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ろ く

作者: 坂口もぐら

お子さんに読ませるにはあまりに下らないのでR指定しました。

私がアイツをはじめて殺したのは去年の6月のことだった。

アイツは本当にクズで、コツコツ貯えてきた私のお金をすべてはずれ馬券に変えてしまった。

そのうえ悪ぶるでもなく次は倍に返すからとお金を無心してくる。

気がつけば血の付いた包丁といっしょに県境の山奥に埋めていた。

びっくりするくらい罪悪感はなかったが、お金が帰ってこない事実だけが心残りだった。

そもそもなんであんなヤツ信用してしまったのだろう。

ただアイツの屈託のない笑顔が、仕事に疲れきったまわりの男性たちに比べて魅力的に思えてしまったのだ。

あたりまえだ、ヤツは真面目に働いたことなどないのだから。

そしてこれからも働こうなど考えていない。ただ他人にたかるだけ。

クズの笑顔。

あの顔をもう見なくてすむと思うとスッキリしたのだが

それから数日して、同じ笑顔をしたヤツに出会った。

眼を疑った。他人の空似ではない。

一月わたしのアパートに居ついたアイツの顔を間違えるハズがない。

悪い夢でも視ているのか?

なのにアイツは初めて出会ったかのように私に声を掛けてきた。

最近嫌なことがあってさ、でもお姉さんみたいな綺麗な人とご一緒できるなら運気あがるかな。

アイツの言葉が意味ありげに聞こえて、逆らえなかった。

言われるまま、酒に付き合い、私の部屋に入り込むためのぐだぐだな言い訳を聞き入れた。

ヘタッピな行為のあと、満足して眠ったアイツの首をコンセントの延長コードで絞めた。

どうしようかと思った。

前に埋めた場所、死体が残っていても、無くなっていたとしてもなんか怖い。

確かめたくないから、別の手ごろな山奥を探して埋めた。

もしかしたら双子だったのかもと思っていると3人目が現れた。

前にあなたと瓜二つの人にあったんだけど、双子とか三つ子の兄弟がいたりするの?

聞いてみたが、四つ子でも、五つ子でもないよと答えられた。

ホテルの風呂にドライヤーを放り込んで感電死させた。

そのまま放置したら翌日ニュースになるのではと思ったが、

大物タレントの病死とカブってテレビでは報道されなかった。

確かにアイツのことなんかより大御所の死を悼むほうが重要だ。

一応ネットのニュースを調べると他にも似たような手口の殺人が起きているらしい。

数日後捕まった女性がすべてやりましたと自供したそうだ。

これはテレビにも取り上げられた。

17人だってさ、怖いね~。

私の正面でラーメンを啜りながら、4人目が遠い眼をする。

まぁ、そのうちの一人が本人なら感慨深いだろう。

送るよと言われて、助手席に座る。

アイツには分不相応な高級車だった。借り物らしい。

30分ほど走って、見知らぬ場所で止まった。

潮の香りがする。

リクライニングシートが倒される。

抵抗しようかと思ったが好きにさせた。

車はアイツと一緒に海に沈んだので、帰るのが大変だった。

5人目・・・はよく覚えていない。

会社の上司に連れられていった接待の場でかなり飲まされたらしい。

醜態をさらさぬよう張っていた気がひとりになって緩んだ。

脚がもつれ倒れそうになったところにアイツが出てきた。

私の肩をささえるようにしてどこかへ連れて行く。

そこから記憶がない。

気がつけば私は自分の部屋で寝ていた。

ただ夕べが何をされたかはスカートの下の不快感が物語っていた。

アイツはと言えばその夜、神社の階段で派手に転んで落ちて、頭を打って死んだらしい。

自業自得だと思いながら、自分の手を見てもしかしたらとも思う。


数日雨が続いていた。6月だから仕方ない。

それでも今日は珍しく晴れた。

心地よい風がカーテンを揺らす。

この1年近くで5人のアイツに会って、殺した。

相貌失認、失顔症という病気の症状がある。

他人の顔が覚えられない、区別が付かないのだそうだ。

もしかしたら私はそれに類するものかも知れない。

顔や出で立ちよりその人のクズ体質を先に嗅ぎ分けて、同じ人間だと誤認しているのかもと。

まぁ、どうでもいいことだ。

Gに殺虫剤を吹きかけるとき、それが昨日取り逃したGかどうかなんか見分ける必要などないのだから。

プルルルル・・・・

テーブルの上で携帯が鳴る。

これからすぐに出られないかと聞いてきた。

わたしは良い返事を返し、電話を切ってからため息を吐く。

簡単に身支度を済ませ、先日手に入れたスタンガンをバッグの中に忍ばせる。

ちゃんと使えるよう少し強い電気が流れるよう改造したものだ。

靴を履きながら、ふと気になって着信履歴を確認する。

松野。

最初のアイツも同じ苗字だった気がする。

偶然か、記憶違いか・・・。

アパートを出て、少し歩くとアイツが立っていた。

こちらに気づき手を振ってくる。

罪のない明るい顔でわたしに笑いかける。


おしまい。


なんだこの話・・・

思いついた最初の1行にただただ書き足しいったらこんな作品になりました。


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