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いつのまにかドラゴンでした  作者: すなる
序章
3/29

出会い

動く影が2つ見える。

人が何かに追われているようだ。

イザは目を凝らしてみた。


どうやら追われているのは女性のようだ。

透き通るような白い肌、とがった耳、深い緑の瞳、金色の髪。

(これはファンタジーでは大道の種族!!エルフキター!)


(そしてあれは…猪か…?いや、角が生えているしだいぶ大きいな…魔物か…?とりあえず助けた方がいいよな。)


「洞窟の巨大な虫たちに比べたら大したことないな。恨みはないけど許せよ。」

そういうとイザは爪で魔獣とひと裂きにした。


(こいつも角生えてるけど食えるのかな?これは何十日も待ち望んだお肉では!!)

イザはよだれが止まらない。



「(ドラゴン!!しかも私を見て涎を垂らしている!!)申し訳ありません!助けていただいてありがとうございます。どうか食べないでください!私に差し出せるものならなんでも差し上げます!」

エルフの女性は頭を下げている。


(久々の肉に気を取られて忘れていた。この猪に追われていたエルフのお姉さんがいたんだった。というか俺そんなに怖いドラゴンに見えるのかな…なんか悲しい。)


「そんなにかしこまらなくても俺は人を食べたりしないよ。お姉さん顔を上げてください。」


「ありがとうございます。とてつもない魔力を感じます。さぞ名のある竜族の方とお見受けいたします。ですが…竜族を見るのは初めてで。無礼を承知で申し上げます。もし可能であれば魔力を抑えて竜化を解いていただけると…。」


この世界で竜族って偉い種族みたいだな~。

ん?竜化?俺あの神様って子に変身させられたままの姿だからこの姿が普通の姿かと思ってたけど人の姿にもなれるのかな?試してみるか。



………

んー。わからん。


「(どうやって人の姿になれるんだ。変に異世界人って知られても厄介になりそうだからここはお姉さんに合わせておくか~。)そうしたいのはやまやまだが、永い眠りから目が覚めて記憶がなくってね。申し訳ないがどうやって竜化を解けばいいのか忘れてしまって。」


エルフの女は困惑した顔をしている。

「そうでしたか…。では頭の中で私のような人の形をイメージしてください。そしてそのイメージをしたまま魔力で体を包むイメージを、人型以外の種族の方でも高位の種族は魔力制御で人化できるはずです。そのまま魔力を体にとどめるイメージをすると魔力を抑えられるかと思います。」



(なるほど。ん?魔力?魔力って何。これわからないっていうと流石にやばい雰囲気だよなどうしよう。ううーん。)


「私でよければ人化するお手伝いしましょうか…?」


(おお!ありがたいエルフのお姉さん優しい!)

「すまないね。よろしく頼む。」


「では失礼します。」

そういうとエルフのお姉さんは軽く会釈をして目を閉じ俺の手を取り魔力を流し始めた。


(お姉さんの手から不思議な力が俺の体を覆って行くのがわかる。これが魔力か!これってスライムを食べたときにお腹で感じたあれだな。あれも魔力でなんか消化でもしてたのかな。あと目を凝らして見てた時にたまに物が光って見えてたのもそうなんだろうか。)


イザは光が全身に伝わるのを感じたので目を閉じて人の形をイメージしてみる。

すると体が変化していく。

(これが人化か!)


「はぁ、はぁ、私の魔力が少ないせいで時間をかけて申し訳ありません。」


(そんなに魔力を使うのか。なんか悪いことしちゃったかな。今の感覚は覚えたから次からは一人で出来そうだな。)


「いや、ありがとう、助かったよお姉さん。よければ名前を教えていただいても?」


エルフの女は少しうつむいて答えた。

「…。ヴィユノークと申します。」


(この世界では気軽に名前を聞いちゃまずかったのかな?)


(日本の名前を言ったらまずいよな。名前だけにしておくか。)


「ヴィユノークさんよろしく。俺はイザと呼んでくれ。それと敬語も辞めてもらえるとうれしいな。」

(ヴィユノークって日本人の俺には呼びづらいな。)


「了解です。イザさん」

ヴィユノークはニコッと微笑んだ。


(この世界に来て初めて出会った人だし、この人に色々この世界のことを教えてもらいたいな。)


「ヴィユノークさんはこの近くに住んでるの?」


「はい、少しこの森の中を進んだところに私の小屋があります。」


「この近くに街とかはありますか?」


「少し行ったところの街道沿いに森を西へ進んでいくとエルフの里があります。」


「案内してもらってもいいかな?」


「えっと、エルフの里に他種族を招くには族長の許可が必要でして…」



(うわー。このパターンは絶対族長が堅物で入れてくれないやつじゃん!!)


