表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後だからわかること  作者: 時雨
魔の森
29/32

最初の試練

 結局僕は、優香の意見を覆すことができず今日も森の探索をしていた。


 一週間これをやり続けていることもあって感覚が大分敏感になり、ある程度の気配などは察知できるようになっていた。


 また、目が慣れ始めより遠くのものが見えるようになり、動体視力も多少は上がった。それでも桜井達の動きを捉えることは出来ない。


 今日は二日目に発見した熊ほどの大きさがある足跡の所へと向かっていた。


 前回は遭遇したら対抗策が乏しかったため、発見次第すぐに退却をしたが、それから数日僕は新たに毒を入手することに成功している。


 一度傷をつければゆっくりであるが相手を確実に弱めることができる。生け捕りにしたブラックウルフで試して効力もある程度は確認できている。


 ただし、ブラックウルフと効くからと言っても熊ほどの大きさがあると予想される相手に効く保証はどこにもない。なので、今回は魔物の死体に毒を仕掛けて、それを食べて魔物にどれぐらい効くかの検証をすることにした。


 魔物の死体を放置すると何かしらの魔物がそれを捕食することは探索で分かっているのでそれを活用することで安全に毒の効力を確かめることができる。


 また、毒に反応して食べなかったとしても毒に対して何かしらの対策を持っていることが知れるのでどっちに転んでも何かしらの成果は得ることができる。


 本命はあの足跡の主なので、それが発見したところへ向かっている。


 一応、遭遇率が一番高いブラックウルフにするつもりなのだが、昨日初めてブラックウルフに遭遇しなかったので別の魔物にする可能性もある。


 周囲を警戒しながら僕は足跡に向かっていた。道中にブラックウルフに遭遇するかなと思っていたが遭遇することなく足跡付近にたどり着いてしまう。


 ここまで一度も魔物に遭遇することが無かったという事実が頭の中に引っかかる。


 今まで同じような展開は何回が体験しているので別に運が良かったとして流せるレベルなのだが、今回ばかりは自分の直感が警戒しろと言っている。普段では全く当てにならない感なのだが命の危機などの時にはほぼ必ずと言っていいほど助かっていることもあり、僕は注意深く警戒しながら足跡があった場所へと向かった。



 異世界に来て一週間で転移者が与えた周囲への影響は大きな変化を呼ぶほどにはなっていなかった。そうなったのはいくつかの要因が存在する。


 一つ目は最初の数日こそ能力の把握などで多くの魔物を倒したが、その影響による環境の変化を警戒した川根によって速やかに影響が最小限で収まるようにコントロールされていたこと。


 二つ目は日々命が消えるような場所であったため、地形を変えるようなことをしなければそうそう大きな変化が起きない場所であったこと。


 三つ目は第三者の干渉があったこと。


 だからこそ、一回目では先に内部での変化が起きた。


 しかし、二回目は違った。


 本来なら内部の変化により発生した大きな影響によって一気に変化が起きるはずだった。


 それをたった数十文字の言葉が変えた。


 本来大きな変化とは小さな変化が積み重なって起きるものであり、ただ小さな変化が積み重なっていけばいい訳ではなく、いくつかの条件を満たす必要がある。


 そのいくつかの条件を満たした時に初めて目に見えるほどの大きな変化を呼ぶのだ。


 大半の人はその小さな変化は気が付かない、だがすべてがそうというわけでもない。その小さな変化がどのように影響を及ぼすのか分かる人もいる。


 例を出すらな、早々に魔物への影響を感じ取った川根、最悪を想定するからこそ、それを引き起こす条件となりうる変化だけを見抜いた、美香子、太亮、仁田脇。 元からそう言った変化を敏感に感じ取る才能を持っている優香。


 ただ、それでは変化を操るほどのレベルには達していない。


 変化を操る為には目には見えない情報を全て見抜き、常識に囚われない思考を持ち、未来予知にも迫る計算能力、人を一つの情報体としてとらえる価値観などが必要だ。


 その上でたった数十文字の干渉で未来は変わろうとしていた。


 敢えて、自分が最も追い込まれる形にして、リスキーな行動を取らせ優香がより早く行動するようにし、過去の僕の行動を活発化させ、今後起きる問題を抽象的な表現をすることでそのすべての事に対して対策するように誘導して、第4段階に達するためにほんの少しだけ足りなかった()()()()()()()()()()()()()()、それによって数十頭程度の規模の襲撃が数倍の数にまで膨らませ、それを対処するために太亮の大規模魔法による殲滅を選択させ、その影響により、本来ならば割と余裕があったはずの中規模の変化の発生条件である、短い期間のうちに()()()()()()()()()()()()5()()()()()を達成させた。


