)』」

「あーーれ~~」

嵐のように荒れ狂う渦柱の中へ光線はあっけなく消え、凄まじい勢いでニッツを飲み込む。

「うそっ!? もう出番終わり? 必ず蘇ってフォックスちゃんを私のものにしてみせるわ………!」

不吉な言葉を残しニッツは灰となって消えていった。

「エメラダ~~」

だーだーと涙を流す。

「アタシに何か言うことがあるんじゃないかしら?」

エメラダは頬を膨らませて俺を睨む。

「うわーん、さっきはからかったりして申し訳ございませんでした~! 恐かったー。今まで生きてきた中で一番恐かったよ~!」

「ちょっ!? どこ触ってんのよ! 分かったから、もう許してあげるから抱きつかないでよ」

柔らかい感触を堪能するゆとりもなく子供のように泣きじゃくった。



ユイトは自分達が直面している世界の危機を解決するため、この世界に存在する4体の神獣ドラゴンに会いに行くと言って海で別れた。

なんか勇者らしい壮大な冒険をしてるな~。

「兄さん、お帰り」

街に戻った俺とエメラダをジョセフとリリルが迎えた。

「無事剣を入手することはできましたか?」

ニカッと笑って背中にかけてあった魔剣を見せる。

「これがかつて勇者が魔王と戦って世界を救ったという伝説の魔剣………」

俺は海底遺跡に向かったときのことを2人に話した。

「アシスターの部下が!? 敵もこちらの動きには気づいているということだね。三鬼神ということはあと1人僕らを狙っている部下がいるんだね、気を付けないと」

「フォックスは敵が恐くて大泣きしたのよね~♪」

エメラダがいじわるな笑顔をこちらに向けてくる。

「ちょっ、ばらすなよ!」

「あら、魔王はフォックスさんのことをきちんと名前で呼ぶようになったのですか?」

「あ、それは俺も気になってた。今までアンタやコイツ呼ばわりだったのに」

攻勢だった笑顔が反転、うつむき加減に視線をそらす。

「それは…アタシは今まで誰かを名前で呼んだことなんてなかったから………、その…、気恥ずかしくてなかなか呼べなかったの…

でも…フォックスのことは名前で呼びたいって、強く思ったから……」

もじもじさせ体全体から表れている羞恥が俺にも伝染する。

「そ、そうか………。

そ、そういやそっちはどうだったんだ、アシスターの居場所の手がかりは何か掴めたのか?」

「えーと…、有力な情報は手に入らなかったけど、1つだけ怪しい場所があったよ」

ジョセフは地図を取り出してある場合を指す。

「このハイダウト火山辺りで冒険者が行方不明になる事例が多発しています。なかには腕利きの冒険者もいたそうで、国は近々調査隊を派遣する予定のようです」

「この辺りで強力なモンスターの目撃情報はなかった。なのに冒険者がたくさん消息を絶つ理由は」

「アシスターがいる可能性があるってわけか。

それにしても海中の次は火山とはな」

「他に手がかりがないのなら行ってみるしかないわね」

俺達は次の目的地をハイダウト火山に定めた。


「見えてきましたね、ハイダウト火山が」

視界に目的地の火山をとらえた。白い噴気が数ヶ所から立ち上がる活火山だ。

「この辺りにアシスターのアジトが隠されているのかもしれないんだな。それじゃぁ、手分けして徹底的に探すか」

火山の周りはなにもない平地だ。アジトがあるとすれば地下か? 入口が巧妙に隠されているなら探すのは骨が折れそうだ。

「その必要はないわよ」

声がして上を向くと、純白の翼を羽ばたかせた20歳ぐらいの美女が下りてきた。

「ぶふぅっ!」

女性の露出の激しい格好を見て鼻血が出る。

上半身は細い紐を身体に巻きつけただけで下半身はガーターベルトの下着を穿いているだけのような格好で、とても服を着ているとは言えない姿をしている。

「………」

ジョセフも目のやり場に困っている。

「待っていたわ。私の名前はミスリ、アシスター様の部下よ。

あなたたちは神と魔王、そして召喚者のパーティーね」

「アタシたちの正体を知っている!?」

「あなたのその姿は……、なぜあなたが神族(わたしたち)の力を持っているのですか?」

男子2人が動揺している傍らでリリルだけが厳しい視線を相手に向けている。

「あら、シャルルの日記を読んだあなたたちなら分かっていると思っていたけど?

アシスター様はシャルルが開発した神・魔族を喚び出す魔法を改良して、人間に力のみを憑依させる召喚魔法を完成させたのよ。あなたたちが倒した2人が魔族の力を得たのに対して、私は神族の力……神人といったところね。

私の力は他の2人とは桁違いよ。これを見なさい」

「うおおぉっ!」

ミスリがボトムをずらす。

「フォックス!!」

「痛いっ!」

エメラダに腕をつねられた。

「身体に魔方陣を!?」

「えぇそうよ。直接身体に召喚陣を刻むことでより効率的に高位存在の力を宿し、通常の召喚契約者間の絆のリンクで覚醒して得る力を個人のテンションだけで得られるようにしたのがこの私よ」

「つまり初めから覚醒してランクが上がったのと同じ状態だと……?」

ジョセフの言葉に満足したように頷く。

「良くできました。あなた顔だけじゃなく理解力もいいわね、私の好みよ。どお、私の仲間にならない? そうすればあなたを私の身体でと~っても気持ちよくしてあ・げ・る♪」

ミスリが誘惑するようにツツー、と自分の胸と下半身に指をすべらせる。

「なぜだ」

「兄さん?」

「なぜだぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーっ!!」

俺は感情のままに声を張り上げた!

「なんで俺はニッツのようなオネェに好かれてジョセフはこんな美人のお姉さんに好かれるんだぁーーーーーっ!」

「ありがとう♪ そういえばあなたはニッツの好きそうなタイプね。

彼に言い寄られて大変だったでしょう。分かったわ、あなたも特別に私の身体で癒してあげる♪」

「えっ! マジでぇっ!!ったい! 痛いよエメラダ」

さっきとは比べ物にならないくらい強くつねられた。

「アンタッ、アタシのお風呂覗いておきながらこんな女に欲情する気!!」

なぜかエメラダは激おこだ。

「ちょっ! 今そんなことをここでばらすことないだろ」

「兄さんっ、そんなことしたのか!」

「フォックスさんっ! それは人として最低の行為ですよ。見損ないました!」

「きゃーー、もう止めてーー(涙)」

敵の本拠地を前になぜか味方から針のむしろ状態。

「あら、年頃の男の子なら女の子の身体に興味が湧くのは当然のことよ」

そしてここでは敵のはずのミスリが俺の味方。

俺は言葉は発せられないので無言でコクコクと頷く。

「黙れ。キサマはアタシの知り合いに似ていて気に入らないわ」

エメラダが臨戦態勢になる。

「うふふ。いいわ、ここを通る冒険者と戦ってこの身体に慣れておいたの。魔王と神でもこの私には敵わないわよ」

「じゃあ行方不明の冒険者たちは…」

「私がみんな殺したわ」

美女は表現一つ変えずに言いきった。今初めて恐ろしい敵を相手にするんだと実感した。

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