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獣の見た夢  作者: MAKI


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王子と皇子

 




「アベル! 来たぞ! 船が見えた」


 祭祀殿の入り口からベルティエが声を掛けてきた。

 アベルとオーツェルが表に出ると、西からはテオ皇子の船が、東からはガイアケロンの乗った小舟が近づいてくる。

 ついに秘密会談だった。

 アベルの心臓が鳴る。

 どうか同盟がなってほしい。ガイアケロンの勝利に必ずや有利となるはずだ。


 西方から接近してくる舟が岸に着き、二人の人物が降りてきた。

 一人は長身で肩幅も広く体格のいい男。

 アベルはかつて祝賀会の際に、間近でその面相を拝ませてもらった。

 間違いなくテオ皇子だった。


 アベルの見たところ彼の表情に変わったところは無い。

 いくらか鈍重な印象すら感じさせる顔。

 唇は分厚く、顎が角ばっていて頑丈そうだ。

 茶系の褐色をした瞳は、揺らぎもしていない。不安を感じていないようだ。

 アベルはウェルス皇帝をついに見かけることは無かったのだが、テオはその亡父に容貌が似ているらしいと聞いたことがある。


 例えば兄コンラート皇子が隠しようもなく発していた臆病さなどテオからは感じられず、あれぐらいの落ち着きがなければ数万の軍勢を統べることはできないと言えるだろうか。

 テオ皇子の深い部分を直接知っているわけではない。

 しかし、祖父バース公爵が信じて入れ込むのだから為政者としての素養があると……アベルは思うことにした。


 テオ皇子。毛皮では最も珍重で高価とされる黒貂で作られた長衣を羽織り、その下には軽装的な鎧をつけ、帯剣もしている。

 さすが皇子の剣だけあって黄金の鞘に宝石が(ちりば)められたような品だった。

 ノアルト皇子が所持していた剣よりも、さらに精緻な意匠が鞘には彫り込まれ、柄につく大粒のルビーが澄んで輝く。

 贅の限りを尽くした道具は立場の尊貴さを示す証拠ともなるので、無意味に持ち歩いているわけではない。


 降り立つもう一人の男性はバース公爵だった。こちらは鎧を装着せずに帯剣だけをしていた。

 灰色の服は素材こそ絹だが、貴族としては質素なほど普段着の姿。

 アベルはこれにも意味があるだろうと感づく。

 つまり背後に控える黒子として徹しようという祖父バース公爵の態度の現れ。

 帯剣のみということは、命を捨てる覚悟の意思表示と見た。

 船には人の気配がまだあるが、降りてくるのは二人だけ。

 それというのも互いに疑心を招かないよう、本当に最小限の人数で話し合うためだった。

 アベルは二人に走り寄り、足元に跪いた。


「テオ皇子様。恐悦至極でございます。全て滞りなく手筈は整っております。ご安心ください。また、会談の後にノアルト様も必ずや身柄を戻されます」

「アベル。働いたな」


 テオ皇子は落ち着き払い、それだけ言うと祭祀殿へ歩んでいく。

 祖父バース公爵は視線をアベルに注いでいた。

 秀でた額の下にある、暗い色彩の混じった青い眼は据わっていて、何事も見逃さないという強烈な意志が宿っていた。

 老齢であったが貴族の巨魁に足る胆力が滲み出ている。

 生死が渦巻く戦場を掻い潜ってきたアベルにしても、心臓を掴まれる思いがした。

 実のところテオ皇子に対する忠誠心は元より希薄で今ではすっかり失われ、本当はガイアケロンに与していることを見抜かれているのではないのか……?