 ブラックウルフは基本的には数の暴力で敵を倒すスタイルをとっているが、それは他の魔物に勝つことを目的としているわけではない。そもそもこの世界ではいくら数がいたとしても意味がないほどの力を持つ存在はいくらでもいる。


 それに対抗するためにはより強力な力を持っている必要がある。その点で言うならブラックウルフの上位個体は数が他とは少なく、それ以外の個体数が多いという特徴を持っている。


 ブラックウルフと言う種族にとって上位個体は種を存続させるための切り札であり、貴重な戦力である。それを強者との不意な遭遇などで減らすことは避けないといけない。だからこそ、下位のブラックウルフたちは自分の命を使い、相手の強さを測る指標になっているのだ。


 強さの測り方は具体的には4段階ある。

 まずブラックウルフは必ず5匹程度のチームに所属している。


 1段階目はそのチームに所属している個体が死亡すること。

 その場合、そのチームに所属している個体が終結して、一匹を残して相手を倒しに行く。

 2段階目はそのチームが全滅又は残した一匹だけが生き残る場合

 生き残った一匹が他のチームに連絡をして3チーム以上で敵の索敵と討伐を行う。

 3段階目は3チーム以上の塊が複数全滅すること。

 この場合、対象の敵を発見時に攻撃することができる個体が100体以上いるかどうか。

 いなかった場合は攻撃は行わず、敵の監視をしながら、数を集まるのを待つ。

 いた場合は総攻撃をする。

 そして4段階目、総攻撃したところが全滅すること。かつそのエリアでの個体数7割を切っていること。

 その場合、上位個体が送られることになっている。


 本来なら2日目の時点でブラックウルフは大体80体前後であり、100体以上ではなかった。食料問題が大丈夫だと判断して川根が消極的行動をするようになったのは2日目以降だったため、四段階目に行くことはなかった。しかし、過去の僕が夜探索したことにより、数が100を超えた。


 僕は足跡があった場所へとたどり着く。そこには5メートルほど熊の姿酷使した魔物が切り刻まれて死んでいた。


 それを見た瞬間、僕は急いで頭を下げる。


 元々嫌な予感があったおかげもあり、素早く動くことができた。下げ切ったと同時に先程まで頭があったところに何かが通過した感覚を覚える。


 それからすぐに後ろから何かが倒れる音が聞こえてくる。急いで後ろに振り向くと、背後にあった木々が全て両断されており切断された木が一斉に倒れる。


 僕はどうにかして倒れる木を避けようと行動した時だった。腹部に強烈な打撃を食らう。

 

 僕は数メートル後方へと吹き飛ばされる。そして僕は腹部への痛みを感じながら僕を襲った魔物を目視する。それは、体調2メートルほどであり、後ろの足で立ち、鋭い眼光でこちらも見てくる銀色の狼だった。

 

 ただ、上位個体と言っても弱い奴から強い奴まで存在する。


 弱いやつでは意味がない、だからこそ個体数が5割を下回る事が大切だった。


 今回、私が呼び出したのは十段階ある強さ指標で町一つを単独で滅ぼすことができる力を持つとされている上から四段階目に属する魔物だ。


 さあ、私からの最初の試練だ。


 相手は死の風を運ぶ魔物、クーペヴァン。

強さ指標


一 世界の理を操れることができる超越者でないと無理。

二 単独で国を亡ぼすことが可能

三 単独で一軍の戦力と同等

四 単独で町一つなら亡ぼすことができる。

五 歴戦の戦士が数人がかりでも倒すことが厳しい。

六 単独で村一つ滅ぼすことができる。

七 訓練された兵が数十人で戦って半数以上が死ぬ

八 訓練された兵が数人がかりなら倒せる

九 訓練された兵が単独で撃破可能。

十 訓練していなくとも倒せる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