怒りの代償
序章 魔王への道のり
「着いたかぁ」半分ため息を含んだ囁きが口から漏れる。王都にいる間お世話になる、ノストル伯爵の屋敷の大きな門の前にいる僕は呼び出しをするのに少し躊躇っていた。彼は、数少ない僕らの家のことを馬鹿にしない貴族であって、とても優しいのだが少し厄介な御方なのだ。何が厄介なのかというと色々ありすぎて話し始めたらなかなか収まりきらない。1言で表すのであるなら愛がすごいのだ。僕の着替え中に入ってくるのは当たり前、お風呂やトイレのときでさえもさもあたりまえのような顔で入ってくる。ノストル伯爵は、とても美しい女性なのだが変わりすぎていて、殿方が寄り付かないのだ。僕はキュッと心を縛り心構えをしてチャイムを押した。
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「これで何回目だよぉ!」ノストル伯爵の屋敷に来て1ヶ月が経った。それと同時に僕の使用してるものが減っていっているのだ。と言っても犯人はわかっているし、なくなっても伯爵のメイドさんや執事さん達が、前に使っていたものの数倍もするものを新しく買ってきてくれているので困ることはないのだがそれこれでは話が違う。毎日干してあった下着がとても高いものにすり替わっていたり、新しいものが家に届いたりしていたら嬉しさなんかよりひたすら鳥肌もんだ。そんな事が続いて僕にも遂に堪忍袋の緒が切れた。
「どうかなさいましたか?!」
ここ1ヶ月間お世話になっているノストル伯爵家のメイド、ネーゼが慌てて部屋のドアをノックしながら僕に聞いてきた。
「また僕の服がなくなっていたんだよ!これで何回目なんだよ!いくらなんでももういい加減にしてほしいな!」
怒気を孕んだ言葉でメイドに伝えた後にハッと冷静になり、ネーゼに謝罪した。
「すまない。少しイライラしていたみたいで…」
「大丈夫ですよ!私でもこんな事が続いてしまえば怒りたくなる気持ちもわかります」
彼女は柔和な笑顔で僕を諭し許してくれた。
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~そんな2人の後ろでは~
「キィィーー。何よあの娘!仲良く話していてずるいわそんなの!」
怒っている原因になってる彼女が彼ら2人の話している姿を羨ましそうに睨んでいた。
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下着の一件から数日たったある日
「王様から手紙が届いております」
ネーゼが僕にそう伝えると部屋の前に手紙を置き持ち場へ戻っていった。
なんのようなんだろう?そう思いつつ手紙を開けた。