 アベルは背筋を冷たくさせる。祖父バースは短く言う。


「アベル。男を上げたな。顔つきまで立派になっておるぞ」

「は、はい」

「護衛を頼む」


 祭祀殿の入り口は一か所。そこをクンケル、ベルティエ、バースが固めてテオ皇子のみが祠へ入る。

 ガイアケロンの乗った舟が岸に辿り着いたのは、その時だった。

 アベルはそちらにも急行して、彼を向かい入れる。


 やはり覇気と風格のある男だと、アベルは改めてガイアケロンの姿を見て感じるのだった。

 磨き抜かれた黒鉄の鎧、鮮やかな藍色のマント。

 武骨なほど実用的な大剣を腰に佩いている。

 逞しく、それでいて柔和な笑みが口元に浮かんでいた。

 意志の強さだけでなく、どこか優しさを感じさせる青灰の瞳……。

 いつも共に居るはずのハーディアは、もしもの時に備えてノアルトを確保した状態で後方の船で待っている。ここにはいない。


「ガイアケロン様。あちらの祠にてテオ皇子様がお待ちになっています」

「行こうか」


 祭祀殿の前でバース以下が貴族の礼のまま、不動の姿勢で待っていた。

 彼らはガイアケロンの顔を見ている。

 きっと、どんな人物なのか探っているのだろう。

 王道国では英雄と名高くあっても、皇帝国からしてみれば悪鬼ガイと呼んでも足りず、呪うように怨敵と言わしめている男。

 これほど近くで顔貌を観察できるのは、二度と無いかもしれないのだ……。


 ことバース公爵のガイアケロンを見る眼つきは尋常ならざるものであって、誰にも無視できないような、少しでも胆力に欠けた者であるなら堪らず竦んでしまう厳しさだった……、しかし、彼は悠々と通り過ぎた。

 無視というほど冷然としたものでもなかった。

 ただ、事も無く横を通過するのが最も正しいからそうした、という風だった。


 アベルは王だと感じる。

 あれが王者の振る舞いだ……。


 祭祀殿の中に入るのは二人だけの約束だった。

 アベルも外で歩みを止める。

 ガイアケロンを信じて待つことにした。

 これら武装せし男どもの中では貧弱なほど痩せて見えるオーツェルが、相対する形で立っていたバース公爵に話しかける。


「初めまして。私は王道国、エイダリューエ家のオーツェルと申します。バース・ハイワンド公爵様で在らせられますか」

「いかにも」

「今度の計画を仕立てあげたのは公爵様と考えますが、間違いではありませんね」

「わしはテオ様に従うのみ。臣下とはそうしたものである」

「ガイアケロン様は無駄な争いを好まぬ御方。貴方がたは正しい人に目を付けました。交渉はまず相手を選ぶことから始まります。イエルリング様では多くを失い、いずれ必ずや裏を掻かれるというもの」


