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いつのまにかドラゴンでした  作者: すなる
序章
13/29

因縁尽く戦いのはじまり

周囲を警戒しつつ奥へ進んでいくと、正面に巨大な扉があらわれた。

その扉の前に誰か立っていた。


(エルフ族…じゃないな、犬のような耳…狼牙族なのかな?誰だろう)


『よくぞここまでお越しいただけました。試練を超えし方々が現れるのをお待ちしておりました。シア様どうぞ中へお進みください。』


「…」

ヴィユノークとウィルヘイムは驚いている。


「…シアって誰のこと?」

「イザさんの隠し名とか?」

エルザとラインハルトが質問した。


「俺じゃないよ。そういえばシアっって名前はあの祠でも聞いたよな?」


「あれルーシア様のことを言ってるかと思ってたけど聞き間違いじゃなかったんだ。」



「そこのエルフ族に聞いてみるといい。何か知っているような顔をしておるぞ。」

そういうとメリルはヴィユノークとウィルヘイムの方を見た。


「…私の本当の名前は…シア=ヴィユノーク=ルーメスです…」


一同は驚いた。

ウィルヘルムだけは知っていたようで、驚いていない。むしろ汗を流している。


「祖母に聞いたのですが。この名前は父が付けてくれた名前だそうで、家名も父の家名です…だから里では名乗らない方がいいと言われ、ずっと隠してきました。」


「やはり知っていたのか…」

誰にも聞こえないほどの声でウィルヘイムつぶやいた。



ウィルヘイムは女に問いかける。

「この子だけしか通れないというのですか?我々は森を救うためにここまで来たのです。どうか我々も通していただけませんか…。」


『…』

謎の男は無言でゆっくり首を横に振って口を開いた。

『あなたには聖域に入る資格がありません。』



「まってくれ!なぜこの子なんだ!この子はハーフ!純潔のエルフじゃないんだぞ!」


「!?」

ウィルヘイムの発した言葉に全員驚いた。


「私じゃダメだというのか!」


『あの御方がお待ちしていたのはあなたではありません。』


「私はエルフのために…里の為に…森のために尽くしてきたというのになぜ!何故駄目なんだ!!」

ウィルヘイムからはいつもの冷静さは完全に失われていた。


「ウィルヘイムさん落ちつけって!急にどうしたって言うんだよ!」

頭を抱えるウィルヘイムにラインハルトが近づいて声をかけた。


「うるさい黙れ!魔力に乏しいヒュム族が!私に構うな!」

ウィルヘイムはラインハルトの手を振り払った。


「ウィルヘイムさん…」

ラインハルトは言葉をなくしてしまった。


「何故私なんですか!ハーフの私よりもウィルヘイムさんの方がきっと森を良くしてくれます!それに…ここまで来れたのはここにいるみんなの力があったからです!それを…」

ヴィユノークのが叫んだ!


謎の男は頭を下げながら言った。

『あの御方はあなたを必要としておられます。』



「ははははは…混血で魔力も少ないこの子になにが出来るって言うんだ!!!」

ウィルヘイムは様子がおかしい。


エルロッドはウィルヘイムに声をかける。

「ウィルヘイム様!確かに私も混血を嫌って避けてきました。エルフの血に誇りを持っていました!あの子もエルフの血が流れている里の仲間だって言って、ヴィユノークを避ける私や里の物をずっと諭して来たのはあんただったじゃないですか!」



「それは、この子にすぐに死なれては困ったからな…。私がこの森を総べるんだ…私にしかこの森は救えないんだ…」



メリルは鋭い目でウィルヘイムを見て言った。

「こやつ今まで魔力が少ないふりをして隠しておったようじゃが、さきほどから溢れるような魔力を感じる。自身の限界を超えた魔力を身に宿しておる。原因はその指輪じゃな…?嫌な雰囲気をさっきから醸しておるようじゃが…?」


