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第1回母音会議

  1

天界

それは神々がいる世界である。羽根を持つ神やアタマに角が生えている神もいる。

その天界のある建物の衛士が扉を守っている、扉が開かれた一室には円卓の机が置いてあり、椅子が等間隔に6脚並べられていた。机にはそれぞれ名札(プレート)と資料が置かれ、それぞれに座るべき場所に神々が椅子に座っており、隣同士で談笑していた。

 円卓には序列はないと言われているが1つだけ確定している場所がある。それは円卓がある部屋の扉から一番奥、つまり上座だけは決まっているのだ。

 上座の場所には『ウォルド』と書かれている名札(プレート)があり、そこから時計回りに

『アリエル』

『インフォス』

『ウザード』

『エリシス』

『オルファンシス』

名札(プレート)が置かれていた。

  ウォルドがチラリと扉の方を見る。衛士は無言で頷き、扉を閉める。

 閉められた扉には『母音会議(マザル‐コンファ)につき許可されたもの以外入室禁止』と書かれていた。


 母音会議(マザル‐コンファ)は会議参加者の6柱の神がそれぞれアイウエオの母音から始まる神で形成されているから、そう名付けられていた。そしてウォルドを除く5柱の神はそれぞれの異世界を管理している。


「さて…会議を始めましょうか」

 ウォルドは特に大きな声を発する事なく会議の開始を宣言すると、談笑の声がピタリと止んで会議参加者(5柱の神)全員がウォルドを見る。ウォルドは注目を集めた事を確認して言葉を繋げる。

「まずは…皆さんそれぞれが各々の世界を管理していて忙しい中、こうして1人も欠ける事なく集まってくれた事に感謝を、そして最高神様を除く序列のない中でこのように上座に座り、また出向かせる事をしてしまい謝罪したい。」

と、頭を下げる。

「…別にいいわ。頭を上げなさいウォルド。私もそうだけど皆の世界もかなり発達してるから管理も楽なのよ。…それより本題に入りましょう?」

 代表してウォルドの左隣のアリエルが答える。女神だ。

「…ありがとう。では本題だけど、この度、私ウォルドが最高神様より新たな世界の創造と管理を命ぜられた。…そして皆さんの知恵の拝借と協力をお願いしたい。」

 ウォルドは頭を上げ、本題を口にする。

「…最高神様に命ぜられたのはウォルド、お前だろ?…お前の好きなようにしろよ。」

 そう言って頭の後ろで手を組み椅子をギシギシさせて突き放すのはウォルドの真正面に座っているウザード。男神だ。

「いやぁ…最高神様が仰るには『なるだけ面白い世界をよろしく~♪あ!なるべく早くね♪』て、事なんだよ。最高神様って軽くね?…そして無茶ブリじゃね?…だから俺だけの考えだとありきたりな世界になっちゃいそうだからさぁ…」

 ウォルドは口調をいつもの口調に戻しながら肘をついて毒づいてため息を吐く。

「面白い世界かぁ…漠然としてて難しいわよね…で、この資料は何?」

 そう言って片手に資料を持っているのはウザードの左隣のエリシス。女神だ。

 資料の表紙には目がクリッとして異様に大きく、豊満な胸をしている女の子や片手に剣を反対には手が燃えてる感じでドヤ顔を決めている男の子が描かれている。

「あ!そうそう!ちょっとそれ見てよ!…これは地球の日本て国から取り寄せた『ラノベ』って本でさぁ。剣とか魔法とか魔物とか沢山出ててさ、すっげぇ混沌(カオス)なんだよ。笑えるだろ?」

 ウォルドはペラペラと資料(ラノベ)を捲りながら言う。

「確かに混沌(カオス)じゃが面白い設定じゃの。ウォルドよ。お主はこんな世界を作ればええんじゃないか?」

 いけんを述べたのはウォルドの右隣のオルファンシス。男神だ。

「でしょ!だけどこの世界を作り上げるには俺だけじゃあ時間掛かりすぎ…」

「ダメだダメだ!…この資料みたいな世界だとオレの眷属殺されてるだろ!…ダメだ!」

 バン!と机を叩いて立ち上がりウォルドの言葉を喰い気味で反対するのはアリエルの左隣のインフォス。魔神だ。天界は正邪関係なく神が居て良い世界だ。

「いや、インフォス…魔族が主人公で頑張りすぎてる資料(ラノベ)もあるよ。…今回は持ってきてないけどさ…」

 ウォルドはインフォスをフォローする。

「だがウォルドが管理する世界だろ?…お前魔神じゃないから魔族を(しいた)げるんじゃないのか?」

 インフォスは椅子に座り直し、そう抗議する。

「ん~…じゃあさ!いっそのこと俺ら6柱の神で共同管理にしない?基本の星は俺が作るからさぁ、そしてその星の中に大陸を6個作って、各々がそれぞれ大陸を1つ管理するとかどう?」

 妙案を閃いたみたいにウォルドが言う。

「それだと貴方が管理してる世界とは言えないんじゃないかしら?」

 アリエルが正論を言う(ツッこむ)

 ウォルドは腕を組んで少し唸った後、

「どっちかと言うと最高神様は『俺が管理する世界』よりも『面白い世界が見たい』事を重要視してる気がするんだよね。…だから面白さをアピールすればイケる気がするんだよね。…ちょっと聞いてみるよ。」

 そう言って目を瞑ろうとするが、

『聞いてたよ~♪良いよ~♪そっちの方が面白そうだしね~♪…でもそれじゃあ大陸それぞれが1つの世界を形成しちゃってすぐにつまんなくなっちゃいそうだからさぁ…インフォス君。キミが管理する大陸は超強力にして良いよ。そんでキミの眷属はキミが管理する大陸だけじゃなくて全大陸に配置しちゃって良いよ~♪インフォス君以外の大陸は初期ユニットだけは強くして良いよ。

 それでも元々のスペックは魔族の方が高いんだからこうすればウォルド君達の大陸は手を結ばざるを得ないしね。それに…これは全員に言うけど基本的な事以外は直接関与しちゃダメだよ~♪…これでより混沌(カオス)になって面白そうでしょ♪』

 最高神の声が会議参加者(6柱の神)全員の頭に響く。

「「はっ!最高神様の御心のままに!」」

 業務命令(神のお告げ)で全員が椅子から立ち上がり、左胸に右手を添えて(こうべ)を垂れる。


 全員が椅子を座り直し、ウォルドは

「なっ?…最高神様は俺より『面白い世界』を選んだだろ?結構適当だろ?…まあいいや。最高神様の命令通り、全員協力でよろしく!今日の内に基礎の世界作るから、今日の会議はここまで。また明日同じ時間にこの場所で」

 ウォルドの言葉で会議は散会となり、他の神々は会議室から出ていった。


 ウォルドが会議資料を片付けてると

『忘れてた!…ウォルド君。キミはボクの事をディスったから減給ね♪』


 ウォルドは顔を真っ青になりながらも

「さ、さ、最高神様の御心のままに!」

 ドモりながらも何とか言えた。

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