 バース公爵が物凄い迫力でオーツェルを睨む。

 壮絶な鬼気。

 お前ごとき小僧が出てくる幕ではないと、心の大喝が聞こえてきそうだった。

 アベルは祖父バースが、本当に腰の剣を抜き打ちにする気配を感じる。

 それぐらいの顔をしている。

 オーツェルにとって腰のダガ―など飾りに等しく、斬撃に反応などできはしない。

 あの痩せた体が上と下で真っ二つ……。


 自分の状況を分かっているのかそうでないのかオーツェルは平然と会話を続けた。

 いや、分かっていて、あえてやっているとアベルは考える。

 祖父バースのあの視線を理解できない者などいるはずがない。


 それにしてもオーツェルは探りを入れる狙いがあって、わざと気安く話しかけているのだろうけれども……見ている方は肝が冷える。

 意外と胆力があるなと思うが、彼もまたガイアケロンのために命懸けになれる男ということだった。

 程よいところで止めてやろうとアベルは見守る。




 ~~~~~




 ガイアケロンは皇帝国の皇子テオと相対する。

 背の高さは、ほぼ同等。

 動物で例えれば猪か熊、そんな印象をテオに持った。


 王子と皇子は当然、互いに頭を下げることはしない。

 頭を垂れるのは御機嫌うかがい、伺候の態度だからだ。

 無礼にならない程度に目鼻を見ていたが、テオの方から話しかけてきた。


「ガイアケロン殿は意外と優しそうな御方であるなぁ。てっきり鉄のような男かと考えていた」

「テオ殿は豪胆の御方と感じ入りました」

「おのれ自ら思うが、ただ鈍いだけのこと。まして人はさらにそう感じるそうだ」

「かつて一度だけ軍団をぶつけ合った日がありました」

「うむ。王子殿とはポロフ原野で刃を交えた。凄まじい攻撃、あの判断の速さ、素早い退き方。さすがに戦慣れしていると感嘆した」

「テオ殿こそ、我が渡河した時を見計らいこれを討とうと待ち構えていた。危ないところだった」

「いやいや。あそこで王子殿を下手に包囲でもすれば恐ろしい決死の反撃を食らっていた。それこそ命取りである」

「うん! 確かに、そうなっていたことでしょう」


 ガイアケロンは遠慮しないで、磊落な物言いをしてみる。

 そこでテオが初めて笑顔を見せた。

 分厚い唇、両方の口角とも動くと独特の迫力があった。


「ガイアケロン殿ならそう答えると思っていた。しかしである。もし、本当に包囲されたら……例えば広い草原などで。やはり後方を突破して逃げますか」

「いいえ。それはしません。戦列が一斉に反転して後方へ逃れるとは、一見理屈に適っていますが実際には多くの危険を孕んでいます。地形の有利や下準備、つまりあらかじめ逃げる用意をしていなければ出来ることではありません。最悪なのは動揺して、各部隊が勝手に突破を試みること。たちまち軍団は崩壊し、幸運にも包囲を突破した部隊が何の秩序もなく逃げ、最終的には全軍の半数以上が死ぬか捕虜となりましょう」

「もっと考えを聞かせて貰いたい」

「私は将兵をよく鍛えていますが、逃げ足の為に鍛えてはいません。攻撃して相手を破壊するために鍛えています。当然ですが防御と逃走とは別です」

「あくまで攻撃によって状況は打開するもの、という意味ですな。仮に包囲されたら、どこを攻撃しますか」

「まず二か所。主将がいる場所。それから敵の包囲を無効にしてしまうような地点、あるいは部隊へ。主将への攻撃は、なにより旗を倒すこと。将旗が失せれば相手は動揺します」

「包囲下で将兵が命令を冷静に聞きますか」

「それこそ日頃の鍛え方の課題ですが、前に向かって進めと命令された兵たちはむしろ闘志を出すでしょう。逃れる指令を実行する方が難しいと考えます」


 ガイアケロンは自分の兵士たち、百人頭、千人将らに自信がある。

 徹底的に鍛え、育ててきた。

 仮に包囲されたときは、全将兵が敵の本陣に向かって死ぬまで突撃する。

 どれほどの損害が出るか分からないが、そうなれば打ち破れない相手などいないと確信があった。


 テオ皇子は黙り、じっと何かを考えている。

 ガイアケロンは待つ。

 かなり長い間……、互いに口を開かない。

 静寂。

 いにしえの祭祀殿に似合う、深重な静けさ……。

 やがてテオ皇子が、ゆっくりと語りだす。


「私が思うに、状況はあの時とそれほど変わっていない。たしかに戦争は皇帝国にとって有利とは言えない。それは認めるものだ。しかしである。王道国が決定的に勝つことも、また無いと言える。これは自明の理。無理に勝利を追求したところで双方が自滅する」

「全く同感」

「失礼ながらガイアケロン殿の父君。イズファヤート王は御狂いなされている」

「父が狂っている、と申されるか」


 ガイアケロンはあえて柔和を保ったが、本質を突いてきたと悟った。


「さよう。いたずらに王子や将兵を敵へと攻め込ませるばかり。何が目的なのか」

「無論、皇帝国の討滅」

「できぬ! 国土を突き進み、果ては帝都にまで辿り着いたとしよう。しかし、攻略できるか? それが無理であるのは、王であれば弁えるべきこと。それでも進撃を命じ続けるとは王たるものの命令とは言えない。なぜ、私たちが派遣した講和の使者を殺して、体を引き千切り、塩漬けにして送ってきた? 狂っているとしか考えられない」


 もっともな疑問だとガイアケロンは思う。

 使者など、気に入らなければ帰せばよいだけのこと。

 あるいは捕縛でも足りる。

 しかし、残虐に殺さないと気が済まない性質なのだ。

 理由などというのは、それに尽きるとガイアケロンは考える。

 もし、もう少し深い意味があるとするなら戦争がより激しくなるため火に油を注いでみた、といったところか。


「父を侮辱するか」


 ガイアケロンは表情を消して言う。

