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3話 『カタチ』

"悪魔の軍勢"、国が攻め落とされた辺りから話が大きくなってきたけど、いきなり頭が追い付かなくなってきた。御伽噺などで出てくる悪魔まで存在するんだこの世界・・・そんなのと対抗するために呼ばれたの?出来るの?

さすがに悪魔が相手とは思ってなかったようで、自由人がアイリスに喰いかかる。


「ちょっと待て!そんなのと戦うために呼ばれたのか!」


「そうよ」


「そうよ、じゃねぇよ!人間相手ならともかく悪魔が相手とか俺達に何とかできると思ってるのか!」


「思ってるけど?大丈夫だって、別に君達に全部任せるわけじゃないし。その件については後で説明するから。それに今更降りるつもりはないんじゃろ」


先程自分で言ったことを突かれぐぬぬ、な感じで引き下がる自由人を尻目に話を進めるアイリスに対して先程から隣で沈黙していた久那衣が口を開く。


「それで状況は?」


この子もう戦う気でいる・・・そういえば向こうで初めて会ったときも刃物向けてきたし、なんか変わった子なのよね、なんか慣れてるというか、躊躇いがないというか・・・


「国は大魔軍に乗っ取られ、今や悪魔の拠点の1つになってる。」


「こちらの動きを勘付いてたりは?」


「ソフィアちゃんが逃げ延びてることも君達を呼ぶ際に次元に穴を開けたことも気付いてる悪魔は居るだろうけど、大丈夫じゃない?そういうことは小さいこととして切り捨ててるみたいだしね」


「でもここも絶対安全じゃない」


「そう、アタシの結界が張ってあると言っても何時攻めてくるかも分からない。けど少しの時間はある」


アタシなら稼げる、と自信満々で言っているがセーラと自由人は不安だ。今のままでは悪魔と戦うどころか数の暴力を前になすすべなく負けるだろう。その件は後で説明すると言っているが、そんな短期間で身に着けた力で悪魔に勝てるとは限らない。ほんとに大丈夫なのだろうか


「それじゃソフィアちゃんが起きてくるまで少しの休憩ね。対抗手段についてはその後だ!」


そう言うなり家の中に消えていくアイリス。

取り残された3人は家が見える範囲で散らばり各々考えに耽っていた。

これからどうなるんだろう・・・この世界に来たおかげであの子に会えたけど悪魔と戦うことになるなんて思ってもみなかった。彼女の力にはなってあげたいけどこの人数で国を取り戻せるのだろうか?・・・はぁ、呼びかけに応じた以上考えても仕方ないのかもね。

あとの2人がどうしてるのか気になり周囲を見ると、自由人は近くにあった岩の上で寝そべっており、久那衣に至ってはどこにも見当たらなかった・・・いやどこ行ったの!?

久那衣を探そうと周囲を見渡していると、察したのか突然目の前に久那衣が降ってきた。その顔は何事も無いかのようにけろっとしていた。家の屋根にでも居たのだろうか?


「ほいみんな集合!ソフィアちゃんも休んだし次のこと行くよ~」


なぜか家の扉を蹴破らんばかりの勢いで現れたアイリスが召集をかけた。というか今扉は破れなかったけどなにかぬいぐるみみたいなのが吹っ飛んでいったような・・・見なかったことにしよう、うん。


