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誰のためでもないラブソング  作者: 満点花丸
第四幕:愚者の一撃
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裏の顔。

 アーケードは駅前から10分ほど歩いたエリアにある。しかし、今日は寒いので地下歩道を歩いていくことにした。どこで話そうか迷っていたが、歩きながら話すことが出来るのでむしろ好都合だった。

 俺らは地下歩道に入った瞬間に俺はあゆみに調べてもらっていたことを聞く。

「それであゆみ、冬菜の部屋の番号はわかったか?」

「あぁ、雪野さんの部屋の番号は503号室だ。女子寮はオートロックだから玄関で503って打てば直通するはずだ」

 冬菜を呼び出すうえで、佐藤たちに協力してもらうことも考えたが、それだと佐藤が冬菜に嫌われてしまいかねない。部屋番号を聞いてもよかったのだが、それならばあゆみに調べさせた方がいろいろな意味で波風が立たないだろう。こういう時ばかりはあゆみの変態性と情報通に感謝しなくてはならない。誰も俺が冬菜の部屋の番号を知りたがっているなんて思わないから冬菜にその情報が行って警戒される可能性がぐんと下がる。

 まさか、あの場で二人に出くわすとは思わなかったが。

 そして、もう一つ。

「それとあっちの件は?」

「あぁ、高峰の予想通りっぽいぞ。お前、とんだ名探偵だな」

「いや、俺は名探偵なんかではないが、こればかりは予想通りすぎて俺も驚く」 

 俺の中でパズルのピースが繋がっていく。あと何かしら状況証拠がそろえばもう確定だ。

「あゆみ、恩にきる。なんか奢るぞ」

「お、まじで? じゃあ、メイド喫茶でお茶でもして帰ろう。ちょうどこっちの方面だ」

「メイド喫茶? この時代にそんなのがあるのか?」

「しばらく行ってないからどうなってるかは知らんが、界隈では有名だぞぉ。その辺の喫茶店に行くくらいなあそこのメイド喫茶のケーキを食った方が美味いってな。メイドさんの手作りケーキだ!」 

 行ったこともないし、入りたいと思ったこともないからなんだかわからんが、あゆみへのお礼だと思えばまぁいいだろう。

 沙由菜がいるらしいアーケードに向かい、沙由菜にプレゼントを渡し、メイド喫茶で茶をして帰る。それから冬菜へアタックしに行く。こんな流れか。

 それからあゆみの美少女に対する渇望に関する話を延々と聞かされていると、アーケードの方にたどり着く。

 アーケードと佐藤は言っていたが、具体的にどのあたりかまでは聞いていなかった。

 佐藤達と行動を共にしていないことを考えると、何かしら別の用件でこっちの方にいるのは明白なのだ……。

 あゆみは沙由菜がいるからこっちに来たとは言っていないので、あゆみは件のメイド喫茶に直行しようとしているだろう。

「高峰、こっちだ」

 と俺らが外に出てきて狐小路3丁目と書かれたアーケードをくぐり、2丁目の方角に誘導される。

 どうやって引き留めて沙由菜を探したもんか……、と考えていると、

「あ、あのメイド服の子。店の子だから、連れて行ってもらおうぜ! 配ってる紙にクーポンがついてるから少し安くなるはずだ」

 とあゆみがそちらへ向かう。俺はそのメイド服の子とやらを見る。

 そのメイド服の子は二人いて、黒髪で黒いメイド服を着ている子と、もう一人淡い栗色の髪の子。その子の髪を見た瞬間にその髪色と髪の特徴を見て誰かを想起させられる、というか。

「ま、まて、あゆみ。あれ沙由菜じゃないか?」

「明坂さん? 明坂さんがどうしたって?」

 とあゆみが俺に振り返った瞬間、後ろを向いていた淡い栗色の髪色のメイド服の子とやらがこちら側を向く。

「って、やっぱり!!」

 明らかにあれは沙由菜だ。俺は沙由菜を見間違うことはない。去年は結構な時間沙由菜と過ごしているわけだし、今も隣であのうるさいやつといつもぺちゃくちゃ話をしている。

「え、え、どこだ?」

 とあゆみはきょろきょろするが、その前に沙由菜と俺の目がばっちり合う。

 それに気づいたあゆみはそのメイド服の子を見て、

「うほっ!!」

 とさけぶ。沙由菜は慌てて顔を隠し、逃走を図ろうとするが、すぐにもう一人のメイド服の子に止められているのが見えるので、俺らは走ってメイド服の子たちのところに向かった。