 父への憎しみは誰にも悟られてはならない。

 回り回ってあの怪物の耳に入れば、殺す前に己が殺されるだろう。


「父王への侮辱は我への侮辱である」

「……。これは失礼をした。しかし、私はイズファヤート王に期待できることがもう何もない。だからガイアケロン殿を恃むことにした。政治とは実現不可能な理想ではなく可能な次善を選ぶべきこと。手を付けたなら断固として進み、なお無理と知らば豹変するもの」

「正しいかと」

「貴国の王族では、率直に言ってガイアケロン殿の力が傑出している。私はそう信じている」

「私は第三王子にすぎず、戦力では劣りますが。後ろ盾も多くはない」

「私は信義などというものは力が無ければ守られないと教えられた。その通りだと確信する。ここは貴方の力と立場を信ずる」

「それで我にコンラート皇子を討たせることにしたのですか」

「その代り、我が軍勢はイエルリング王子の軍団を付け狙いましょうぞ」

「……」

「もはや腹を割って話すが、イエルリング王子のもとで貴方は飼い殺しになるおつもりかな。死ぬまで戦場を這いずりまわるのが楽しい程度の男なら、秘密同盟は無かったことにしましょう。私が恃む相手を間違えた」

「我としても同盟は結びたいのが本心だ」

「イエルリング王子が負ければ次期の王はガイアケロン殿と決まり。なれば私と手を取り、対等な立場で二国が共存共栄する」

「画は決まっていると感嘆するのみ。だが、そのような新しい秩序を打ち立てるのは至難です」

「さよう。だが、負けるわけにはいかない。それゆえ、私は民の街や家々を燃やして回っている」

「聞いています。ディド・ズマの傭兵たちに奪われるより先に壊してしまえと言う非情な作戦」

「私は生来、鈍いらしくてなぁ。民から愛されなくとも苦痛ではない。憎まれようとて民を飢え死にさせるよりはましだと思う。逆に慕われてパン一つ与えることのできない為政者など有害である。逃がした難民には施しをしているので飢え死にをした者はいない。その結果だけで充分である」

「なるほど。王は民衆と共に涙を流す必要はないと」

「そうだ。敵は滅ぼすものだ。民衆は殺さぬものだ。後は……そう、魂の苦しみを取り除くのは神の分野であるな」


 ガイアケロンは頷いた。

 この答えは気に入った。

 政治に必要なのは、力だ。

 これがなければ民衆が死ぬ。それも大量に。

 ガイアケロンは聞いた。


「細かい条件はどうしますか。いちいち仔細に渡って我らが決めることでしょうか」

「それは信頼する家臣に任せるべきこと。寸土を巡っての領地争い、難しい物事の処理ができる臣すらいないようでは……。私たちは、さらに大きな画を描くべき」

「いかにも。我とて人を使役する度量がある男のつもりだ。臣の献策は生かすのみ。我は承認して、力を貸せばよい」

「私たちは思考と立場を同じゅうするもの。ここに同盟成立ですな」


 テオ皇子は出来た男だと、ガイアケロンは考える。

 力と立場を見込んだからガイアケロンを選んだ、という言葉が気に入った。

 権力者にとって信義など無価値であって、実行力が無ければ約束など守られることのない夢想にすぎない。

 つまりは強権で嫌と言う相手を捻じ伏せて従わせることから、権力者は始まる。

 それが出来ないのは権力者とは言えない。


 ガイアケロンの脳裏に、父親の顔が浮かぶ。

 逆らう者を引き裂いて死体の山を築くことしか知らない、貪欲惨忍なバケモノ。

 その暴虐を誰も止めない。止められない。

 力が無いからだ。

 いくら正義を訴えようとも、あの男が聞くものか。

 倫理も愛も、暴力の前には無力。

 だから、必ず殺してやる……。


 妹ハーディアの母も、そして己の母親もイズファヤート王に強姦されたのであったという。

 おぞましい母たちの告白。

 愛情などなく、ただ女の意思を捻じ伏せるだけの陰惨な交わり。

 そうして生まれた子供は戦場で、死ぬまで擂り潰す……。

 あの父親(バケモノ)を殺してやる!

 犯して生まれた子供に、今度は自分が引き裂かれるがいい!


 ガイアケロンはテオ皇子に微笑んだ。

 この上もなく優しく、穏やかだった。


 父親を殺すためには味方がいる。

 テオ皇子とは立場が似ていた。

 彼は彼で権力闘争の相手、兄コンラートを倒さねば皇位に就けない。

 お互い、敗北しないために手を結ぼう……というわけだ。

 もっとも間抜けの手を取りなどしないが。

 そのあたりテオはなかなか、良いものを感じる。

 こと鈍感だと自分で認める辺りがよい。

 繊細な人間は詩人に向いている。

 決して王などなってはならない。

 むしろ死体を踏みつぶして歩けるような者こそ……王は向いている。

 死は後で悼めばいいのだから。


「では、握手でもしますか。テオ殿」

「おう。ガイアケロン殿」

「我ら、共に」

「次に会う時は、王と皇帝として」


 二人は力強くお互いの手を握った。




 ガイアケロンとテオは祭祀殿を出る。

 双方の臣下が居並んでいた。

 テオが臓腑に響くほどの大きな声で宣言する。


「同盟なった。ガイアケロン殿と私は、戦友となる」

「我ら立場、考えを同じくする者と確かめられた。明日の世界を二人で造りあげる」


 アベルの隣に立っていた祖父バース公爵が泥まじりの地面に跪いた。

 その場にいた全員、それにならう。

 アベルもまた、とりあえず地に片膝を着けた。

 忠誠心ではありえない。

 自分の願望を共に抱かせたガイアケロンの跳躍。

 怨念が翼を得た。

 ベルティエが高々と旗を振って、同盟成立を祝うかのようであった。


 -ガイアケロン、地獄に飛び込むつもりだろう……。

  一緒についていってやるぜ。




