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最後だからわかること  作者: 時雨
魔の森
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逃走

 元々空への対策が全くしていないというわけでなかった。木に覆われているこの場所では見つけにくいなど何もしなくてもある程度何とかなると考えていた。勿論、打てる対策があまりないことも原因の一つだ。


 自分の何故パタパタ飛んでいるものだけだと考えていたのだろうか、ここは異世界だ。なんでもありに決まっているのだ。常識の範囲で考えてはいけない。


 甘かった自分に憤怒する時間などはあるわけがなく、僕は急いで遮蔽物へと身を隠す。ちなみにブラックウルフたちはあの鳥の魔物に串刺しにされている。


 鳥の魔物は刺した嘴の外から牙らしきものを生やし,嘴を抜くことはせず、そのまま嘴外側に開くようにして魔物の肉を抉り取りそのまま口へと運んでいく。


 そうすることで刺した嘴をいちいち抜く必要なく捕食できるわけか。右太ももに刺された時に反射的に首を切り飛ばして、抜いといてよかった。もし、痛みで何も出来なかったらそのまま右足はなくなっていた。


 冷静に観察しているわけだが、なかなかにグロい光景だ。刺してからの捕食シーンはあちらの世界の生物では決してできないことをしている。


 そして、改めて思うここは異世界なのだと。些細な失敗で命を落とす、その重みが自身をさらに冷静にさせ、感覚を研ぎ澄ます。


 決して怯えることはない。なぜなら僕は知っているから。


 失いうことを恐れていては何もできないこと。

 必要なのは自信、必ずやり遂げると自身を錯覚させること。


 あちらの世界での辛い経験が僕の命をつなぎとめている。


 僕は冷静に周囲を観察する。


 僕を襲った魔物は見た目は50センチぐらいの鳥だが、捕食方法などは完全にあちらの世界と違っている。てか嘴が360度回転可能とかどういう構造なら可能になるんだ。


 だが悠長にその捕食シーンを見ている暇はない。現在鳥の魔物はブラックウルフの死体に注目しているが上に飛んでいる数は大体百いるかいないかぐらいだ、全ての魔物が満足するには数匹では物足りないはずだ。


 すぐにこちらに向けて攻撃をすることだろう。どうするか考えないといけない。


 逃げるか、隠れるか、現在の時間的に隠れることはできない。


 理由は二つ、一つはここにとどまってもさらないる魔物が来る可能性があるから。


 もう一つは、遅く帰れば他のクラスメイト達に外に出ていたことなどがバレるから。


 なので今、僕がすべきことはどうにかしてこの場から逃げることだ。


 なら、この場から逃げる為に必要なことはなんだ。


 あの魔物を撒くことだ。


 撒くためには数を減らさないといけない。しかし、あの数を減らすのは困難を極める。


 僕は周囲を見渡す。先程僕の頭を狙い突貫してきた鳥の魔物がグチャグチャになって死んでいる。


 恐ろしく早く攻撃することで生み出される高い貫通力と殺傷力はより強力な魔物を倒すための強力な武器だ、その代償として失敗すれば速度を落とすことが出来ず地面に激突して死ぬ。


 だから狙いは恐ろしく正確だ。捕食されているブラックウルフを見る。刺した時の食べ方は特徴的だが、嘴が刺さっていないのならば普通に捕食している。


 だからこそ、刺さった場所がよくわかる。今捕食されているブラックウルフは全て頭と心臓らしき場所の損傷酷い。


 あの速度で正確に急所を狙ってくる。僕の場合はもともと木などの障害物で身を隠しており、直感的に避けることができ、頭を貫かれて即死を免れたが、その為に太ももが無防備になった所を攻撃されたのだろう。