「次のことってさっき言ってた対抗手段のことか・・・ってどこ行くんだよ!」


「いいからついてきなさい」


そう言いながらアイリスはソフィアを連れて森の中に入っていく。

3人ははぐれないようにその後を追っていく。すると先程の場所とは違った人の手が加わったように広くて岩の多い空間に辿り着いた。


「さてと、それじゃあ君達が悪魔と戦う場合の対抗手段について話すよ。まずは魔法だね。例えばこんなのとか」


そう言うとアイリスの右手から青い水球が生み出される。

次々と生み出された水球が空に上がっていき破裂する。


「それってこの世界の人じゃない私達にも使えるものなの?」


「練習すれば多分使えるよ。魔法を使うために必要な魔力は誰の中にもあるからね。大抵は眠ったままで気付かなかったりするけど」


「まずは1つって言ったよな、なら他にはなにがあるんだ?」


「・・・異世界から来た人間には力が宿るってお決まりじゃない?」


「はい?」


「いや漫画とかならよくあるが、まさかそれを頼りにしようとしてるのか」


「えぇ。・・・なにさその顔!冗談じゃないから!君達どうやって向こうで次元魔法感じ取ったさ!」


「どうやってって・・・なんか変な感じがしたから」


「私も大体同じ」


「同じく」


3人の答えに、それさ!とテンションが上がるアイリス。

いやテンション上げられましても・・・。


「3人の中に眠る力が目覚めて共鳴したから感じ取れたんだよ!」


「じゃあ、あの白い輪が見えたのもその影響なんですか?」


「なにか見えたの、マジで!?」


変なこと言ったかな?アイリスが凄く驚いていて、興味を引いたのかやけに見てくる。

両隣では自由人と久那衣が、なんだそれ?みたいな顔で見てくる。

アイリスの隣のソフィアだけは話が全く見えないようだった。


「多分術の副作用みたいなのだろうけど、そうそう見えるものでもないと思うんだけどなぁそれ・・・君、実はもう何かしら魔法使えたりする?」


「使えませんから」


「えー、まぁいっかまた今度で。話戻すけど、それで君達に眠る力が目覚めて使えるようになったわけですよ」


「けど、なんも変わんねえぞ」


「まぁ、目覚めたってだけでその力はカタチを持たずふわふわしてる状態なんですぞい」


目覚めただけ?カタチを持たない?ふわふわしてる?意味が分からない。2人も分かっていないようで頭を悩ましているようだった。その様子を見かねてアイリスが話を進める。


「カタチを与えればいいのさ」


「カタチを与える?・・・どうやって?」


「さぁ?これは人それぞれなんじゃよ、自分で導き出しなさい。それじゃ君達は力を引き出す練習、ソフィアちゃんは魔法の練習、頑張ってねぇ~」


そう言い残しアイリスは少し離れた場所の岩に腰を掛けて4人の様子を見始めた。

ソフィアが練習を始めたのを見て3人もそれぞれ取り掛かり始める。

そもそもどうやって力にカタチを与えればいいのか分からない。人それぞれってどういうことなの?みんな違うってこと?他の2人も分かっておらず、自由人は両手を握って力んでみたり、久那衣は自分の右手を見つめて何か考えているようだった。

それから3人は1時間ほど色々と試してみたがまるで成果が出ず、意気消沈していたがアイリスが気分転換と称し、皆で森の近くにある町に出かけることになった。



◆ ◇ ◇ ◇



「「「で、その恰好は何?」」」


森を抜けた時、3人が口を合わせたように同時にアイリスに問いかける。

それもそのはず。アイリスの姿は先程までの大きな帽子に蒼い長髪、暗い色のローブとは全く違う、肩までの長さの黒髪に白いコートを着込んだ、まるで別人のような姿になっていた。


「あぁこれ?これは魔法で見た目を変えてるんだけど?」


「なんでそんなことを?」


「怪しいからだろ」


「失敬な!いろいろあるんじゃよ!」


「いろいろねぇ・・・」


そんなやりとりをしている間に目的の町に到着する。

町は小さいながらも人の往来がありそれなりに活気があったがどことなく暗い雰囲気も感じられた。


「ここはフォレスの町、3方向を森に面している町で、旅人がよく休息として立ち寄るので活気があります」


「アタシもたまに変装して買い出しやら情報収集やらで来るのよ。結構近いしね」


「それは分かったが、なんか所々暗くねえか?何と言うか怯えてるような?」


言われてみれば辺りの店の奥や建物の陰などに消沈している人や死んだ目をしている人が目に付く。


「この町はあの国とも近い場所だからいつ襲撃されるかも分からないからね」


あの国・・・大魔軍に襲撃され奪われたソフィアの国の事だろう。

側に居るソフィアが沈んでいるのが見なくても分かる。


「それでここでなにをするんだ?」


「特にないよ。しいて言えば君達のための観光兼息抜きってところかね」


そう言うと少しの間自由行動となり、アイリスとソフィアは何かを買いに行き、セーラ達も辺りを見て回ることにした。そういえばこの世界に来てまだまともな文化を見てなかったのでお言葉に甘えて観光することにした。現在セーラがいるのは商店街のようであり、世界が違うだけあって仕組みは同じであっても扱っているものに違いが出ていた。変わった模様の果物、怪しい色のキノコ串、魔力が少し込もっているらしいお守り、変なポーズの土偶・・・etc. 美味しそうなものから売れるのか分からないものまでいろいろなものがあった(大体怪しかったけど)

そういえば今日昼食まだだったなぁ、それどころか今日コーヒー飲んだだけな気がする。お腹すいたなぁ・・・


「お姉さんお姉さん」


空腹なことを思い出して歩いていたセーラをそんな声が呼び止める。

その声は商店の間にある路地から聞こえ、そこには1人の子どもがいた。


「お姉さん変わってるね、何処から来たの?」


子どもに質問されたセーラは異世界から来たことを言おうか迷ったが、信じてはくれないだろうし異世界の事は言わない方がよさそうと思い、凄く遠いところ、と誤魔化しながら答えると子どもは追究してくることはなかったが、お願いがあると言ってセーラの手を引いて路地の奥へと入っていった。


気が付くとセーラは路地裏から町を抜けて森へと入っていた。

何処まで行くのか子どもに聞いても何も答えてくれない。何するのか分からないけど早く済ませて戻らないと・・・あれ?何処に戻るんだっけ?・・・それに何で連れて行かれてるんだっけ?

