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誰のためでもないラブソング  作者: 満点花丸
第四幕:愚者の一撃
25/43

ギャグをギャグだと思うのが難しいようにまじめな話をギャグだと感じてしまうこともあるだろう。

 意気込んでは見たが、俺たちはチキンをほおばりながら、俺は今期のアニメがどうとかこうとかあゆみと翠が話しているのをなんとなく見守る。

 俺もあゆみに勧められるがまま、アニメを見たりはしているがそこまで詳しいわけではない。

「俺も異世界転生して、モテモテうはうはスローライフを送りたいぜ……」

 とあゆみは突然漏らす。

「安心しなよ、あゆみは異世界に転生してもきっと立ち位置は一緒だと思うな」

「確かに。お前のそのにじみ出る変態性を異世界の人も感じ取って相手してくれないだろう」

 そんな無駄な妄想をするくらいならやって確かめればいい。

「二人とも当たりがきつくないか。きつきつキツツキじゃないかい?」

「とりあえず、このチキンの骨でものどに刺されば異世界に転生できるかもしれないね」

 なんとなく、こいつらの雰囲気も実際あの色欲と怠惰の悪魔のコンビに似ている気がする。これはメタファーというやつか。あゆみと佐藤がくっつき、小日向と翠がくっつくという少女漫画の残った登場人物全員同じコミュニティ内でとりあえずカップリングしましたー的なお約束展開なのか?

 いや、それはないか。佐藤とあゆみは同じ要素を持っていても絶対に気が合うとは思えない。だが、そういえば、小日向は翠と仲良くなりたがっていたな……。

「それで壮馬、もうこんな話はどうでもよくて、」

「どうでもいいはひどくない?」

 翠が仕切り直して話そうとするのをあゆみが止めた瞬間、翠は黒い笑顔をあゆみに向ける。中性的なショタフェイスだから圧力をかける顔もかわいらしいのだが、なんというかどす黒いオーラを感じてとてつもなくプレッシャーがかかる。

 そのプレッシャーにあゆみはひどく毒され、冷や汗をかきながら黙る。それを見た俺は改めて今日呼び出したことに関して話を始める。

「よし、そろそろ今度こそ本題に入るか」

「で、どうしたの?」

 と翠が促す。

「単刀直入に言う。俺は今冬菜のことが気になっている、恋愛的にではないが。昨日、二人で遊びに行って、道中冬菜を怒らせてしまったので仲直りをしたい、その作戦を一緒に練ってくれないか?」

「本当に単刀直入だね、というか急展開過ぎない?」

 翠は思い切り突っ込んでくる。そりゃそうだ。冬菜と出会ったのはあれだけ濃くて忘れそうになるが二日前なのだ。仲良くなりたいと思う気持ちに時間は関係ないとかよくいうあれだが、本当に俺たちの関係はたったそれだけに尽きる。

 あゆみは俺の方をニヤニヤしながらみる。

「どうした、あゆみニヤニヤしてキモイぞ」

「おっと、失礼。高峰、仲直り大作戦をやるなら明日だな」

「その心は? 内容すら決まってないのに」

 あゆみはその問を聞き、ちっちっちと人差し指を振りながらわかってないなぁというような顔をする。

「明日の天気見たか?」

 明日の天気?

「あぁ、明日、寒気の影響で季節外れの雪が降るかもしれないってね。というか、すでにもう外は結構寒かったよ……」

 翠がそれに対する答えをすぐに説明台詞のごとく教えてくれる。明日が寒くて雪が降りそうだから明日作戦を実行するってまったく話が繋がらないんだが。

「で、それが?」

「自然を利用するんだよ。もう一度デートに誘うんだ。そして、来るまで待つ、だから必ず来い、とお前は言うんだ」

「どういう脅迫だよ……」

「古典的だね」

「でも、女はきっとこういうのに弱い。自分のためにこんなにも荒れた天気の中、行かないと言ったが、少し心配になってくるんだ。そして、大丈夫かなってやっぱり気になって行ってみると、そこには雪だるまになった男が立っている!!」

 はぁ、きゅんきゅん! なんてするか!!!!

