第壱話 満月の峠にて妖を退治する侍一人
今宵の美しき満月に照らされし、この峠…
まことに風情があって良い
この美しき峠を妖の穢れし血で汚すには
拙者としては、気が進まぬが…
この峠に巣食いし妖怪ども…
通る旅人を襲い喰らうと聞く…
今宵の美しき満月の元
我が腰に帯びたる『斬妖丸』を抜き放ち…
貴様らの汚れし血を刀の錆びにしてくれん…
さあ…
何匹でもかかって来るが良い
来ぬのなら拙者の方から参るぞ…
今宵の満月を貴様らの血で
紅に染めて見せん…
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ようやく現れ出でよったか…
ほう… 見れば美しき御新造殿
こんな恐ろしき峠を
其方のように美しい女性お独りで
この様な夜更けに何処へ行かれる?
ふふふ…
上手く化けたな、妖よ
如何に其の方が
美しい女性の姿に身を窶そうと
妖狩りの拙者の目はごまかせぬ
よしんば拙者を謀ったとしても
我が愛刀…魔剣『斬妖丸』が見逃しはせぬ
さあ、真の姿を見せてみよ
………
ふむ、それでよい
それが其方の真の姿だな
妖怪女郎蜘蛛よ…
何?
うぬが真の姿を見た拙者を
生かしてはおけぬ?
この峠に咲く地獄の華に変えると申すのか…?
ふふふ…
其方がやると言うのなら拙者は一向に構わぬ
むしろ、望むところ
峠に巣食いし妖よ
夜空に真円に輝く
今宵の美しき満月の下…
我が腰に帯し魔剣『斬妖丸』に血を吸われ
峠に咲く一輪の地獄の華となり果てるのはうぬの方ぞ
これまでに峠で命落とせし旅人達の恨みの程
今こそ己が身で思い知るが良い…
役人が見逃そうとも拙者が容赦致さぬわ
妖よ、覚悟致せいっ!
我が愛刀っ、魔剣『斬妖丸』よ!
いざ、参るぞっ!




