能力の差
さて、どんなの能力を持っているのか。僕の理解者などの能力が普通なのかなど、ここから分かることは多い。何よりも自分の立ち位置をある程度推察することが出来る。
今のところの理想は生活系の能力と戦闘向きの能力が欲しい。生活などに役に立つ能力は現状ではとても貴重だ。何かしらで安定することが出来るなら精神的に余裕が出来るからだ。生活レベルの低下もある程度抑えることが出来るため環境の変化からくるストレスもある程度軽減できる。
戦闘向きの能力は単純に身を守るためだ。今の僕は桜井みたいに身体能力が高くなっているわけではなく野矢さんみたいに魔力らしきものを扱えるない可能性がある。理解者や解析者の能力についても分からない所が多く不安要素がある。また、正式な呼び方は分からないが魔獣などの脅威も存在する。
頭を使って色々する前に襲われて死んでしまっては意味がない。この世界での手段を見つけるまで身を守ってくれる存在が欲しい。
様々なことを考えながら僕は会話を進める。
「俺は賛成!それにお前たちの能力も気になるしな!」
敦は僕の提案に即座に賛成する意思を伝える。それに対して文一の方は悩んでいるようだった。
「文一はどうする?」
悩んでいる文一に決断を急がせる。今後活動をする上で信頼などが大切になってくる。信頼を証明するような場面で悩むことは今後に信頼に影響してくる。文一は頭がいいので正直言ってあまり時間を与えたくない。
敦は正直な性格なので裏切りの事はあまり考えなくてもいいし、何よりそんな器用な事が出来るような人ではない。それに対して文一はその可能性は十分にあり得る。正面から敵対するならいいのだが、内側の戦いになるのならそれ相応の被害を覚悟しないといけない。
だからこそ、この場面で文一の選択肢を絞りたい。僕は文一の方を見ることで圧力をかける。
「僕も賛成だ」
全員が賛成したことで僕たちは能力を教えあった。結論から言うなら二人の能力は強力であり、理想に近いものだった。
まず、敦の能力は武帝というもので身体能力や五感を強化することが出来る。どのぐらい強化できるかは試してみないと分からないらしい、また近接戦闘の技術や武器の扱い方などが前よりも自然に分かるらしい。能力についてはシンプルで強く敦に合っていると言える。
強化倍率など詳細はまだ不明な所もあるが、戦闘向きの能力であることは間違いないだろう。
文一の能力は鑑定だった。どう言った能力か聞くと、鑑定してものを指定してそれを見ながら念じることでそれに対する情報を入手することが出来る。ただし、鑑定すればすべての情報が分かる訳ではなく何について知りたいのか決めないといけない。
例えば、桜井が倒した魔獣に対して鑑定を使っても何も分からないが、魔獣の名前について知りたいを考えながら鑑定をするとブラックウルフという名前だと分かった。
鑑定の結果はどうやって知ることが出来たのかを文一に聞くと頭の中に情報が流れ込んで来たらしい。それによっての負荷はあるらしいが気にするほどのものではないらしい。
また、すべてが鑑定できるわけではなかった。鑑定の能力で他人の能力に知ることが出来たら活用方法などを知れるかもしれないということで試しに敦の能力について鑑定したが、情報が頭の中に入ってくることはなかったと文一は言っていた。
他にもブラックウルフについて行動パターンなどの習性について鑑定を活用して調べた。基本的に一匹で活動しており、強敵にあったときなどには吠えるなどをして仲間を呼ぶことなどブラックウルフについての情報を得ることはできた。
しかし、過去の情報については知ることが出来ない。どういう事かと言うと、倒されたブラックウルフがブラックウルフという種族の中ではどのぐらい強いかは知ることができた。しかし、どのようなルートでこちらまで来たのかを知ることが出来ない。
この違いから考えることが出来るのは鑑定時の個体の情報から推測されている可能性があるということ。
強さが分かったのは鑑定したブラックウルフから情報を読み取り、その情報とブラックウルフという生物の設定情報が存在し、それから比較し判断したという仕組みだった場合、その得た情報から過去にたどり情報を得ることが出来ないと考えれるからだ。
さらに詳しいことを知ろうと思えば知ることが出来たかもしれない、だが世の中には知らない方がいいこともある。今の段階ではこの件はそれに当て嵌まると判断して能力について調べることはやめた。このことは僕の頭の中にだけにとどめているので敦や文一にはまだ知られていない。
そして、今回の件で一番の目的である解析者の能力について試してみた。どんな能力か分からない状態で不用意に能力を試すのは暴走などの問題があった場合に止める人など安全という観点において不安要素が大きかった。
僕が持つ能力の中で試してみることが出来る能力は理解者と解析者の二つあるが、どちらも能力は未知であった。それでも能力について知る必要はある。なので僕は信用がある仲間の中で試すことにした。使う能力は解析者だ。
解析者の能力は解析をすること、少なくとも大きな被害に繋がるような状況になる可能性が一番低いと考えたからだ。
ちなみに二人には解析という能力で解析できると伝えた。能力についてはみんな詳しく知らないことは敦や文一の紹介から分かっているので大雑把に伝えても怪しまれることはない。
その後はこの能力について試してみたいと言って使う流れにした。こうすることで能力についてどの程度出来るのかについて調べながら、その結果を違うものを言えばある程度は誤魔化すことが出来る上に何かあっても二人が事情を知っているため安全もある程度確保できる。
最初に使うのは敦の能力について解析することにした。
結果をいうなら能力について知ることは可能かもしれないが現時点では不可能に近いと言うことだった。
能力を使用したときに襲ってきたのは膨大な量の情報だった。脳の許容量を一瞬で越え、それによる激痛が僕を襲った。反射的に能力の行使をやめなかったらかなり危険な状況になっていただろう。
痛みには慣れていたので表情などに出ることはなく、敦や文一にバレることはなかった。その場では何も分からなかったと伝えた。嘘ではないので怪しまれることはなかった。
今回の事で分かったのは解析者が現状では役に立たないこと、能力を使うと大量の情報が頭の中に流れ込んでくること、そして流れ込んで来た情報が分からないことだ。
情報が分からないというのは意味が分からないということでない、言語が違うと言った方がいい。流れ込んでくる情報を意味の分からない記号で表現されている感じだ。
どんな情報なのか少しでも分かるなら、そこから色々と考えていくことが出来るがそれすらも困難な状態ならばお手上げといってもいい。
少なくとも言語の解読だけで数年以上は掛かる。つまり、今使うことは不可能だということだ。
文一の鑑定と同じ系統のこともあってか敦からは文一の下位互換にもなれない能力だと言われた。敦の評価は正しく今のままでは無能力者と言ってもいいだろう。
解析者は使用が困難であり、不動は相手に精神系能力者がいないと意味がなく、いたとしても元の戦闘力がないので出来ることはほぼない。まだ理解者が残っているが解析者と同じような情報だったこともあり使えない可能性が高いと考えられる。
その後は能力を使うことはせずに見た範囲で分かることを適当に答えることをして誤魔化した。
能力について知れたことは良かったがそれによって得られたことはより厳しい環境にいると自覚させられることだった。