2.Re:Start
いつからだっただろうか。
母がオレに暴力を振るい始めたのは。
当時のオレは母を恐れると同時に「嫌われること」を恐れていた。
だから何もしないで部屋の隅にずっとうずくまっていた。
気付くとベッドの上にいた。
どうやら母はオレを棄てたらしいが、それにも気付かずじっとうずくまっていたオレは、何日も飲まず食わずで気を失っていたらしい。
その事を聞かされた後、俺が生まれた。
◼
「Hum...Where are we?」
日本語でおk
「このくらいわかるだろ。それよりもどこだ?ここ?」
見た感じ神殿の内部みたいだな。
異世界人はとんだ邪神を召喚したみたいだぞ。
「ヒーローだって。つーかもし召喚されたなら、召喚者とかいるもんだろ。ここには人の気配がないぞ」
外でなんかあったのかもな?
行ってみたら?
「そうすんべ」
◼
「英雄が召喚されるまで、なんとしても持ち堪えろー!」
「行けっ!召喚される前に破壊しろ!」
白の「ユニコーン」が装飾された旗の陣営と黒の「鷹」が装飾された陣営が両者入り乱れる戦乱を行っていた。
「これ以上やらせるかっ!」
白の兵士達が黒の陣営の大将と思しき物に攻撃を仕掛ける。
だが、
「邪魔だ」
「なっ!?」
「がっ!?」
その男が手で振り払う動作をすると、兵士達は足下からすぐさま氷像と化してしまった。
「こ、この能力はっ!?氷結のミストラル!?氷結のミストラルだー!?グォッ!?」
氷結のミストラルと呼ばれた男は、自らの名前を明かした兵士を氷像に変えて、冷徹な眼差しで周囲を見渡した。
「この程度か...。英雄とやらが召喚される前に片がつきそうだな」
そう言って、自らに刃を向ける兵士達を次々に氷像へと変えていった。
「おのれっ...!氷結のミストラル...!噂以上の力ではないか...!」
「しかしっ!今ここで退けば、もう勝ち目は!」
「わかっておる!なんとしても抑えろー!」
そう言って味方を鼓舞するも、次々に兵士を氷像へ変えていきながら、神殿へと歩いてくるミストラルを止められる手段など、もはやなかった。
「さて、神殿ごと凍らせてから砕くか」
そう言って彼は、両手を前に出し交差させた後に呪文を唱え始めた。
「太古の大地を凍てつかす、氷の牢獄......あらゆる生命を停止させる命の牢獄...!氷結界・絶対零度!!」
神殿を囲む巨大な魔法陣から全てを凍てつかす冷気が発生し、石造りの神殿は瞬く間に氷の塊となった。
「まだだ...。全てを貫く氷の牙...命を絶つ薔薇の棘...氷結界・氷柱薔薇!」
ミストラルの周囲に現れた魔法陣から鋭くも美しい大小様々な氷柱が現れ、神殿へと放たれたそれは氷の神殿を砕きながら蜂の巣にしていた。
「これで終わりだ。」
そう言って彼は彼は巨大な氷柱を凄まじい勢いで神殿へと放った。
もちろん、神殿がこれに耐えられるはずもなく、木っ端微塵となってしまった。
「あぁ......最後の希望が...」
「元より貴様らに希望など無い。この戦い、我らの勝ちだ」
黒の陣営による絶望の淵へと落とされた白の陣営の虐殺が今まさに始まろうとしているその時。
「テーマパークに来たみたいだぜ」
テンションあがるなぁ~
◼
「なっ...なんだあれは...?」
「まさか!間に合ってくれたのか!」
「なんの事だ?」
たぶん英雄召喚ミスって俺らが召喚された事だろ。
「ミスじゃねーよ。オレヒーローだし」
「今、詳しく状況を話している時間はありません!アーデリア帝国の精鋭、《ブラック・イーグル》を倒してください!」
「いきなりだな」
こっちの都合ガン無視だな。
「どいつが敵かわかんねーから全員退かせろ」
「えっ...?しっ、しかし!」
「いーから、任せとけって」
さぁ、そこからダイナミックに登場だ。
「スーパーヒーロー着地で行くぜ」
膝割れればいいのに。
◼
「ミストラル大尉!英雄と思しき男、出現しました!」
「...少し遅かったか」
なんだ覆面男は...?
あれがネスト王国の最終兵器だと?