 しかし、その正確無比な速攻を出来る癖に先程の攻撃で数匹が僕の頭を狙ったやつと同じ末路をたどっている。


 なぜ、外している。死体からその原因を探ろうとしたが地面との激突のせいで身体が激しく損傷しているので分からない。


 他に分かるのは直径5センチほどの太さがある木の枝などが折れたりしていることだけだ。きっと突貫したときに衝突して折れたと考えれる、そのことからもあの鳥の魔物の貫通力の高さがうかがえる。


 少ない情報から、あの魔物の行動を予測する。


 どうして数匹も死んでいる……狙いを外したか……いやそれは状況的に可能性が低い。


 死んだ魔物に原因があったわけではない、ならもっと別の原因があるはずだ。考えろ、もし僕があの魔物ならどうする、理解するんだ、相手を、必ずあるはずだ。


 着々と時間が過ぎていく。


 あの鳥の魔物は障害物に隠れた僕を回り込んで攻撃するわけでもなく空に飛んでいるだけだった。

そのおかげでまだ考える時間があるのだが、いつ気が変わるか分からない。


 早く打開策を考えない……と、少し時間が経ったからこそ疑問に気が付くことが出来た。


 なぜ、あの魔物は僕を囲んで四方八方から攻撃をしてこないんだ。


 あの数が一斉に攻撃すれば僕なんか簡単に仕留めることが出来たはずだ。


 悠長にこちらを見ているんじゃなくてさっさと回り込んで仕留めにかかればいい、数少ない食料のはずだ、あの数でいるなら必要な獲物の量も多いはず、少しでも食事にありつける為に必死にならないといけない。


 なのに、どうしてブラックウルフに群がらない。あの量を数羽で食べるのはそこそこの時間がいるはずだ。そんなに悠長に食べているならほかの魔物に襲われる可能性が高くなるだけだ。


 たとえ知能が低くても生き抜くため工夫を凝らしているはずだ。それはあの鳥の魔物も同じだ。強い魔物を仕留めるために編み出された一撃必殺の突貫、その代償は外れれば死だけなのか。


 他にもデメリットがあるんじゃないのか。だからこそ、あんな不可化な行動をしているはずなんだ。


 少しずつピースが埋まり始める。ピースが増えるほど次のピースがより早く埋めていける。


 そしてたどり着いた。一つの答えに、そして僕は導き出した答えが正しいかを確かめるために死んだ魔物がどこから攻撃してきたのかを確認する。


 そして、仮説が正しいことが証明された。


 これを上手く活用すれば数を減らすことが出来るかもしれない。


 だけど、ここから逃げるにはまだ足りない。もう一つ何かがいる。


 あの鳥の魔物がこちらを諦める何かが必要だ。


 他に活用できるのはなんだ。


 もう一度周囲を確認するがあるのは、ブラックウルフの死体と鳥の魔物だけだ。


 くそ! これならまだブラックウルフが数十匹襲いにかかる方が生き残れる可能性があった。


 僕でも工夫を凝らせば倒せる程度の力しかない魔物だ。数だけ多く、よく会うだけが取り柄なのだから。


 …………そうじゃないか! ブラックウルフも生き残るために行動している。なら、必ず生き残るために工夫をしている。


 逃げ切る為の道筋を組み立てる。


 今回の相手は弾丸のように突貫してくる、見てからの回避は僕には出来ない。だからこそ、予測するしかない外れれば死、だからこそ僕は自身の才能をフルで使用する。周囲の地形、鳥の魔物の動きからどのルートにどれぐらいの速さで攻撃してくるのか読み取れる情報から未来予知にも近い予測をする。


 そして、最速で行動するために頭の中で思い描いたルートを現実にトレースする。


 鼻血が出る、頭が痛い。許容量を超える処理をしている弊害があちこちで見え始める。


 上手く行っても拠点まで帰れる体力が残っているか不安になるほどの負荷がかかる。


 そして、全ての準備は整った。


 後は自分との勝負、そうして僕は木から飛び出した。


 300秒間の命懸けの弾幕回避ゲームが始まるのだった。

 



 

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