手紙の内容
あれから一時間程度経った。あの後は特に何もなくゆっくり休んだり、考え事していた。滝の方向から桜井達がやってくる。その中に連れていかれた敦賀の姿はなかった。
多分拠点作成に残りの体力を全て捧げたのだろう。心の中で静かに追悼しておく。
「拠点が完成した。この後は拠点について班ごとに説明し行くのと個人の部屋も教えていく。部屋は役職上の理由がない限りは名簿番号順で決めている。武器は護身用として配布することにした。ただし、武器は基本的に自室に置いておくこと。持ち出すときは外に出る時だけにする。武器の使用に関しては護身用以外の活用も禁止する。使用された場合の事を考えて犯人の特定、最悪の事態にならないように対策を講じているのでそう言ったことに関しては安心して欲しい。また武器を勝手に改造すること禁止とする。より扱いやすくしたいなどの目的で改造する場合は俺の許可と遠藤君の許可を取った上で、遠藤君と中心メンバーの一人以上が一緒にいる時にする。これを破った場合は武器の没収し、対応を決めるまで部屋の中で暮らしてもらう。武器のバージョンアップなどに関することについては護衛及び探索班が今の所優先される。」
桜井は拠点についての大まかなルールなどを話した。
最初に言っていた役職上の理由とは主に後方支援班の事だ。例えば遠藤は武器錬成でありそれをするために場所の近くに部屋があった方が利便性などが上がるなど、拠点で活動する人にはそう言って配慮がされている。
武器については配布することにしたらしい。武器を使った仲間割れなどの危険性があるが、桜井自身武器を呼び出すことが可能なので危険だから渡せないとは言えない。武器を持たなかったことが原因で死亡した場合に非難されるのは容易に想像がつく。そうなればクラス全体での協力体制は二度と出来なくなる。
なので武器を配布することにしたと思われる。勿論リスクを放置するわけではなく対策はしているようで何かしらの手段で使用された武器を特定できるようし、またクラスメイトに使用した場合は切れ味がなくなるなどの対策もしたと考えられる。
武器の改造禁止もその仕組みを解除などをされることを防ぐためだと思われる。
他にも様々なルールなどが説明された。食事や入浴などについても話しておりあちらの世界の水準までとはいかないが、巴の仕事次第だが、一日一回は食事が出来るなど思ったよりも酷いことにはなていない。微妙なラインの問題については特に触れることはなかったがそのような場合に対して対応などの決定権は中心メンバーが決めれるようになっている。
「ルールについては各部屋にルールがまとめられた土版があるだろう。そこで確認して欲しい。今日については食料班は活動をしないで明日からの活動となる。護衛及び探索班はこの後戦闘などについて確認などをしたいことがあるので部屋の確認等が終わったらここに戻ってくること」
そう言って僕たちは拠点の説明をされた。構造はホテルが元になって作られており、そこに防衛などの設備を付け加えたものとなっている。部屋もトイレや硬いがベットなどがあるなどしっかりとしていた。
武器については置かれているものを選べるようで僕は刃渡り70㎝ぐらいの剣を二本選んだ。持った感じ重いが扱えない訳ではない。
その後は基本的に自由な時間だった。僕は夕暮れになるまでやる事がなかったため、ここまでの流れについて振り返っていた。
今回で一番印象に残ったのはやはり桜井の力だろう。それは純粋な力の事も言えるし、このグループの中での力の事でもいえる。桜井ほどの優秀な人でないと経った一日でここまで上手くはいかなかっただろう。
勿論、そう言ったこと関係に強い能力者がいたことも大きいが、それがしっかり機能できるように不安などを取り除いているので今のところのMVPは間違いなく桜井だ。
ただあまりにも桜井の適応が早すぎることが引っかかることだ。勿論生まれながらそういう素質を持っていたか、僕みたいにそれに近いような環境を知っているのかなどの可能性もある。それならまだいい、頼もしい仲間だと思うだけで済むのだから。
しかし、もしこれが第三者の仕業なら話は変わってくる。僕みたいに未来からの手紙かもしれないし、僕たちをこの事態に陥れた存在の仕業もある。しかし、それは今考えても仕方ないことなので頭の中にとどめておく程度がいいだろう。
それから僕は今後の行動方針などを今まで集めた情報などから修正などをして夕暮れになる時間までを過ごした。
夕暮れになったころほかの人にバレなようにしながら拠点の外へとでる。周囲を最大限注意しながら僕は川辺の方へと向かった。
川に着くと僕はポケットから紙を取り出す。取り出した紙を川に投げ入れる。