「この指輪か…?これは100年ほど前にある旅の男から譲り受けたものだ…持ち主と契約をしたものの魔力を引き継げる魔法の指輪だよ!」


「やはり…おぬしがヴィユノークに呪いを掛けておる張本人じゃな…?」


全員驚いた。


「そんなっ…!」

「そんなことって…」

ラインハルトとエルザは言葉の失った。

「なんとむごいことを…」

ガルドがウィルヘイムを睨んでいる。


「うそ…うそよ…あんなに優しかったおじさんがそんなことするわけ…」



ウィルヘイムは優しく微笑みながら言った。

「あぁ、すべて嘘だよ。ヴィユノーク」


ヴィユノークは少し安堵した顔を見せた。




そしてすぐにウィルヘイムが狂気に満ちた顔に戻った。

「お前に優しいウィルヘイムという男が嘘だったのさ!あははははは!なにがハーフエルフだ!エルフは純血こそその高い魔力を誇れる!俺は混血のお前が里にいることをずっと我慢ならなかった!」


ヴィユノークは絶望した顔をした。


「そんな自分を諫めるために里の者からお前を守る行動を取って自分を押し殺すのに必死だったよ。でも魔力を得るためにこの100年余の間我慢してきた!」


「ウィルヘイム様…」

エルロッドは歯をかみしめている。


「全てを聞かせてやろう!俺は妹が生まれたときに嫉妬した。生まれ持った魔力の差でみなに比べられる。みな俺を俺として見ずに精霊候補者の兄として見るんだ!そんなみんなを見返すために、俺を認めさせる力を得るために、色んな文献や資料をあさったよ。そしてこの霊廟に地竜の宝玉があることを突き止めた。一人の人間を精霊に変えるほど力を持つ秘宝だ。それを知ったとき、どんな手を使ってもでもこれを手に入れてやると誓ったさ。」


「どんな手でもだと…?」

イザが憤りを込めて質問した。


「ああ、どんな手でもさ。霊廟は精霊の力を引き継ぐ物以外は普通は入ることができない。精霊の力が失われかけたときにだけ聖域の封印が弱まり高い魔力を持つ物がこの首飾りを持つことで入ることを許されるんだ。だから妹には消えてもらう必要があった。妹が精霊の力を継承してしまうと私は霊廟へ入ることができなくなってしまうからな!妹がヒュムの男と駆け落ちをして里を抜けだしたときはホッとしたよ。このままいなくなってくれたら…とね!」


「糞やろうが…」

エルザは怒っている。


「いくら憎いとはいえ、さすがの私も実の妹を手にかけるのにはためらいがあったからな。」


「その頃、《ある人》からこの指輪を頂いた。そしてこの指輪の効力知り私は思いついた。精霊の力を持つもの以外がこの霊廟に入るには、代々受け継いできたこの首飾りと精霊の器にたる強い魔力が必要だったんだが…。この指輪の力で妹の魔力を俺のものにしたら条件を満たせる…とな!そこで今度は妹を必死に探し出し連れ戻した。だが妹は既にヒュムの子を孕んでいた。そしてその子を守るために魔力を使い切り産むと同時に死んでしまった。残念だったよ。」


「実の妹が命を賭けてまで娘を守って死んで逝ったのをみて、お前はなんとも思わなかったのか?」

イザはウィルヘイムをにらみつける。


「思ったさ…。」

「これで強大な魔力を手に入れる手段がなくなり精霊の力が完全に消滅するまで霊廟へ入る手立てがなくなってしまったと思い悲観したさ!!だが天は我を見放してはいなかった。妹が命を賭してまで守ったその子は、ハーフでありながらも生まれながらにして強力な魔力を持っていたからな!だがこいつの魔力は不安定で感情の高ぶりによって魔力が大きく変動し不安定で魔力をなかなか集められなかった。感情の高ぶりで魔力が変動するヒュムの血が混じっていたからだろう。だから里のものに知られる前に指輪の契約だけ交わしこの子が成人して安定した魔力を奪えるようになるまでは大切にしようと心に決めた。」


「狂ってやがる…」

イザは怒りをあらわにした。


「この子が成人して魔力が安定してきてからは俺の魔力も高まり聖域の力は弱まってきたからこの霊廟にも入れるようになった。入れるようになってからは何度も下見に来たよ…。試練のことも知り、流石に一人だと聖域までたどり着くのは困難だと思い、狼牙族とドワーフ族、ヒュム族の強きものが森へ集まるように火種を撒いた。ドワーフ族の方は失敗だったがな…。」


「胸糞悪いな。なぜいま全てを話そうと思ったんだ。俺らに力づくで止められるとは考えなかったのか…?」

イザは怒りを露わにした。

全員武器を構えた。


ウィルヘイムはあざけわらった。

「わからないのか?お前らを一人残らず消してしまえば、この話を知る者は居なくなり。地竜の宝玉は俺のものになるからだよ!お前らが私を止めるだと?この魔力を見ても私に叶うとでも思っているのか…!?下等種族どもが!!!」