「あゆみのこの妄想脳は大丈夫なのか? 今更古典みたいな少女漫画の展開をリアルに女の子が望んでいるわけないだろう」

「でも、女子って相当リアリストでもない限りあながち間違いじゃなくて、少女漫画的な展開嫌いじゃないと思うよ……。だって、少女漫画なんて何年も前から似たり寄ったりの展開が多い。それは女子の趣味趣向が変わらずそういう古典的なのがやっぱり人気だからだよ!」

 翠まで乗っかってきたー!! そして、その黒い笑顔、俺が苦労して体張ったはいいが不発に終わることを絶対願ってるだろ!!

「いやまぁ、実際、冬菜がもう会わないって言ってるんだからそういう強引な展開にもっていかないと本当に二度と会ってくれないだろうが」

 あとは佐藤達の手助けを求めるか。いや、助けてくれるのかも謎だが。

「明坂さんとかはこういうの好きそうだよね」

「なんでそこで沙由菜が出てくるんだよ」

「女子からの意見も聞いておいた方がいいんじゃないって思って。あ、でも明坂さんとも喧嘩してるんだっけ?」

 喧嘩というとあれだが、沙由菜が一方的に今日は不機嫌だっただけだ。直接的な理由は定かではない。間接的な理由で思い当たる節がないわけでもないが。

「ってか、明坂さんが怒ってた理由ってこれじゃね?」

 とあゆみがいい、ぎくりとする。

「え、あゆみそれってどういう?」

「ほら、明坂さんって高峰のこと大好きじゃんか。それなのに、高峰が別の女に現を抜かしているわけだし」

「あぁ、そういうことか。確かに、あれだけ壮馬のこと好き好きオーラ出してるのに、壮馬のらりくらりとかわしてる上でその所業でしょ?」

 え、お前らの目には沙由菜がそう見えてるのか?

 確かに、さすがにこの前遊びに行ったときにその好意が恋愛感情によるものであるかもしれないと察したが……。

「これは業が深いな。天誅が下されるべきだろう」

「いやいや、待て待て。話がそれてる、今は冬菜との仲直りが!」

「それに関してはこれから話すとして、でもやっぱり明坂さんが怒ってたわけだし、ちゃんと気にしておかないと取り返しがつかなくなるぞ」

 でもそれって、半分はお前が生理って言おうとしたからじゃないのか、と突っ込まないでおく。いや、確かにその程度ではデリカシーがないとその場では怒られるだろうが丸一日話しかけてすら来なかったのも事実で沙由菜は何かに対して怒っているのは間違いない。

 再三言うがその直接的な理由はわからない、間接的な原因に思い当たる節があるだけで、どうかはわからない。あゆみが言うような理由なのかもしれないし、もっと別の理由かもしれない。ただ、俺はいくつか怒る理由が思いつく。

 そのことに関して、沙由菜の虫の居所が悪いところを突っつくよりも、沙由菜なら自分から何かを話してくる可能性の方が高い。だから、まずは冬菜との関係の修復を図らないと、こっちこそ完全に終了してしまう可能性が高い。

「壮馬、今どっちが優先とか考えてない?」

「お前はエスパーなのか?」

「それは会話の流れから、明坂さんに怒られてる理由は考えなくてもいいみたいな言い方だったし」

「そうだぞ、高峰。別に高峰がどっちを好きであっても、美少女を怒らせてしまっている以上、ちゃんとケアしなくてはならない。物で釣るとかではないが、何かプレゼントでもしてご機嫌を取っておいた方がいいんじゃないか?」

