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雪の中に少年が倒れています

 冬の女王は夢を見ました。それは冬の女王がまだ幼い頃、まだ冬の女王では無くアイラと呼ばれていた頃の夢でした。

 アイラと母は山の中腹にある小屋でふたり暮らしをしていました。父は物心ついた時にはもういませんでした。


 実は、アイラの母は冬の女王だったのです。

 春から秋の季節、母と娘は自然を楽しんだり、料理を作ったりと、楽しい日々を送っていました。

 冬の間、母は冬の女王として塔に入ります。アイラの面倒は冬の精霊たちが見てくれましたが、母と一緒に暮らせない冬の季節は、幼いアイラにとって寂しくて仕方のない季節でした。

 アイラは冷たい雪の中で遊ぶことが大好きでした。雪と戯れる事によって、冷たい雪に母の温もりを感じていました。


 いつものように雪の中を走りまわり、転げまわり、会えない母の温もりに浸っていた時の事でした。アイラは雪の中に倒れている少年を発見したのです。

 アイラは少年に駆け寄り話しかけました。

「どうしました? 大丈夫ですか?」

 少年に動く気配はありません。死んでしまっているのではないかと思ったアイラは、少年の身体をゆすってみました。それでも少年は動きません。けれども、少年に触れたアイラの指先には、かすかに少年の体温が伝わって来ました。

「まだ生きているわ」

 少年が生きていることは確認出来ましたが、このままでは少年は本当に死んでしまいます。アイラは遠巻きに様子を見ていたトナカイに命じて、少年を家まで運ばせました。


 アイラは少年をベッドに寝かせ、暖炉に火をおこして部屋を暖めました。身体が温まればきっと少年は目覚めるでしょう。そして、少年が目覚めた時の為に、温かいシチューを作り始めました。

 アイラはまだ七歳でしたが、母から幾つかの料理を教わっていました。その中でもシチューは得意料理です。


 まずは玉ネギ・ニンジン・ジャガイモを切ります。ジャガイモはとけてしまわない様に大きめに切るのがコツです。切った野菜を鍋で煮ます。月桂樹の葉っぱを入れ忘れてはいけません。

 お料理の途中ですが、アイラは少年の様子をうかがうことも忘れません。少年はまだ眠っています。


 次はお肉の番です。お肉は鶏肉を使いました。骨付きの鶏肉からはおいしいダシが出ます。骨付きの鶏肉をフライパンで焼きました。表面を焼くと香ばしい香りが部屋中に広がります。焼き目が付いたら野菜を煮ている鍋に入れ、弱火でコトコトと煮ます。その間にブロッコリーも小房に分けて茹でました。

 少年はまだ目覚めません。


 アイラはフライパンにバターと小麦粉を入れ、弱火にかけながらよく混ぜます。この時に焦がさないように注意しなくてはなりません。真っ白いシチューが茶色くなってしまうからです。

 アイラは少年のことを少しだけ忘れてしまいました。


 バターと小麦粉を炒めた所に牛乳を注ぎます。混ぜながら少しずつ牛乳を注ぎました。ホワイトソースの完成です。ここまでは成功です。

 後は野菜とお肉を煮ている鍋に、ホワイトソースを入れて、じっくりコトコトと煮込むだけです。

 アイラは少年の様子とシチューの様子を交互にうかがいながら、少年の目覚めを待ちました。


 暖炉の火と、シチューから立ちのぼる湯気と美味しそうな香りが、少年を生へとうながしたのでしょうか? 寝ている少年のお腹がグーと鳴りました。

 アイラが少年の顔を覗き込むと、少年の目が急に開きました。目覚めた少年は目の前にいるアイラに驚いて飛び起きました。アイラが頭を引っ込めるよりも、少年の起き上がる速度が速かったため、アイラと少年のおでこは激しくぶつかってしまいました。

 ふたりは互いにおでこをさすりながら痛がっています。


 痛みが少しだけおさまった少年は部屋の隅にうずくまっているアイラに声を掛けました。

「ごめん、大丈夫?」

 アイラは少年が突然飛び起きたことに驚き、部屋の隅で少年を見つめながら震えています。

 この段階に来て、アイラは重要な事を思い出しました。宮殿の塔に向かう母に言われた、冬の間の注意事項のひとつを思い出したのです。





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