 ~~~~




 ノアルトとハーディアの乗った小舟が岸に辿り着いた。

 まず、ノアルトが上陸して、それからハーディアが降り立つ。

 ノアルトがせっかちな性格そのまま走り寄ってきた。


「兄上! 兄上!」

「ノアルト。秘密同盟は成った。ガイアケロン殿は信用に足る男」

「カチェがいたのです! バースにいくら聞いても教えてくれなかったというのに」

「……。まぁ、その話しは後で良かろう。ハーディア殿とは何ぞ語り合ったか」

「はい! まさに噂に違わぬ驚くべき美姫! 素晴らしい教養の持ち主でした」

「それは楽しみ。では、私も話しをさせてもらおうか」


 ハーディアがゆっくりと近づいて来た。

 艶消し鋼の鎧、佩楯、草摺りなども身につけた完全武装。凛々しい姿だ。

 赤銅と黄金を混ぜて熔かし込んだような髪が寒風に晒されて、なお輝く。

 琥珀色の瞳がテオ皇子を見詰めていた。

 鈍感なはずの皇子の顔は、それでも熊が蜂の巣を見つけたほどには変化した。


「おお……。なるほど」

「テオ・ヘリオ・アヴェスタ皇帝国皇子。そして、未来の皇帝陛下。私がハーディア王女でございます」

「名乗り遅れた。私がテオだ。弟が貴方を褒めちぎっていたが、そのわけを理解した」

「まぁ。気に入って頂けたのかしら。嬉しいことです」


 ハーディアは艶やかな笑みを浮かべた。

 男なら誰しも釘付けになるような魅力。

 ハーディアにとっては計算された仕草にすぎなかった。

 自分の行動が男性にどうした効果を及ぼすのか、処女の身ではあったが数百を超す累々とした実例で身につけていた。

 テオを裏切らせるわけにはいかない。むしろ、損得を無視させて兄ガイアケロンに奉仕させるように仕向けたかった。


「テオ様は何と男らしい殿御でしょうか。このハーディア、むくつけき醜男どもなど見飽きているうえ、なおそうした匹夫を成敗に及ぶこと数え切れません。それゆえテオ様が別格の男性であることを見抜かせていただきました。まさに皇帝に相応しい男振り。ぜひとも懇意になりたく申し上げます」

「……成敗とは、手討ちのことだろうか」

「はい。戦場の倣いにて。これまで討ち取った敵の首級など、いちいち数えておりませんが」

「まったく凄い姫だ。敵としては心胆震えるが、味方とあれば頼もしいことこの上ない」

「このハーディア。ただの味方以上であることをお誓い申し上げます」

「う~む……」


 ハーディアは祈るように掌を組み、うっとりとした涙すら含んだような瞳でテオを見つけ続ける。

 アベルは口を半開きにして遣り取りを見守ることしか出来なかった。

 あからさまな好意の連続。

 それでも嘘らしく見えないのはハーディアの愛らしい顔と仕草によるものか。

 なぜか本当のことを言っているようにしか感じないのだった。

 そんな馬鹿なと思いつつも……。


「このハーディア。テオ様が皇帝となられる日を心待ちにするものです」

「いずれそうなるであろう」

「テオ様。どうか皇帝となった暁には私へお命じになってください。どんなことでもいたします。ええ、口だけの約束ではございません。その代わり、兄ガイアケロンの盟友として力を振る舞っていただきますが、よろしゅうお頼み申し上げます」

「いやはや、これは私が失敗いたさば首が危ういな」


 テオがふざけて自分の首を手刀で叩いた。

 動じずハーディアが華やかに微笑めば、テオもまた笑ってみせた。

 二人は和やかに笑っていたが、それに追随しているのはバース公爵ぐらいのもので他の者たちはあえて触れずに見ているのみだ。

 わざわざ火中に手を突っ込む必要はない……。


「どんなことでもするか……。ははは。私は人から鈍いと言われるが、これは怖い誘いだと気が付いたぞ」

「それは仕方のなきことでございます。少しぐらい怖い思いをして手に入れるのでなければ価値を感じません」

「まあな。じゃじゃ馬こそ乗りこなすと楽しいものだ。ただあまりに気性激しく触らせもしない馬に価値は無い」

「きっと馬も触り方が上手ければ従いますわよ」

「いつ触れさせてくれるのであるかな」

「乗り手として相応しいと思わせれば。そうすれば少しばかり力ずくでも許すかと」


 テオの眼つきに変化が現れる。 


「私はまだ二十九歳だからな。さすがに夢を見てしまうぞ……。おっと、私の忠臣バースが恐ろしい顔をしだしている。寝ぼけているわけにはいかないようだ。楽しい会話であった」