「でもそれだと、何かものをやれば許されると高を括ってるとか思われそうじゃないか?」

 あゆみたちの意見も至極もっともではあるが、そういうのが嫌いというやつもいる。沙由菜に関してはどちらかと言えば、はっきりそうだと言いそうだ。

 しかし、すぐにあゆみに反論される。

「考えないでしばらく放置されるくらいなら、すぐにでも物で釣ってくれた方が考えてくれてると思えてうれしいって考え方もあるぞ」

「な、なるほど。確かに一理あるかもしれないな」

 翠もうんうんと頷く。

「壮馬に今明坂さんのことを考える余裕がないんだとしても、そういうポーズは取っておいても損じゃないと思うよ。悪いことはいわないから何かプレゼントを贈りなよ」

「じゃあ、明日も俺に付き合ってくれ、買い物にいこう」

 と俺が言うと、二人は当然だというような顔をしてくる。

「それで、雪野さんに関してはこんなのとかどうかな? 金やるから、俺の女になれ……」

 翠はニヤリと笑う。いや、何言ってるんだ、こいつ、突然またギャグみたいなことを言い始めて。と思いつつなにも言わずにいると、

「嘘だよ、嘘。本当はこっち」

 翠はギャグをギャグだと受け取らずに真顔で見てた俺に気付き、すぐに訂正し、咳ばらいを一つ入れ仕切り直そうとする。

 そして、翠は突然そのベビーフェイスで俺の目を見つめて近づいてくる。

 さらにその手が俺の頬に触れられ、顔が近づいてきて、

「って、お前なぁ!!」

 翠の手を思い切り払いのける。

「BLの需要もあるかなぁって、思って」

「俺ら三人しかいないのに需要も糞もあるかっ!」

 結局、ギャグみたいなことしかしないのか……。まじめに考えてくれないのか……。

「だから、それを雪野さんにするんだ」

 あゆみが突然バカみたいなことをいうが、今度の翠はかなり真顔だ。

「まて、お前ら本気で言ってるのか?」

「何いってるのさ。その子壮馬に惚れてるんでしょ?」

 え、惚れ、ってそれはないだろ、女子高生。間違えた、常識的に考えてだ。両方JKだから、間違えちまった。という動揺を隠しきれない。

「嫌われたっていっただろ」

 と突っ込むと、あゆみがまた人差し指を振りながらちっちっちとカットインしてきた。

「エロゲギャルゲに於いては、嫌いは好きなんだよ」

「いや、これは現実だし、それは嫌いが好きにすりかわるイベント後だろ」

 むしろ、興味を持ってくれて始めていたのに一気に好感度を地に落とすイベントをこなしてきたところだ。 

 だが、あゆみは相変わらずの得意などや顔を見せる。

「イベントなら起こせばいいんだぜ。しかも現実だって、好きの反対は無関心だっていうんだぜ? 好きも嫌いも表裏一体だ」

「あゆみの変態も伊達や酔狂じゃないね!」

 いや、変態が伊達や酔狂じゃないって、誉め言葉どころか、やべーやつだよ……。

「で、結局、イベントを起こせって言われても、仲直りしたいだけなんだぞ?」

「それが答えじゃん」

「は?」

 翠はコーラをぐいっと一思いに一気に飲み、むせる。それが答えじゃんって。

「最初に言ったことをするしかないだろう、マジで。それがイベントにもなるわけだし。それに、お前の仲直りをしたいという気持ちを誠心誠意伝えるためにはそれが口から出まかせではないことを示さなくてはならないだろう。で、あれば打算的にその行動を取るべきだ」

「本気で言ってるのか? 俺は冗談だって捉えていたが」

「マジも大まじだ。少しくらい病気を覚悟してでもいくんだ!」

 おいおい、いや、確かに妙に説得力を感じてしまうのだが……。他にいい案が思いつけないのも間違いない。やるしかないのか……。

「ってか、俺らの中ではすでにそれしかないと思ってたから明坂さんの話にずらしたんだけどな」

 翠もうんうんと頷く。

 こいつら、他人事だと思って、簡単にいいやがって……。いや、確かに冬菜と仲直りできるのなら風邪だろうが病気だろうが全然かまわない。だが、明日の寒気の話でなくても、この季節のこの町に長時間外にいたら死ぬことだってありえるんだぞ……。

「大丈夫、暖かいもの何回も差し入れしに行ってあげるから、安心しなよ」

 俺が勝手にその答えに行き着くならわかるが、それをやらせようとするのは少しサイコパス感を感じる……。が、いや、納得しよう。たぶん、あの冬菜を外に引きずり出し、会話をするためには良心に訴えかけるのが一番簡単かもしれない。不発に終わってから新しい案を考えればいい。

「本当にこれでうまくいかなかったら恨むぞ、お前ら……」

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