「まぁいい...全軍、目標はあの覆面男だ。何があるかわからん。注意して戦え」
今はあの男に注意しなければ...他の生き残りは後でも処理出来る。
「...さて、お手並み拝見だ」
◼
全員俺ら狙いだな。
「早く済みそうだな」
「敵の大将...氷結のミストラルには警戒してください...。奴の力で我らの軍は大打撃を受けました」
「名前からして氷系だな」
氷系は強いやつ多いぞ。気を付けろ。
「その分噛ませも多いけどな!」
「くっ!来るぞーっ!」
「お待たせ!待った?」
見事な首捩じ切り。
俺でなきゃ見逃しちゃうね。
「なっ!?一瞬で5人も!?」
お前悪役だろ?
「残念!英雄なんだなこれが!」
「くそっ!包囲だっ!」
「穴だらけだぜ」
「なんだとっ!?ぐぁあっ!?」
「がはっ!」
ジャンプで飛び越えることは想定してなかったのか?
「強さのわからない相手にそれは酷でしょうよ」
「化け物めっ...!」
「ヒーローだっつの」
ヒーローは心臓抉ったりしないぞ。
「どっかにいるだろ?こことか」
だいぶ数が減ったな。そろそろ大将首殺って来たらどうだ?
「Roger!」
◼
とんだ化け物が召喚されてしまったな...。
「大尉!前衛、壊滅しました!もう持ちません!」
「だろうな。お前達はこの事を戻って報告しろ。私が引き受ける」
「なっ!?何を言っているのですか!?」
「このままでは勝てん。余り兵力を減らすわけにもいかん。私1人の犠牲でお前達を逃して見せよう」
「なりません!あなたのお力はまさに一騎当千に値するもの!そんな人を無くすわけには!」
「このままでは全滅だ。これは命令だ。生きて帰れ」
「くっ...!......わかりました...どうかご武運を!全軍撤退だー!」
これで奴のことは報告できるな。
さて、腕の1本だけでも道連れにせねばな...
「作戦会議終了?攻撃していい?」
もう後戻りは出来ん。
「その前に貴様は本当に英雄なのか?」
「ヒーローではあるな」
「...それほどの力、どこで手に入れた?」
「オレが元いた世界で筋トレして、悪魔と契約すしたらなった。今はファッキンジジイと契約してるけどな」
「ふざけたことを...」
「あんた、オレの力を見る為に何人も犠牲にしたな」
「...貴様が1人殺した時点で気付くべきだった」
「わかってたくせにー。それと時間稼ぎも終わりでいいか?」
「......危険な男だ」
そう言い終わると同時に兵士達が稼いだ時間を使って仕掛けた罠を作動させる。
無論これだけでは無い。
奴に見えないように手の中で氷結界・氷柱薔薇を起動させていた。それをやつに向けて
「結構前からわかってたぜ、その作戦」
「!?」
気付けば、今奴に放たんとしていた右手を、奴が担いでいた。
「っぐぅ!?」
おまけに奴を拘束する術式、氷結界・縛道鞭も見抜かれていたのか破壊されていた。
「あの罠、殴れば破壊できたぜ。来世ではもっと頑丈にするんだな」
「まっ!まだだ!せめて一撃だけでも!」
「一撃がなんだって?」
「ごふぉっ!?」
瞬間的に移動した奴に腹を思い切り殴られ、ボールみたいに吹っ飛んだ。
「腹筋は硬いと思ったら氷でアーマー付けてたか」
「がほっ!ごほっ!」
もはや勝ち目は無い。せめて彼らがこの事を報告出来ていれば良いが...無念だ...。
「あら?おねんね?おーい...ーぃ...」
............。
◼
あいつ生きることを諦めてるぞ。
「...なかなか部下思いだな。ここまで耐えるとは思わなかったよ」
トドメ刺すか?
「いや、捕虜にしよう。おいおっさん!コイツ捕虜な!」
「えっ?あっはい!かっ、確保ー!」
殺さないのか?
「戦争している理由を聞きたかったからな。片方の意見だけを聞くのはフェアじゃないだろ?」
まさか戦争を解決しようとしてるのか?
「ヒーローだからな」
馬鹿げてるぜ。
どうせ決定権はお前にあるが乗ったぜ。
「おお!心の友よ!」
へへっ、よせやい。
こうして俺たちは召喚された英雄として、戦争を終わらせる戦い《・・》に身を投じるのであった。
「矛盾してね?」
永遠のテーマだと思うの。
ルビの振り方などがわからずに苦戦しました。
1話目書いてる時は補助機能あったのに、何故でしょうか?