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最後だからわかること  作者: 時雨
魔の森
19/32

人との関係

タイトルを適当に付けた「クラス転移」から、「最後だからわかること」に変えました。

 優香を部屋まで見送った後、僕はもう一度外へと出る。時間も時間なので今日は戦闘などはしないで昨日ブラックウルフの死体を放置した場所の確認だけにする。


 目的に向かいながら僕は今後について考える。


 これから僕は多くの事に対して様々な形で対決していくのだろう。先程のように互いに譲れない意志の戦い。言葉の戦い。命を賭けた戦い。


 僕だって様々なことを考えながら常に最善を探しているつもりだ。それでもすべてを知ることは出来ない。


 僕が気が付かないだけで、誰しもが何かしらの苦難を抱え、苦悩して自分が正しいのか問いながら挑んでいるかもしれない。


 知っていると思っていたことが実は知らなかったかもしれない。何が正しいのか考えても考えても分からない。


 まだ二日目だからこそ、そんなことを考えても仕方ないと思った方が楽かもしれない。だけどそれは問題の先延ばしだ。何よりも中途半端な気持ちでこれから他人を踏み潰すのだけはしたくない。


 だから、割り切る。自分の為に他人を踏み潰すのだと、それは他人に迷惑を掛けないという呪いからひどく矛盾している。


 だが、いくら考えても結局は自分の為に動いているのだ。そこを認めなければ何も始まらない。


 そうして、静かな決意を決めた僕は目的地周辺にたどり着く。


 僕は最初に木に括りつけた紐を確認する。これは約三層から構成されている。一層目は死体を放置した場所から円を描くように張り巡らしたもの。


 これに何かしらの変化があれば、この範囲内に何かしらの生物が入り込んだことを知ることが出来る。


 次に半円ごとに張った紐。これによってどの方面から侵入したのか大まかな方角を知ることが出来る。


 そして、それをさらに二分の一にしてさらに詳細な方角を知ることが出来るというわけだ。


 僕は紐を探す。


 一層目の紐は前回よりもはるかに下に位置に存在していた。


 これから読み取れるのはこの範囲に入った魔物は紐を引っかかることなく、上から踏み潰したことになる。高さは30㎝ほどの所だったので、そこそこ大きい魔物が侵入したと分かる。


 木から左方面から斜め下に位置がずれて言っているため、侵入箇所は僕を中心に見立てて右方面にいると言うことが分かる。


 僕は慎重に中心部を見渡す。二本目以降は中心部を見渡せるような位置に設置している為、最初で魔物が侵入したことが分かればすぐに発見できるようにしている。


 今回は大型の魔物が入ったと予測できるからすぐに発見できるはず。


 見た所そう言った魔物の姿が確認できないため、注意しながらブラックウルフの死体を確認していく。


 ブラックウルフは無残な姿になっていた。原型を残しておらず、跡形もなく食べらえていることが分かる。


 もう少し分かりやすい食べ方をしてくれたら何か分かることがあったかもしれないが、丸ごと食べられているので何も分からない。


 その後は紐を確認した。確認したところ拠点の方角から対極の方角から来たようだ。


 知りたいことは知れたので僕はそれ以上追及する事なく拠点へと戻る。


 拠点までの道のりで特に魔物と遭遇することもなく。帰ることが出来たので運が良かった。きっと昼の不運の調整が入ったのだろう。


 今回の事で魔物の死体を放置することは危険だと分かった。今回、あそこで見つけた足跡は熊の足跡と類似しており、大きさから4メートルはあると推測できる。鉢合わせしなかったが、もし遭遇したら今の僕では辛い戦いになっていたのは確実だ。