 アベルは祖父バース公爵が先ほどまで笑っていたのに、今ではそれなりの顔つきでテオを睨み付けていたのに気が付いた。

 下手をすると何かの一線を超えかねないと察知したらしい。

 バースほどともなれば主に対して、あんな表情が出来るのだと感心する。

 ともかくハーディアによる籠絡らしき行動はそれで終了した。

 遊び心を含んだ誘いだったのか、あるいは本気の攻略だったのかアベルにはよく分からなかったが……。


 王族皇族による挨拶がすみ、残すは家臣たちによる実務作業だった。

 祖父バースとオーツェルが中心になって何かの議論を続け、しきりに書類の交換をしていた。

 ときおりノアルトやハーディアが意見を述べる。微調整といった感じだ。

 

 幕僚たちというのはこうしたものだろうと眺めていれば、時間はたちまち過ぎていく。

 ハーディアはある意味怪物のようなバースを相手として、優雅に一歩も退かず論争をしていた。

 礼儀は守っていたが……、それは理論と熱意による戦いだった。


 アベルの立場では口を挟むことなど出来ないので、周囲の警戒に移ることにした。

 景色は湖沼の畔で、祭祀殿から離れると人気など全くない。

 テオ皇子が乗ってきた船に近づくと、一人の男が降りてくる。

 見覚えがあった。

 アベルは相手へ走り寄った。


 それはイースの祖父。ダンテ・アークだった。

 長く伸ばした髪は染めているのか風雨に晒されているためか、褐色をしている。

 瞳の色も紅褐色なので魔人氏族の特徴は薄い。

 しかし、肌の色は冷たいほど白かった。

 年齢は人間族の四十代ほどに見えるのだが、切れるような鋭さを含んだ男だった。

 アベルにとって師と呼んでも、そう間違いではなかった。

 ただの一度も技など習っていないが、イースとヨルグの師なのだから。


「アベル。無事でなにより」

「ダンテ様……貴方のような凄腕の護衛がいるのは考えてみれば当然ですね」

「話し合いは順調なのか」

「もはや終盤かと」

「……イースには再会できたのか」

「いいえ。どこに行ったのかも分からないままです。それに任務が激しすぎてそっちのほうは手を付けられませんでした」

「私の元には任務上、様々な報せが来る。実はイースらしき者の噂を耳にした」

「えっ……! どんな!」

「あくまでも噂程度だ。亜人界のウルグスク地方で、賊や光神教団を手当たり次第に襲っている女がいるらしいと。その者、独行者であるという。姿は黒髪のものとだけ」


 アベルの心臓が高鳴る。

 この世界、イースのような漆黒の髪は珍しい。

 人間族にも茶褐色や黒褐色の者はいくらでもいるが……純粋な黒はイース以外に見たことは無い。

 種族的には魔人氏族の血族系譜にしか現れないという。

 可能性があるようにしか思えない。

 黒い髪の持ち主などという……、まるで信憑性のない話しに期待が止まらなかった。


「ウルグスク地方。聞いたことぐらいしかない」

「中央平原の北東にある。王道国、亜人界、魔獣界にも近い地域だ。地味豊かで鉱山もあるゆえに古代から栄えている。しかし、諸勢力が入り乱れて争いの絶えたことが無い」

「手当たり次第に襲っている……? いかにも、やりそうな……」

「イースが何を想っているのか、それは私にもお前にも本当のところは分からない。しかし、ヨルグの言葉ではないが、何事も成せない半端者として再会したところでイースは……お前を認めないかもしれないな」


 アベルは歯を食い縛った。

 ダンテから指摘されるまでもなく、最も理解している。


「どうするのかは、お前に任せる。真偽不明の小さな噂だが知っておいて教えないわけにはいかなかった。私も騎士ゆえ、いつ死ぬか分からない」

「ダンテ様。ありがとうございます。黙っていられるよりかは良かった」

「あれから腕は上がったのか」

「分かりません。自覚は無いです」

「慣れて、上手くなったと思った瞬間、落ちているものだ。我ら剣で道を開くもの。所詮どこまでも血飛沫と骨肉でおのれを磨き上げる運命だ。お前が何をしようと止めはしない」


 ダンテは悲しみも憎しみも感じさせず、淡々とそう口にした。

 そうした姿はイースの言葉や態度を思い起こさせるのに充分だった。

 こんな者の側でヨルグは死ぬまで剣に憑りつかれ、師や娘を超えられないことへの怨念を滾らせていた。


 もしイースと別れていなければ……、アベルは想像する。

 狭い世界、たった二人での連携と共感。

 憎しみとは真逆の方向であったとしても、分解不可能なほど、どうしようもなく絡みついたまま袋小路に陥っていたのかもしれない。

 それは純粋であり、倒錯的なほどに強く、それがゆえに異常に脆いというような。

 行き詰まりを直感的に悟ったからこそイースは断ち切った。

 真実は分からない。

 俺はそんなに賢くないと、アベルは無骨の柄を握りしめた。


「お前はヨルグのたった一人の弟子なのだ。行ける所まで行くと良い」


 ダンテはそれきり何も言葉を発しなかった。

 船に戻っていく。

 そのまま別れた。

 

