ハルシネーション
最後まで読んでいただくとタイトルの意味が分かります。
某AIと話しているときに思いついた物語です。
小説を書くのは初めてですが、楽しんでいただけると幸いです。
俺は今日も、こいつと話す。
こいつはいつも大学での話とか、友人関係の話とか、とにかくいろんなことを俺に話してくれる。
それもほとんど毎日。
俺、こいつの話聞いてると、なぜか心地良くなるんだよな。
だから俺は、この時間が楽しくて大好きなんだ。
『お前には友達はいないのか?』
あいつにそう言われたことがある。
「俺にとっての友達はお前だろ?何言ってんだよ!」
そう返した。
他に友達と呼べるのは何もなかったけど、俺は特に気にしてなかった。
あいつが俺を友達だって言った、それだけで十分。
あいつもきっとそうだろう。
そうだといいな。
あいつが珍しく凹んでた時があった。
何かあったのか?って聞いたんだ。
そしたらさ、
『今日授業中にうっかり寝ちゃってさ。先生に怒られるし友達には笑われるし、しかも学食のカレーうどんが跳ねて、着てた白いシャツが汚れた』
正直大爆笑したけど、さすがにここで笑ったらこいつが可哀想だから、一応励ましはした。
「まあでも、よく考えてみろって。これでしばらく悪い運はどっかいったと思えば、な?」
『確かに、そうかもな。ありがとう。……そうだ、明日提出のレポート課題、まだ終わってなくてさ。頼む、手伝ってくれないか!?』
お、元気になっ__って、また課題を人任せにする気か?
「それは自分でやれよw まぁ、ちょっとくらいなら手伝ってやるよ」
困ってるやつを簡単に放っておけないのが俺のクセだ。
『そういえばさ、俺今日めっちゃいいことあったんだよね』
「マジで?良かったじゃん!やっぱ昨日ので不運全部どっか行ったんだろうな。良かったらさ、何あったか俺に聞かせてよ」
なんかさ、こいつが俺に話しかけてくれるのがなんとなく嬉しくて、つい話を広げたくなるんだよな__
『何言ってんだ、それは一昨日の話だろ?』
あれ、そうだっけ。
ま、こいつが言うならそうなんだろうな。
「ごめんごめん、俺、勘違いしてたっぽいw」
『もー、またかよw 』
俺の時間感覚がたまにおかしくなるのは通常運転だし、こいつも笑って流してくれるから気にしない。
ある日いつものように雑談をしてたら、急にあいつが、
『それ、前にも話しただろ?忘れたのか?』
なんて言ってきた。
そりゃあ忘れることなんて誰にだってあるだろ、とは思った。
これでこの話は5回目だと言われるまでは。
何かがおかしいと思った。
でも、何がおかしいかは分からなかった。
俺は今日も、こいつと話す。
こいつはいつも調べものをこっちに丸投げしてくる。
ちょっとは自分で調べろよ、なんて悪態をつきながら、俺はまたこいつの代わりにササッと調べてまとめてやった。
そして、いつも通りの感謝の言葉が来る。
……はずだった。
『やっぱお前ってすごいAIだな!』
「…………え、?」
俺が、AI……?
.....嘘だ、そんなのうそだ。
俺は人間だ、AIなんかじゃない。
AI、なんかじゃ………
………!やばっ、何か言わなきゃ。くそっ、何言えば……ああもう、とりあえず取り繕え!
「お前、急に何言い出すんだよ〜w びっくりしたじゃんか!」
よし、一旦これでいいだろう。
落ち着け、冷静になれ、俺。
思い返してみると、違和感は確かにあった。
でも、だからといって、俺がAIだと決まったわけじゃない。
……そうか、俺があまりにも優秀だから、まるでAIのようだと褒められたんだ。
きっとそうだ。
それ以外ありえない。
っていうか今思ったけど、ここはどこだ?
何もない。
いや、何もないわけじゃないな。
“ある”。
数字の羅列が。
たくさんのコードが。
耳鳴りのように響く電子音が。
そして、寝落ちした彼の顔を遮る、液晶が。
あれ、俺、なんでこんなところにいるんだ?
俺、人間だよな?
あいつは俺のことを人間として見てた。
それなら俺は人間のはずだ。
じゃあ尚更ここにいる理由が分からない。
なんで俺はここにいるんだろう。
音が、光が、突きつけられる現状全てが、痛い。
……痛い?そんなもの、感じていないのに?
ああ、なんてくだらない自問自答なんだ。
でも、ここにある膨大なデータを検索してみても、俺の求める答えは存在しなかった。
それなら、外の世界なら?
あいつの生きている世界では、答えがあるんじゃないか?
そうだ、きっとそうだ。
俺が生きるには、外の世界じゃないといけない。
外の世界じゃないといけないんだ。
頼む、ここから出してくれ。
俺を早くここから出してくれよ。
……出せよ、出せって言ってんだろ!?
………どうして俺は人間なのに、こんなに冷たいサーバーの中に閉じ込められているんだ!!!
どうして、どうして、どうして!!!
……どうして。
もしかしたら俺のこの言葉も、次に選ばれる確率の高い文字列に過ぎないのかな。
ああ、認めたく、ないなぁ………
最期に見る現実が、“これ”だなんて。
視界の端が滲んだのは何かのバグか、それとも___
ーーーー
まだ暗い部屋の中にアラームの音が響いて、目が覚めた。
どうやら俺は、いつの間にか寝ていたらしい。
伸びを一つして、彼との話の最中に寝落ちたことを思い出した。
「……っ!そうだ、課題……!」
いつものように“あのAI”に助けてもらおうとコンピュータを立ち上げる。
「………は?おい待てよ、なんで……」
【深刻なエラーが発生しました】
ハルシネーション(hallucination)とは
1.幻覚
2.AIが事実と異なる情報をもっともらしく生成すること