何故だか頭がぼんやりする。どうでもよくなってくる。そんな時、あの声が聴こえた気がした。


―― ――― ―。


―――っ、ふと我に戻り、子どもを見ると何故か子どもの姿だけが黒く霞んで視える。

その時何かを直感した、この子は違う・・・この子は"人間ではない"と!

その不審な視線に気付いたのか、子どもが振り向き不敵な笑みを浮かべる。


「ホォ、気付イタカ」


―――――ッ!


子どもが纏う雰囲気が変わったことに身の危険を感じて、相手の手を振り解いて距離を取る。それに対して子どもはクククと笑っている。


「オ前、良イ"眼"ヲ持ッテイルナ」


「・・・お前は誰だ!」


「餌ニ名乗ル名ナド無イ!」


その台詞と共に子どもが黒に覆われ、身体は三倍以上に膨らみ、角が生え、肌は黒く、爪は鋭く、異形の姿に変わっていく。まるで人を喰らおうとする"悪魔"のように!!


「まさか・・・悪魔・・・!」


「オ前ノ力、喰ワセロォォォォ!!!」


悪魔が勢いよく飛びかかりそれを反射的に躱す。すると悪魔は後ろの木々に突っ込み、木々が拉げ、粉々に噛み砕かれていた。


「逃ガスカァァ!!」


どうする!?このまま逃げても多分追いつかれる、下手に町にいるアイリス達に助けを呼びに行けば町を巻き込んで被害が出るかもしれない、どうすればいいの!?


―― ―――― ―!


また聴こえた・・・そうよね、やっぱりその手しかないのね。

覚悟を決めて悪魔に向き直る。この悪魔は私が倒す!そのためにも力を引き出さないと、まだ出来てないけどやらないとここで死ぬ!何でもいいから形に!

そうしている間にも悪魔は襲い掛かり、それを躱すが躱し切れずに少しずつ追い詰められていく。

お願い、成功して!追い詰められる度に焦りが増え、集中力が乱れていく。


― ―――― ―――!


焦るの中、頭の中に響くあの声が焦りを消してゆく。

――ありがとう。そうよね、貴方が見守ってくれているものね。

焦りが消え、冷静になった頭であの声が教えてくれたことを行う。

深く考えない・・・形に囚われない・・・目的を明確に・・・その力が何に必要なのか・・・その力で何がしたいのか・・・願いを・・・


――― ―― ―――

「あの子を助けてあげたい・・・力になってあげたい・・・だからその前に・・・形はなんでもいい、今必要なのは―――悪魔を貫く一撃!」


その瞬間、眩い光に包まれその光の中に手を伸ばした時、手の中にカタチが形成されていくのが分かった。光が治まると、目の前に居た悪魔の胸に一つの大きな穴が開いており身体が粉々になって消えていく。そして自分の手には悪魔に大穴を開けたと思われる各所に銀色の装飾が施された白いライフルが握られていた。


「これが私の・・・」


まじまじと形成されたライフルを見ていると、まだ長くは保てないのか光となって消えていった。その後、悪魔と戦ったからなのか初めて力を使ったからなのか、謎の脱力感に襲われその場で座り込んでいた。


まさかここで悪魔と会うなんて・・・ちょっと待って、悪魔が子どもに化けて町に紛れ込んでいたのなら、みんなも危ないかもしれない。早く戻らないと。


そう思って立ち上がり、まだ戦闘の後遺症でふらつきながらも急いで町に向かうことにした。



舞台裏話


アイリス「アタシは来た!アタシは見た!ならば次は勝つだけのこと!」


自由人「急にどうした!てかなんで居る!?」


アイリス「CCCですぜ旦那ァ」


自由人「駄目だ、テンションおかしくなって話が通じない」


アイリス「待ってたんだぐへへへ・・・グハァ!!」


久那衣「処理」


自由人「お、おぅ・・・助かる」


ソフィア「ご迷惑をおかけしました」


自由人「いや君のせいじゃないから・・・ていうか例のはどうしたんだ?」


ソフィア「セーラさんが不在なので今回はお休みです」


自由人「いやさっきまでメインで」


久那衣「不在」


自由人「あ、はい」


ソフィア「えっと・・・次のお話は少し時間が戻りまして町でのお話です」


自由人「メインは誰になるんだ?」


久那衣「未定」


アイリス「そもそもこの辺りは繋ぎの部分で筋書きになくてノリで進んでるからねぇ」


自由人「あ、復活した」


ソフィア「あの、ご気分は」


アイリス「晩鐘の音が聴こえた気がする」


ソフィア「何故だかわかりませんがそれ以上はいけない気がします!」


アイリス「うぃっす」


自由人「それで何の話だっけ」


久那衣「次回のこと」


自由人「そうだったな、つっても、そろそろ締め時だ」


ソフィア「それではみなさん、また次のお話で」

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