「私の小屋でよろしければここから近いのですぐに案内できます。そちらでお待ち頂いている間に族長に聞いてきますね。」


(まぁ許可は下りないんだろうけど一応お願いしておくか。)


「よろしく頼むよヴィユノークさん」

イザは微笑んだ。


二人はしばらく歩きヴィユノークの小屋まで到着した。



小さな小屋だが、よく見るといろんな見たこともない植物がたくさん保管されていて、ハーブのような不思議な香りが立ち込めている。



「里の近くに小屋を建てて薬草を集めてるってことはヴィユノークさんは薬師かなにかなの?」


「…いえ、私は…」


(なんだか訳ありなのかな?まずいことを聞いちゃったかな。)


「余計なこと聞いちゃったかな。ごめんね。俺はここで待っているから集落に入る許可の方を口利きしてもらえるかな?」


「畏まりました。狭いところですがしばらくゆっくりしていてくださいね。それでは族長に確認してきます。」

そういうと軽く会釈してヴィユノークはエルフの里に向かっていった。


「でもなんで近くに集落があるのにヴィユノークさんだけこんな小屋で過ごしてるんだろう。薬の研究をするのに都合がいいのかな?さっきの魔獣といい、森で一人は危険だろうに。」


部屋の中をよく見るとうっすらと光っている植物がいくつか目についた。

(そういえば洞窟でも光ってる鉱物とか植物あったなー。これって魔力が可視化して見えてるってことなんだろうか?ん?あの青い石、洞窟にあった光る石に似てるな。でもなんか洞窟にあったものとは違って不思議な力を感じる。これも魔法とかなのかな?)


イザは椅子を揺すりながら独り言をいう。

「ただ待つのは暇だなー。エルフってファンタジーの世界じゃ長寿で魔法や自然に詳しいし他の種族との交流を嫌う種族ってイメージがあるけれど。この世界ではどうなんだろう?ヴィユノークさんは優しいしそんなに排他的ではなさそうだけども。」



(魔力の操作を覚えないとな~。この世界じゃ当たり前みたいだし、竜族って上位種族っぽいから使えないってなると怪しまれるよな。ちょっとやってみるか、さっきの感覚を思い出して…)






「うわあああああ!来るな魔獣め!!」


悲鳴が聞こえた!

今の声はここから近いな。行ってみるか。


声が聞こえた方へ走っていくとエルフと人間らしき集団が狼の集団に襲われそうになってる。

(スライム程度では痛くもかゆくもなかったけど、あれは数が多いな…助けたいけどどうするか…)


「来るな!魔獣め!」

貴族風の男性が杖を振り回しながら叫んでいる。


「狼牙族…!森の面汚しめ。」

エルフの男と狼のような獣が会話をしている。


「だまれ裏切者!手を引かなければ容赦はせんぞ!」

狼風の見た目をしているが言葉を発しているからさっきの猪のような雑魚とは違うようだ。


「ポーションは私が死守する!べスターさんは下がって!」

冒険者風の女が狼を牽制しながら指示をしている。


貴族風の男が荷物に抱き着きながら叫んでいる。

「私の荷物に手を出すな!」


(魔獣にポーションに貴族に冒険者か、ますますファンタジーの世界って感じだな。)

「って考えてる場合じゃないな。」

(このままじゃあの狼の群れにみんなやられてしまう。何かないか…あ、俺が竜化したら逃げていくんじゃね?ヴィユノークさんも竜の姿は怖がっていたし。目を閉じて魔力を体にまとってさっきまでの竜の体をイメージっと。)


イザの体を淡い光が包み込む。そして再び竜の姿へ。

(よし成功!!間に合うか?)

「待て!争いはやめろ!!それとも竜族の俺と戦うというのか?」



「竜族!なぜこんなところに!」

エルフの男がこちらに弓を向けてきた。


「なぜこんなところに竜族のものが…。ええいこんな辺境の森にいる竜族などはぐれだ!かまうなやってしまえ!」

狼の群れもこちらへ向かってくる。


(攻撃辞めてくれないし、両方とも俺を狙ってきてるし。んー!なんとかしないと、でも武器もないし…あ、魔力ってこんなデカイドラゴンから人型に形態を変化させられるくらいなら魔力で体を覆ったまま攻撃したらいいんじゃ?ダメもとでやってみるか…)

