color's 第1話
第1話 早々の災難
高校に入学して一ヶ月が経った。けれど、未だに友人と呼べる存在はいない。
俺は小、中学生の時はそれなりに友人はいた。でも、俺から声をかけたのではなく、そいつらから俺に声をかけてきた。
だから俺は自発的に友達作りをしたことが無かった。高校でも誰かに声をかけてもらえるとどこかで期待していたのだろう。
しかし、このご時世そこまで甘くないようだ。
結果、誰一人として話しかけてこなかった。隣の人も後ろの人も前の人も。
それに、この高校は同じ中学だったやつが全員試験落ちたから、知り合いが一人もいない。
さらに悪いことに、もう学校始まって一ヶ月経ってしまったので、今更誰かに話しかけたら、絶対に気持ち悪がられてしまうだろう。そう考えると話しかける気が引けてくる。
完全にやらかしてしまった。
まあ自業自得ではあるけれど、正直こうなるとは予想していなかったから、毎日が辛い。
あーあ、寂しいな。夢も目標もなければ友人すらいないなんて、神様、もう一度無邪気なあの頃に戻して欲しいよ、理不尽だよ、泣いちゃうよ。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り授業が終わった。
クラスメイトは皆自分の属しているグループにそれぞれ散ったり、トイレに行ったり他クラスの人に会いに行ったりしている。
そんな中俺は1人自分の机でスマホをいじっている。
あーあ、退屈だな。やっぱり今日も疲れるだけの退屈な日々になりましたな。
まあ高校入ってからはいつもの事だからな、とか言って開き直ってる自分、まじ哀れ。
そうこう考えていると、授業開始の2分前になっていた。
「やべ、授業の用意しないと」
そう言って席を立ってロッカーがある廊下へ出ようとした。次の授業の日本史の先生は、チャイムが鳴った後に廊下に出ると、授業を遅刻扱いにされてしまうのだ。
廊下に出ようとしたその時、何かとぶつかった。
「キャッ!」
前を見てみると、女子にぶつかり倒してしまっていた。そして俺はその子を見た瞬間、やってしまったと思った。
「あ、ごめん、前見てなくて」
俺はすぐさま謝った。しかし、謝ってすぐ問題ではないと思った。だってその子はーー
「ちょっと、前見てないでどこ見てるのよ!結衣が怪我したらどうすんのよ!」
その子と仲の良い子に怒鳴られた。そう、俺がぶつかってしまったのはクラス1可愛いと言われている川井結衣だったからだ。
「いや、大丈夫だよ。ごめん、こっちも前見てなくて」
しかし川井さんはすぐに立って謝ってきた。
「いや、これは完璧俺が悪いし、謝らなくて大丈夫です」
おーっと、俺素晴らしい紳士っぷりを見せたぞ。けど俺が悪いと思っているのは事実ですからね。
「そうだよ結衣、謝る必要なんてないよ、結衣悪くないんだから」
うーわー、こういう奴俺苦手だな。
「てかあんた、わざと結衣にぶつかったでしょ!てかあんた誰よ!どこのクラスよ!」
「わざとぶつかってないよ。それに俺、このクラスだよ?」
「へ?」
「え?」
俺は視線を感じてパッと後ろを振り返った。するとこっちを向いてる人全員が俺の方を見て「へ?」という顔をしていた。
え、嘘。俺、このクラスの人って認識されてなかったの?マジ泣きしちゃうよいいの?
すると、
「もう、沙弥、それは流石に西野くんに失礼だよ!ちゃんと謝りなさい!」
そう言ってくれたのは、今俺が倒してしまった川井さんだった。良かった、ひとりは俺のことを覚えててくれた。
「西野?確かに名前聞いたことあるような…。まあとにかく気をつけなさいよ、この陰キャ野郎」
グサッ
言葉の槍が俺の心を貫いた音が聞こえた。自分でも陰キャラであることは自覚していたが、いざ面と向かって言われるとこんなに傷つくんだな。それに後ろの方からクスクス笑い声聞こえるし…。
あー、やっぱり泣いてしまおうかな。
さらに、悪いことは連鎖するようだった。
キーンコーンカーンコーン
「はい、授業を始める。もう廊下出るなよ。ん?おい西野何してる、早く席つけ」
「あのー、授業道具取ってきてもよろしいですか?」
「おういいぞ、西野、授業遅刻な」
...うん、泣いてしまおう。