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color's  作者: 佐藤海空陸
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color's 5話

学校の自習中に書き上げられたので、まだ受験終わってません(始まってすらいません)が投稿させていただきます!

次回投稿は、今度こそ2月以降になると思います。

  第5話 演じきれ!


「おいコラ!全員席につけ!」


 五時間目の古文の先生が、大きな声でそう言った。どうやら五時間目開始のチャイムが鳴ったようだ。しかし、その音に誰も気づいていない。もちろん俺も気づかなかった。それはなぜか、おそらく俺、もしくは大谷さんのせいだろう。

 今現在の状況を説明しよう。只今教室後ろの左側に女性陣、右側に男性陣が集まっている。そしてその女性の輪の中心にいるのが大谷さん、男性の輪の中心にいるのが俺だ。そして…


「お、おい!お前!大谷さんと何があったんだ!」

「お前まさか…!くそ!先を越されちまったのか!?」

「てめぇ、よくも俺らの天使を汚してくれたな!」

「保健室でへんなことしてないだろうなぁ!?」


 とまあ、集団リンチ?にあっている───

 


…なぜこうなった?


 遡ること十分前、昼休みも残すとこ五分という頃だ。俺はその時教室の前にいた。普段なら誰にも気づかれないようにそーっとドアを開けて静かに入り、そーっとドアを閉める。誰にも迷惑をかけない行動をする俺だが、今回は状況が違いすぎる!

 どう違うか、それは俺の隣にいる彼女の存在だ。


「よし、入るよ」


 彼女がそう言ってドアに手を伸ばす。


「ちょ、待っ!」


 俺がそう言うと彼女は伸ばしかけた手を引き戻して


「何?どうしたの?」


 と、言ってきた。


「や、やっぱりここまでする必要ないんじゃ...」

「はぁ?あんたなんでもするって言ったでしょ?これくらいしないと、結衣は分かってくれないの!もういい?開けるからね」


 また手を伸ばす。

「ちょ、待っ!」

 また戻す。


「もう!何なのようじうじしてみっともない!」


「その...そーっと開けてね、ドア」


 彼女は「はぁ」とため息をついて、勢いよく教室のドアを開けた。

「ちょ、待っ!」

「あー!もう!しつこいのよ!」


 教室内に彼女の声が響く。中は静まり返っていた。


「あ、あははー!みんなただいまぁ!」



 彼女は左手をあげてみんなに挨拶した。しかし返事はない。ただとてつもない数の視線を感じる。その沈黙はなんかとても怖かった。


「ゆ、結衣!ほら!これ見て!」


 彼女はあげていた左手を下げて、右手を上げる。それと同時に俺の左手が上がる。視線はよりいっそう強くなった。特に男からの視線。


「わ、わぁー、ちゃんと言った通り仲直りしたみたいだね...」


 そう言ったのは、彼女に名前を呼ばれた川井さんだった。その川井さんですら、流石にその状況では苦笑いだった。

 その状況とは...


「わ、私達、手を繋いでここまで歩いてくるくらい仲良くなってるんだから、仲直りしてないはずないじゃん!」


 そう、今、俺と彼女、大谷沙耶は手を繋いでいる。



 ...どうしてこうなった!?



 それまた遡ること10分。保健室にて。

 土下座姿の俺に対して


「まず土下座やめろ、普通に座れ」


 と、大谷さんは言ってきた。俺はささっと普通の態勢に戻す。


「よろしい。じゃあまずなぜ私がこんなところにいなきゃいけないのかの説明をする」


 大谷さんは話し始めた。


「あんたが倒れた時、私それハードな演技だと思って叩き起してやろうとしたんだよ。そしたらほんとに気を失ってやがって。一応私と結衣と男子二人であんたを保健室に運んだんだけど、結衣が私に怒って、あんたと仲直りするまで話してあげないって言われた訳。それで私が気を失ってるあんたに謝って仲直りーってやったらさらに怒っちゃってあんたが起きるまでここにいろ!って言われちゃったの。だからここにいた」


 あ、納得しました。なるほど、ここにいたのは俺を心配してくれてたのではなく、川井さんに言われたからってことね!