「えーいままよ!」

イザは全力で羽を羽ばたかせた。


『デスストーム』


「えっ…」


羽ばたき一つで巨大な黒い旋風を発生させ、木々を数十本と魔獣達を含めて辺り一面をなぎ払った。


(いま頭の中でなにか感じたような。デスストームって。何その怖いネーミング!えぇ~…なにこれ、俺がやったの?スライム相手に羽ばたいたときはつむじ風程度の物だったのに…やばすぎるだろうこれって…。)


イザは後ろをそーっと振り向く。


こちらに武器を構えたままのエルフの男と人間達が恐怖のまなざしでこちらを見ていた。


「まって!僕は悪いドラゴンじゃないよ!(この定番のセリフ一回言ってみたかったんだよなー!)みなさん武器を収めてください。戦う意思はありません。」


「うぅ…名だたる竜族のお方とお見受けします。無礼を働き申し訳ありませんでした。」

よかった。狼たちも死んでないみたいだ。


貴族風の男が会釈をしている

「助けていただきありがとうございました。」


騎士風の男がひざまずいた

「竜族の方にお目にかかれるなんて光栄です。」


「ちっ」

っとエルフの男の舌打ちが聞こえた気がした。


「みなさん顔をあげてください。こちらこそ申し訳ありません。永い眠りから目覚めたばかりで力の加減がうまくいかず…。なぜ争っていたのですか。もしよければ聞かせていただいても?」


貴族風の男が口を開いた。

「私達がエルフの里に荷を運んでいると度々こいつらは襲ってくるんだ。悪いのはあいつらだ!」


「狼牙族の誇りのために言わせていただく。ヒュムとエルフが組んで我らとドワーフを討とうとしていると聞いたので戦闘に備る為の物資を運んでいる馬車を襲ったまでだ!命を奪ったことはない、我らを下賤な魔獣や野党扱いをするのはやめてきたいただきたい。」


(なるほど。森の権力争いだったわけか…こりゃどっちもどっちだな。)


「エルフのお方。双方の言ってることは本当ですか?」


「ヒュムとエルフが協力していること。ヒュムの馬車が森で最近頻繁に襲われていること。どちらも事実です。ですがエルフは狼牙族と敵対するつもりもありません。」


「この期に及んで無関係とは言わせないぞ森の秩序を狂わせたエルフ族め。」


「それをいうなら狼牙族も同じことでしょう。ヒュムの家畜や農作物に被害を出しているとも聞いていますよ。我々エルフのことを言えるのですか?」


「狼牙族は決して他種族に手出ししたりはしていない!」


(なんだか話が食い違っているな。どっちが本当のことをいっているのか今はわからないけど。なぜそこまでして森の権利を奪い合ってるんだろう。何か理由があるのかな。森は豊かに見えるし不都合はないように見えるけども。)


騎士風の男が語り出した

「実は、近年この森は精霊の力が弱まり、森の恵みは減り続けているようなのです。」


(ふむ、森の精霊?ドルイドや妖精、トレントみたいな存在がいたってことかな?)


「…エルフせいだ」

狼牙族が小さな声でつぶやいたのが聞こえた。


うん?どういうことなんだろう。


「森が騒がしかったので足を運んでみたら、何事ですか。」

振り向くとヴィユノークと、見るからに身なりのいい壮年のエルフが立っていた。


「エルフの族長か、森を捨てようとしてお前たちは何を企んでいる!」


先ほど争っていたエルフの男が口を挟んだ

「だまれ!何も知らない獣風情が知った口を。」


「我らを獣風情とは聞き捨てならないな。やはり痛い目を見たいようだな。」


「エルロッド!」

エルフの長らしきものが一喝した。


「狼牙族の方々申し訳ございません。この物変わり私が詫びさせていただきます。どうか双方怒りをおさめてください。」


「今さら詫びたところで、森はどうにもならん…」


「その話はわたしが説明しましょう。みなさん一度我が里にお越しください。」


「!?良いのですか!族長!このような他種族の者たちを里に入れて!」


「エルロッド、お前も知っていよう。この里はもうそんな清らかな里ではあるまい。いまは森に関わるもの同士手を合わせて協力をするときだ。」


「…ですが」


「では竜族のお方、ヒュムの方もこちらへどうぞ」


「くっ…」

エルロッドと呼ばれていた男は怒りをこらえられないように見えた。


(一時はどうなることかと思ったけれど、理由はどうあれエルフの里に入る許可をもらえたのはよかった。こちらの世界の情報を知りたいのでここで色々聞いてみることにしよう。)



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