 桜井達なら大丈夫だろうが、戦闘系ではない人ならとても脅威だ。そんな敵をどうにかする手段を僕は用意しないと行けないのも辛い。


 外敵から脅威で一番困るのは言葉による交渉がなどが出来ない点だ。交渉が出来ないと言うことは戦うしかない。しかし、現在の僕はお世辞にも戦闘力があるとは言えない。


 だからと言って他人に丸投げもできない。もし丸投げしていいのなら未来からの手紙に書いているはずだ。


 書いてないということは自分で何とかしろと言うことだ。まあ、これは明日ぐらいに考えておけばいい。


 そうして二日目が終わった。


 次の日の朝、前日のような失敗はしないでしっかりと起きることが出来た。昨日優香と交わした通りに優香に会いに行く。


 直接、優香の部屋に行くと色々面倒なことが起きると予想できるので優香が担当している保健室で合流することになっている。


 保健室の前まで来て、ドアをノックする。


「僕だ」

「入っていいよ」


 僕はドアを開ける。その先には椅子に座って笑顔でこちらを見る優香がいる。


「おはよう、真紀」

「おはよう」


 僕は優香の前に置いてある椅子に座る。


「普通に話してくれるんだね」

「優香の中の僕はどんなイメージなんだよ」

「ごめん、ごめん」


 優香は少し驚いたように言う。


 全く、僕だって人との付き合い方ぐらいある程度は出来る。生きていく上で必要な能力の一つなのだから。


「怪我はない?」

「大丈夫だよ」

「本当に?」

「優香に嘘を言っても見破られるだろ」

「ふふ、そうだね」


 優香は僕との会話をとても楽しんでいる。少なくとも僕の視点ではそう見える。


 その姿から読み取れるイメージはごく普通の女子と言った感じだ。他の人から見たらきっと驚く光景だ。


 あちらの世界では誰しも優香を綺麗な人形だと評価していた。それは僕も例外ではない。


 やはり自分を偽らなく会話できるのは気分がいいのだろう。まあ、相性があっているかどうかもあると思うが優香の様子を見ていると僕との相性が悪いというわけではないらしい。


 才能をどれだけ抑えようとしても完全には消すことができない。少しずつだが確実に精神を追い詰めていく、それを防ぐためには聞こえなかったことにする、あれは関係ないのだと思い込むしかない。


 結果的に孤独になりがちだ。まあ、美香子みたいに相性がかなりいい人なら多少の事なら耐えることが出来る。


「真紀は今日何するの?」


 怪我無いことの確認を済んだのか、優香は今日の予定を聞いてくる。


 本来なら今日は拠点に残り川根の指示のもと働く予定だった。巴の方は折角得た生贄を返すつもりはないらしく「あ、名塚は明日もこちらの手伝いな? 桜井にはこっちで言っておくわ。 勿論拒否権はなしだから」と桜井と巴の権力の差を垣間見ることになった。


「なんか大変そうだね」


 ほとんどの人が気づけないほどの僕の表情の変化を見逃さす、そこから色々察したのか優香は苦笑いをしながら言った。


 ポーカーフェイスはそこそこ自信があったが流石に優香の前で隠しきるのは無理らしい。あちらの世界みたいに能力を一切使用しないような状況なら隠しきる自信はあるが、僕もこの事態で久しぶりに活用しているので完璧に隠すことは出来ない。


 まあ、優香の才能をフルに活用しているわけではないだろう、あれをフルで活用するにはなかなかにキツイ。


 そんなこんなで優香と適当に雑談をした。


 朝の雑談の中で優香がこちらに踏み入れるようなことは一度もしなかった。僕にとって嫌な話題を一切しないで、僕にとって有利になるようなことを話題を好んで話すが、決してこちらを探るような話題はしてこない。必要以上に自分を主張することもない。


 昨日の宣言通り、優香は踏み入れるべきチャンスが来るまで、僕にとって都合のいい存在でいるつもりらしい。


 その行為自体に不快感はない、寧ろ生き残る事とかそこら辺の事を一切考える必要もない気軽な場所として重宝するかもしれない。


 昨日の行動、今日の様子を見るからに優香なら上手く僕との距離感を間違えることなく立ち回る。


 それは一見いいことに見える。だが、忘れてはいけない。優香も人間であり、自身が欲しているものを得るために行動をしていること。


 僕たちの関係は決して綺麗なものではなく、打算に満ちている。少なくとも明るい未来が訪れる可能性は低い。

 

 優香の事を考えるならこんな関係を今すぐにでも断ち切るのが賢明だ。きっと優香が何もしなければそうしていたに違いない。


 だからこそ、優香は動いたのかもしれない。僕に意志の強さを見せ、下手に逃げても悪手にしかならないと伝えるために、そしてその勇敢な行動は上手く行った。


 僕は優香の意思の強さに降参した。その先に待っているものが自身を苦しめる新たな呪いになるかもしれなと分かっていながら受け入れた。


 まあ、今後どうなるか何て分からない。今のところは得られたメリットを享受しておくべきだ。


 とにかく、必要以上に優香にお世話にならないようにしたいが、そんな甘いことを言っている余裕もないと、自身が置かれている環境に苦笑を漏らし、遅れると巴に何されるか分からないので少し早めに料理場に向かうのだった。

タイトルは今後これで行く予定で変えることはないと思います。

まあ、いいタイトルが思いつかないで取り敢えずクラス転移にしたんですが(笑)

旧題 クラス転移の所は一週間後に無くします。

今後とも「最後だからわかること」をよろしくお願いします。

最後に、これを転スラみたいに短く呼ぶとしたらどうなるんですかね?

少し興味があります、さいわか とかになるのかな(笑)

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