Prolog
あれは、16歳の夏だった。
脂汗が光る臭いジジイに抱かれて、貰った三万円を持ってクラブ遊びをしていた頃。
暴力を振るう父親と精神疾患を持つ母親から逃げるように家を飛び出した私は高校へは進学せず、中学の時から付き合っていた男の家へ住まわせてもらいキャバ体入を繰り返し、たまに身体を売って適当に暮らしていた。
当時の男の名前はダイキ、こいつとは今後四年半付き合うことになる。最低最悪の暴力マンで浮気もする仕方ないやつだったがこの時は知る術もなし…
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「キョウコ、俺仕事辞めるわ」
私たちが同棲を始めたのは早かった。付き合ってからトントン拍子、家出少女だった私はダイキが建築会社に務め寮として借りているアパートに住み始めた。
霧の濃い朝だった。冬が始まる少し前の朝は冷える。
いつも通り5時半にダイキを起こし、朝食と弁当を作ろうとしていた時、煙草を吸いながら気だるそうにダイキは私に言い放った。
「は?何言ってるの。馬鹿なこと言ってないで、早く仕事行きな。遅刻して、また親方に怒られても知らないからね」
「いや辞める。決めたんだ。バックレるよ」
「馬鹿なこと言わないでよ、朝からもう。大体このアパートだって会社の寮として借りてるんだよ?辞めたら退去しなくちゃいけないじゃん」
「わかってるよ」
ダイキはイラつくとすぐに物に当たる。
壁をガツンと殴り、舌打ちをしながら私を睨みつける。
「ちょっと!ご飯と弁当は!?」
私の言葉をフルシカトしながら、ダイキは寝巻きのまま家を出て行った。
結局、ダイキが帰ってきたのはその日の深夜零時を回る少し前だった。ゲームセンターで遊んでいたと彼は説明した。
ヨレヨレのポケットから、セピアと書いてあるラブホテルのライターが落ちてきたが、私は問い詰めず眠った。デリヘルかホテヘルだろう、こっそり見たダイキの財布からは三万円が消えていた。