「もう俺は我慢できないぜ!!!」

「私も我慢の限界だ!!」

ラインハルトとガルドがウィルヘイムにとびかかった。



ウィルヘイムは指輪を上にかざし指輪の力を解放した。

「100年もの間蓄え続けたこの魔力!お前らごときがこの俺に敵うとでも本気で思っているのか…?フリージング…ダスト!!!!」



ラインハルトとガルドが氷の嵐で吹き飛ばされた。

「うぅ。腕が…ちくしょう…」

「くっ…」

ラインハルトの腕とガルドの足が凍り付いてる。




「素晴らしい!この溢れる魔力!これこそ私が求めた力だ!!はははははは!」

指輪から出た魔力がウィルヘイムの体を覆っていく。

禍々しい黒いオーラが溢れだしている。


「限界以上の魔力を得て制御が効かなくなっているな…みんな!わしについてこい!」


しかしエルロッドは聞こえていない。

「ウィルヘイム様…私はどうしたら…」


パァン!

エルロッドの頬をエルザがひっぱたいた。

「あんたはエルフ族の誇りの為に戦ってきたんじゃないの!ここでこいつをとめなくてどうするんだい!」


「しかし…あんな魔力とても私じゃ太刀打ちできるわけ…それにウィルヘイム様に弓を向けるなど…」


「他種族やハーフを魔力の低さで見下してきたエルフが聞いてあきれるな…。」

イザはエルロッドに失望した。


「仕方ない!エルザ、イザ行くよ!わしに続け!ロックラッシュ!」

メリルが金槌で地面を叩くと無数の岩のつぶてが大きくなりながらウィルヘイムを襲う。


「剣を借りるぞラインハルト!」


「無駄だ!無駄だ!この魔力の防御をそんな魔法で破れるものか!」

ウィルヘイムが嘲笑った。


「そうかの…?」

メリルは笑った。

そして魔法が着弾して魔力が薄くなった場所に目をやった。

「いまだ!二人ともわしの魔法で防御が薄くなったとこを狙い打て!」


「言われなくてもわかってるよ!レイジングダガー!」

エルザは魔力を纏った短剣で斬りかかる。


「いくぞ!#龍剣一閃__ドラゴニックスラスト__#!」

イザも先ほどのラハブ戦で見せた剣技で切り抜ける。


二人でウィルヘイムを集中攻撃。

するとエルザの攻撃で魔法の防御壁にひびが入った。

そこへイザの追撃が決まり防御壁を破りそのままウィルヘイムの腕を切りつけた。


「うがああああああ!なぜ…こんな攻撃が俺に届くんだ…俺は最強なんだ!」


「二人ともいったん離れるんじゃ!ウィルヘイムの様子がおかしい!」


ウィルヘイムの腕が巨大化しエルザを襲う!

「あぶない!!」

イザが間に入り目の前に剣を構え守りに入る。

しかし剣は砕け二人は弾き飛ばされた。


「俺の剣が…」

ラインハルトは悔しがってる。


エルザは上体を起こしながら言った。

「くっ!今度はなんだっていうんだい…」

「あれは……」


ウィルヘイムの姿が魔物のような姿へ変貌していく。

「魔力…魔力を、魔力を!!俺にもっと魔力を!!」


「こいつは冗談じゃないぜ…」

ラインハルトがぼやいた。


ウィルヘイムの姿はエルフの時の数倍になり。まるで悪魔のような姿へ変わっていった。


そして魔力を求めてヴィユノークにとびかかる。

「ヴィユノーク!」

メリルとイザが叫んだ!


(くっ!間に合わない…!)


「えっ…?」

ヴィユノークが顔をあげたときにはもう目の前にウィルヘイムが迫っていた。



「ハハハー!」

ウィルヘイムの手がヴィユノークをとらえようとした…。


そして次の瞬間。


「うぎゃああああああああ。」



みんな驚いた。

なんとヴィユノークを捉えたと思っていたウィルヘイムの腕が吹き飛んでいた。



「おいおい悪いがそんな汚い手で俺の娘に触れないでくれないか。」



そこには見たことの無い男が立っていた。


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キネノベ大賞3 ESN大賞3
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