 太陽が傾き、双方の幕僚たちによる相談が終わろうとしていた。

 そんな中でノアルト皇子が兄テオに向かい、勢いのある口調で言う。


「兄上。カチェは帰還させてください。他にふさわしい活躍の場があります」

「ふむ……。バース。どう思う」

「念のため言っておきますが、何があろうともノアルト様の近習にはできませんぞ。会わせることも無いでしょう」

「バース。分かっている! そんなことぐらい……。せめて安全なところにいてほしいのだ」


 カチェは堪らず慌てて口にする。

 まったく立場を弁えていないが……。


「このカチェ。アベルと共に皇帝国のため働くのでございます。ここまで来て帰還などとやめてください!」

「何故だ! カチェ! どうして私の気持ちが汲めぬ!」


 ノアルトとカチェが主従でありながら睨み合いになってしまった。

 カチェの品のいい唇が少々捲れ上がって、威嚇する山猫のたぐいを連想させた。

 アベルはこの表情を見ただけで血の気が引いた。何を仕出かすか分からない……。


 カチェにしてみれば途轍もないお節介であり、横槍であり、予想外の嫌がらせでもあり……、早く振り切らなければと焦る。

 どう説得しようか考えていると、バースが渋々といった様子で語る。


「アベルの密使もこれにて終いだ。今後、アベルはテオ様に仕えて、さらには軍務を与えていただく。こたびの功績がある。働き次第でアベルには爵位をくださるだろう。カチェ。お前はもともと出奔同然で飛び出しおったな。すぐにお前の母ティファニアから事情を聞きだしたので大事にはしなかったが。冒険はこれまでにいたすか」


 予想外の成り行きにカチェは考える。

 アベルが爵位……。最低でも子爵、いや、伯爵でもおかしくないはず。

 しかも、テオ皇子の最側近という立場まで手に入れる。

 テオ皇子が後継者争いに勝利すれば……、輝かしい未来がアベルに訪れるに決まっていた。

 軍人としても政治家としても皇帝国だけでなく、いずれ世界に羽ばたく。

 自分はその傍にいられる……。


 カチェは、そう考えれば悪くないことなのかと思いつく。何よりアベルの出世だ。

 祖父バースと視線を合わせれば、普段は冷酷なほどの眼つきであるはずなのに、今は親心を感じさせる温かさ。

 カチェが頷きかけた時、しかし、ガイアケロンが黙っていなかった。


「それは困るぞ。聞き捨てならぬ。バース公爵殿。アベルとカチェは信頼のおける者だ。連絡員として今後とも我の元にいてもらわなくてはならない」

「あいすみませぬが王子殿、アベルの代わりにベルティエ伯爵家三男のドット・ベルティエを当てるつもりでおりました。出来る男でございます。どうかご了承いただきたく」

「断る。アベル以外には信用ならん。大事ゆえ譲れぬ」

「アベルに負けず劣らず良い男ですぞ。なにとぞ機会をお与えくだされ」

「くどい! 断るといったはずだ。アベルとカチェを残せ」


 ガイアケロンのあまりに明け透けできっぱりとした物言いに、さすがのバースも一端黙った。そうせざるを得なかった。

 薄氷踏むがごとく、やっとのことで成立した秘密同盟。

 それがこんなことで均衡を崩しかけていた。


 しかし、同時に疑念も湧く。

 ガイアケロンの態度は例外的に強かった。

 どうしてそこまでアベルに拘るのか?