 近づいてきた俺たちに気づいた黒髪メイドさんは

「メイド喫茶ですー」

 と紙を渡してくる。その間にもう一人のメイドさんは顔を隠してプルプル震えている。

「ちょっと、かなでちゃんどうしたの?」

 黒髪メイドさんは職務を放棄してプルプルしてるメイドさんを心配する。

「おねえさん、僕たちこれからお店に行きます。この子に連れて行ってもらっていいですか、はぁはぁ」

 とあゆみが下衆な顔をして鼻息荒く言うので、

「あゆみ、さすがにそれはキモイぞ」

 と俺が突っ込む。

 すると、黒髪メイドさんはその気持ち悪いあゆみを見ても営業スマイルは崩さない。

 これがプロフェッショナルか……。

「かしこまりました、それではかなでちゃんに送ってもらってください」

 と黒髪メイドさんは言ってくれるが、かなでちゃんははっきり顔を見せない。

 そして、そのまま

「それではこちらへどうぞ」

 と声を震わせながら、俺らをメイド喫茶へといざなう。

 結局、かなでちゃんはメイド喫茶の道中もこちらに顔を見せることなく、メイド喫茶にたどり着くことになった。

 たどり着いたメイド喫茶はふわふわした装飾にふぉうちゅんはーと、という看板を据えている。とてつもなく入りにくい異世界だ。

 かなでちゃんはその店のドアをあけ、

「ご新規二名様お迎えです」

 と伝えている。俺らがそのドアを通ると、店内から一斉に

「おかえりなさいませ、ご主人様」

 という声が聞こえてくる。

 うわぁ……。いや、偏見なんて全くないがなんだこれ。

 俺はその異空間異世界に圧倒されていると、かなでちゃんはそそくさとそのまま店内の奥に行ってしまう。

 俺らは別のメイドさんに席まで案内される。

 メニューも斬新すぎる名前で何がなんだかさっぱりわからない。メイドさんの黒い気持ち。ってなんだこれ。

 いちごちゃんとか意味が分からない。

 俺はあゆみの方に目をやると、落ち着きがなく美少女動物園を一人で堪能しているようだ。いつかあゆみはなにかやらかしてしまうんじゃないだろうかと心配していると、少し背が低めの小動物系の女の子がやってくる。

「おかえりなさい、お兄ちゃん♪ 久しぶりだねー、会えるの」

 とフランクに話しかけてくる。

「わー、紗咲ちゃん!! お久しぶりだ―」

 あゆみはその姿を見てとてつもなく興奮しながらそういう。

「お兄ちゃんって、ここはメイド喫茶じゃないのか?」

「いえいえ、紗咲はね、妹メイドなのーよろしくねー。何にするか決まった、お兄ちゃん?」

 まったく意味が分かりません。妹メイドってなにそれ。妹がメイドってすごく歪んでいませんか……。

「とりあえず、ケーキセットにしようかな、高峰もそれでいいだろ? 俺はいちごちゃんとはーとてぃーで」

 あゆみは呪文を唱えた。いったい何を頼んだのかまったくわからない。

「え、じゃあ俺はチーズケーキとホットのブラックコーヒーで」

「わかったよー。そっちのお兄ちゃんは、ちーちゃんとメイドさんの黒い気持ちだねー」

 いや、コーヒーが黒い気持ちなのかよ。

 もう突っ込みが追いつかない。こわい、ここ。

「じゃあ、今から愛情の魔法で用意するからちょっとだけ待っててね♪」

 と紗咲ちゃんと呼ばれるメイドさんはルンルンと奥に向かっていく。

「あのひと、実はここのオーナーなんだ」

「あぁ、もう、突っ込むの疲れたからやめていいか?」

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