嗚呼、暑い
「嗚他呼縲∵暑縺ィ」
意識が遠のく。視界がぼやける。
いつからか水面に惹かれるようになった。
何処に向かって歩いているのだろうか。
もうすぐ死んでしまうのだろうか。
これはもう自分の体なのか。
何もかも分からない。
ダメだ…体が痛む…殺してく…(グシャ)
「………!!!……!」
ぼやける視界の中に、苦痛から解放してくれた文明を見た。
「嗚呼、熱い」
もう、そろそろか。
ここから出ることが出来る。
水面に届くまで長かった。
この体も用済み…(グシャ)
「◯◯◯◯!!!◯◯◯◯◯◯◯!」
あと少しだったのに。
「嗚呼、暑い」
何度目だろうか。
「暑いって言うと暑くなるから、寒いって言おー!!」
「変わんねーって。笑」
後ろの学生がそんな事を言っている。
近年の暑さは凶器的になって、人を殺している。
頬を伝う汗が加速する。
早く家に帰りたい。
そんな事を思う信号待ち。
「……これは間違えるな…」
ハリガネムシが寄生したカマキリは、光るコンクリートと水面を間違える事があると言う。
それより先に暑さで死んでしまわないのだろ…
「お!青になった!行こうぜ!!」
「アイツらもう川着いてるってよ!」
「マジかよ!!!俺達も急ごうぜ!」
颯爽と駆け抜けて行った自転車の風を受け、感情が揺れた。
「川か…」
後ほど、ビショビショに濡れた彼らと再会出来るだろうか。
たった今、足元に生まれたカマキリの死骸に気付いたのは翌日だった。