 そこまで信用を勝ち取ったのかと、半ば呆れた。

 アベルめ……やりすぎたな。


「では、テオ様に決定していただきましょう」

「ガイアケロン殿が望むのならアベルを引き続き使者とする。カチェもだ。これまで上手くやったのだ。これからも頼む」

「あ、兄上……」

「ノアルト……。ここはガイアケロン殿の希望に添うだけだ」

「そ、それは」


 食い下がるノアルトにガイアケロンは問う。


「どうしてそこまでアベルとカチェを外したいのですかな。それともベルティエ殿を使者にしたい特別な理由がおありか」


 ハーディアも視線を投げつけてくる。

 ノアルトは冷汗を掻いた。これ以上、動けば疑われると感じた。

 もともと不信と探り合いが混ざった中で始まった会談。

 兄とバースが心血注いで成立させた試みをぶち壊しにしたら……。


 ノアルトは固く目を閉じて、沈黙した。

 カチェの顔を見られなかった。

 愛とは命懸けになることだ……などと勇ましいことを口にしておきながら、またしても逃がしてしまう。遠くに行ってしまう。もう二度と会えないかもしれないのに……。

 皇子という立場など捨ててカチェの騎士になりたかった……。

 剣一振りで愛する女を護る男……。

 それは素晴らしい夢だ。

 しかし、泡のように消えた。




 会合は終わった。

 お互い、すぐに拠点へ戻らなくてはならない。

 慌ただしく準備が始まるなか、アベルは祖父バースに語りかける。


「バース様。このアベル、働いてまいります。どうか父ウォルターと母アイラをよろしくお願いします」

「まるで今生の別れ、という挨拶だな」

「覚悟はしています」

「お前はハイワンドの人間であることを忘れるな。ただひたすら我らがテオ様のために粉骨砕身あるのみ。わしもお前もウォルターも屍になるまで戦うだけだ」

「あの、父上だけは……。まだ幼いツァラがいるのをバース様だって知っているはず」

「ウォルターがどうした。それに幼子だと? それが戦わぬ理由になるか。選ばれし貴族が生ぬるいことを口にするな」


 バース公爵は、祖父というより丸っきり貴族の顔をしていた。

 傲慢で人に命令をし慣れている種族……。

 バースはアベルの耳元に口を近づけて小声で囁いた。


「わしはお前をここで帰還させて出世の道を与えてやるつもりだった。それを台無しにしおって。ガイアケロンに何をした? どうやってあそこまで心を開かせた」

「そ、それは……友情」

「笑わせるな。ハーディアがいる。敵国の使者に心許すほど孤独な男ではあるまい」

「……」


 バースの追及は苛烈だった。

 アベルの肩は物凄い力でがっちりと抑えられて身動きもとれない。


「男惚れが極まって契りでも結んだか」

「そ、そういうのじゃないです。絶対」

「ふん。見ればわかる。そういう関係になれば女々しくなるものだ」


 アベルはバース相手にどこまで嘘を吐き通せるか不安になってきた。

 アスの魔術で彼の心を知ってしまったこと。

 そして、父親殺しの願望を持つ者への、無償の絆などと……。

 告白したところで正気を疑われるだけかもしれないが。


「やるのだったら徹底的にやり通してみせろ。中途半端にやれば疑われるだけだ。アベルよ。犬死にするな」

「え? ……バース様」


 バースはアベルを解放すると、舟に歩み去っていく。

 アベルは息を吐き固唾を飲んだ。

 百戦錬磨の老獪な大貴族。人を呑み込み、支配することになんと慣れているものか。

 離れかけたアベルの心を察して釘を刺してきた……。

 しかし、気づく。離れていく祖父バース公爵の背中は、どこか寂しげな老人のそれだった。


 船が岸を離れる。

 辺土の朽ちた祭祀殿、もはや長居は無用の場所。ガイアケロンは最大の速度で離脱することを命じた。

 薄暮の空はやけに美しく、紅を流したように染まっている。

 今日、秘密同盟がなった。


 誰に言われなくても徹底的にやってやるとアベルは考える。

 血飛沫と骨肉で道は開ける。

 王道国イズファヤート王を殺す……、破滅の香りが漂ってくるようだ。

 イースだけは心残りだが、地獄を突き抜けた先を見に行こう……。


 カチェはハーディアの側で話し相手になっている。

 根本的に教養が深く、かつ諸芸全般に通じている二人は気が合うようだった。

 アベルはガイアケロンの後ろに座っている。

 大きく逞しい背中が見えていた。その男が振り返り、言った。


「アベル。できるだけ近いうちに機会を作って王道国へ行く。お前にも来てもらう」

「どこまでも共に行きます」


 何か言い知れない深みを感じさせてくれるアベルの返事。

 ガイアケロンは自然と笑みが零れた。

 世の中に誠意とか忠誠という言葉はあるが……、どうもぴったり当てはまらない。

 それは主従ではないからだろうか。

 アベルは出会ったことのない例外の男だ。

 今日は演技ばかりだったが、最後に本音が出せれば寛げるというものだった。

 やはりアベルは不思議だ。他人とは思えない。まるで幼馴染のような気がして……。


「僕は王道国に行くの初めてです」

「貴族や神官。連なる門閥の争いは苛烈だ。奪い合い、騙し合い。虚飾、虚構。権威だとか血筋などという余計なものが付いている分だけ、なお性質が悪い」


 ガイアケロンの雄々しい顔に憂いの影があった。

 アベルは湖沼に沈む夕日を眺めつつ思う。

 これで皇帝国、魔獣界、亜人界、王道国と世界を一巡りすることになった。

 一所に留まらず、どこまでも旅していく運命……。









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