僕が投げ入れた紙は未来からのメッセージが書いてあったのものだ。僕がこの白紙の紙の事について考えたことは、自分がもし過去の自分にメッセージを送るならどうするかについてだ。
僕がこの手紙を受け取った場合に一番最初に考えることはこの手紙が本当に僕の為になるのかだ。そして、現時点で自分の為になると信じる為にはこの手紙が僕自身が送ったものだと証明することになってくる。
だから、未来の僕は過去の僕に送り主が未来の僕からだと証明できるようなものにしてくるはずだ。それさえ出来れば、僕はその内容を素直に聞き入れるはずだ。例えそれが死ねと書いてあったも。
ならどうやって証明するのか、その手段をより正確に考えるためにこのメッセージを送る時の僕の実力を推察する。未来から手紙を送ることが出来ているので魔法はかなり使えていると考える。時に関することなので必然だろう。
勿論、僕が第三者にお願いした可能性もある。だが、受け取った紙にはそういったことを示唆するものはなかった。見落としている可能性もない訳ではないが、僕が見落とすような隠し方をするなら未来からの自分への手紙ではないと判断し、この時点で未来からのメッセージの価値は0になる。
だから、僕はこの紙を自分の力だけで送ってきていると決めつける。それ以外は価値はないからだ。
未来に送るほどの魔法技術があるならば、ある程度の小細工は出来るはずだ。それを踏まえて僕は過去に手紙を送る時の手段を考える。そして最初に思い付いたのは、過去の僕がこの手紙が自分が送ったと分かる為に考える手段を予測して行うことだ。
そうして最初に思い付いた手段が紙を水に濡らすことでメッセージが伝えるようにすること。この森においてみんなにバレないように出来てかつ簡単に用意できるものから。それに紙の処理を同時に出来るからだ。
その考えが正しいと思わせるように、僕たちは川という水が手に入れることが出来る場所にいる。
後は夕暮れ頃に試してみるだけ。夕暮れ頃を選んだ理由は一番監視の目がない可能性があるから。
監視する側はもしも動くとしたら夜だという先入観がある可能性が高い。暗くて見えにくいときなら動きやすいはずだ。だからこそ相手は注意深く確認するだろう。もし24時間監視していても夜間に活動するよりかは監視の目は甘くなるはずだ。
そして現在に至るということ。
川に投げ入れた紙は一瞬小さく光り消滅していく、それと同時に僕の頭の中に情報が流れ込んでくる。
情報の受け渡しはやはりこの形式で行われたか。解析者を使った時や能力を知った時など情報を直接送る方法があり、未来にメッセージを送るほどの魔法技術を持っているならその方法も使える可能性が高い。
情報量はそこまで多くはなく、頭痛などは特にしなかった。
得た情報は特に意味があるような文脈ではなかった。もし、ほかの誰かがこれを知っても特に意味があるものだとは思わないだろう。つまるところ暗号化されていたのだ。
徹底した対策にこのメッセージが未来の自分からだとより確信する。多分だけど、情報を頭の中に送る段階でもいくつかの細工がなされているだろう。
そして、この暗号は昔僕が考えたものであり、これを使ったことはほとんどなかったので知っているのは僕だけとなる。確か90パターンの暗号化方式を合体させたものだったはず。
昔考えた復号のやり方を思い出しながら未来の僕が伝えたかった本当のメッセージを読み取る。
すべてのメッセージを読み終えた時、僕の未来は確実に変わることになった。
未来の僕は過去の僕をよく分かっていらっしゃる。こう書いておけば僕は今まで考えていたことをすべて白紙にして大きく変えるしかないことに。
メッセージの内容はこうだった。
流石にここまですれば信じてくれるでしょ。そういう訳で伝えたいことはいくつかある。
一つ目は、名塚真紀、お前はこの1か月すべての事に対して勝者であることしか許されない。
二つ目は、クラスメイト全員を見捨てるな、必ず助けろ。それが出来ない状態になったのなら殺害しろ。それ以外の選択は一切許されない。
三つ目は、1か月以内に必ず魔法を使えるようにしろ。そのために必要なことはお前が一番分かっているはずだ。
四つ目は、見極めろ、名塚真紀にとって絶対に欠かせないものを。
もし、それが出来なかったのなら名塚真紀にとって全てである最後の希望は潰える。
未来が変わり全てが動きだすとき、今度は私が会いに行こう。
最後に未来の私から名塚真紀に餞別を与えておいた。その餞別が役に立つかは名塚真紀、お前次第だ。
長かった、ここまで読んでくれた読者様には感謝しかありません。ここから物語は加速していきます。
未来からのメッセージによって名塚真紀の未来は大きく変わる。読者の皆様が待っている,死地、死闘、心理戦、が彼を襲います。生きるために行動する名塚真紀という人物を見たい方は引き続きこの物語を見ていてください。