 ...そーゆーのは本人には言わないで欲しかったな、泣けてくる。


 けどまあ、今の話で多少わかったことがある。


「えっと、大谷さんは、川井さんのことが大好きなんだね」


 そう言うと大谷さんは一気に顔が赤くなった。あ、決して百合的な意味ではないはずですよ。知らないけど。


「わ、悪いかよ!てか普通に声出てるじゃん!」

「え?あっ!」


 自分でも気づかなかったがまた声がちゃんと出るようになっていた。


「私にとって結衣は初めて出来た親友と呼べる存在なんだ。私こういう性格だからそれなりに仲良くしてくれる人がいても、結局それなりのまま、それ以上仲が深まらないんだ」


 そう、少し悲しそうに言った。


「こんな性格って?」

「はぁ?あんたに言う必要ないでしょ」


 えー!?いう必要ないだってー!?…まあ確かにその通りだわ。


「てか、あんた多少は分かってるでしょ?」

「怖い…とか?」


 そう言うとギロっと睨んできて


「は?どこが?」

「そ、そういうところが!でしゅ!」


 ...噛んじゃった、恥ずかしい!


「はぁ、ま、そんな所よ」


 少し呆れたような顔をしながらそう言った。


「けど、結衣は違かった。どんどん距離を縮めてくれた。すごく嬉しかったの」


 そう言った彼女の顔は、今まで見た中で一番優しそうな目をしていた。



「だから、失いたくないの。結衣だけは」



 そして今度は真剣な眼差しでそう言った。しかし俺はその言葉を聞いて、少し悲しくなった。


「失いたくない、か」

「何か言った?」

「あ、いや、何でもないです。それで、俺は何をすればいいですか?」


 そう問いかけると、大谷さんは覚悟を決めたような顔をして


「結衣はね、すごく単純なの。だけど、色んなことがわかってるみたいな感じがするの。だからね、多分私が仲直りしたよって言っても嘘だってバレるの」


 あー、なんとなくわかる気もするな。川井さん、相手のことをしっかりと見てるから、しょうもない嘘とかに騙されなさそうだな。


「だからね、行動に移さなきゃいけないの。だから...」

「だから?」


 大谷さんは何か言いたくなさそうな顔をして黙っている。その表情を見た俺にも緊張が走った。そして一回深呼吸してからこう言い放った。



「て、手を繋いでみせるの!」



「え、ええぇぇぇーー!!!?」

「ちょっと!声がでかいって!」


 思わず口を塞いだ。


「な、なんでそんなぶっ飛んだ思考に?」

「だから行動に移さなきゃいけないって言ったでしょ?」

「な、なんか他にないの?ほら、俺がふらふらの演技するから肩かすとか?」

「私たちの身長差考えてから言いなさい」

「あ、ごめん。さすがに無理があったよね...」

「そこは否定しなさいよ!惨めじゃない!」


 ちなみに俺の身長は大きい方ではないが、大谷さんは非常に小さい部類に入るだろう。


「ていうか、何でもするんでしょ?私は覚悟決めてるの。あんたも覚悟しなさい!」

「は、はい!...ていうかこれってむしろ御褒美?」

 あ!思わず口に出てしまった。そっと大谷さんを見てみるとガチで引いている。


「キモっ、陰キャキモっ!」


 ...酷い言われ用だ。けど、なんか陰キャっていう言葉になれてきたな。

「え、えっと…手、繋いでみますか?」

「なんかマジで嫌になってきた…。けど、覚悟決めないとね」


 そう言って彼女は右手を出してきた。俺も左手を差し出す。


「握るからね」

「は、はい!」


 こうして俺と彼女は手を繋いで教室に行くことになったのである。



 時間は戻り、五時間目。先生の怒鳴り声でようやく授業の時間と気づいたみんなは慌てて席についた。もちろん俺も急いで席についた。しかし、その授業には全く集中出来なかった。周りからの目線の影響だ。その目線が気になってしまってキョロキョロとしていると、大谷さんと目が合った。うわ、すっごい睨んでる。思わず目をそらした。挙動不審思われるのも嫌だったので、寝た振りを始めた。この先生は、寝てる生徒を怒ったりしない(ただし大幅減点する)からこれでやり過ごそうと思った。すると隣の席の人が声をかけてきた。


「ちょっと、これ回ってきたんだけど」


 手紙が回ってきた。俺はゾクッとした。殺人予告かな?なんて思っていた。しかしその手紙の送り手はある意味殺人予告的な内容をその手紙に記していた。


 〝演技続行

 何を聞かれても仲良し風に返せ。演技だとバレるな。 大谷沙耶

 ps.バレたらどうなるかわかるだろ?〟


 怖い!怖いよー!大谷さんやっぱり怖いよー!

 俺はこのとき察した。おそらく俺は、演技とバレようがバレまいが、刺される可能性が高い、と。


「はい、じゃあここ。寝た振りが下手くそな西野。答えなさい」

「え?」

「西野、授業が終わるまで立っていなさい」

「え、あ、はい...」


 くそ、こんな指され方は考えていなかったよ、まったく…。


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