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ディスコミ・トゥルー・コンフェッション

作者: 南蜘蛛
掲載日:2025/12/11

七作目です。三兄弟を生かした物語を作りたくて書きました。

まあまあ短いですがぜひ読んでくれるとありがたいです。

「ようこそ、告解室へ。私はこの教会の司祭です。あなたがこの場に足を踏み入れたこと、心より感謝いたします」

「あ、はい。こ、こちらこそ、よろしくお願いします」

 学校からの帰り道。少年は近くにある教会に寄り道をしていた。まだ建設されて日が浅い教会だが、意外にも人気が急上昇し、通う人たちが次々と増えていってるようだった。その最大の要因は、教会の施設内にある小さな“告解室”のようで、悩みを綺麗さっぱり解決してくれることで有名らしい。かくいう少年もその噂を耳にし、現在薄暗い部屋の中で顔も性別もわからない人と壁越しで対面している。初めて訪れた場所に戸惑っていると、司祭が口を開いた。

「あまり畏まらなくても大丈夫ですよ。告解室といっても、お悩み相談みたいなものと思っていただいて構いません」

「いや、でも僕の悩みなんて側から見たらちっぽけっていうか大袈裟っていうか……」

「悩みに大小なんて関係ありません。重要なのはあなたが今困っているということです。そして私の役目は、その悩みを真摯に受け止め、救済を与えること。だから存分に悩みをお聞かせください」

「あ、ありがとうございます。じゃあ——」

 司祭の暖かな言葉に気持ちの整理がついた少年は、自身の悩みを打ち明けた。

「えと……僕には双子の姉がいるんですけど、つい最近喧嘩しちゃって。それから顔を合わせるたびに気まずい感じになって会話も弾まないんです。家にいる時も居心地が悪いしいたたまれないし……だからどうにかしなきゃって思ったんです。でもそもそもなんで喧嘩したのかよく考え直してみたんですよ。そしたら僕別に悪くないんじゃないかなって思って。だって格ゲーで十回連続勝利しただけですよ? そりゃあ僕も三回勝ったあたりから調子に乗って姉さんが嫌がるプレイばっかりして泣かせたのは流石にやりすぎたとは思うんですけど。でも勝負に手を抜くのは違うんじゃないかとも思ったんです。姉さんだってよく言ってるんですよ。『真剣勝負に情けをかけるのは、戦う相手に対する最大の侮辱だ』って。姉さん高校ではテニス部に入っててスポーツも万能だし明るいし友達多いし、なんかキラキラしてるし、僕とは大違いなんですよ。それに比べて僕はちょっと手先が器用なだけであんまパッとしなくて、それで魔が差したっていうか、僕も勝利を味わってみたかったっていうか……………………なんか思い返してみたら、ただの自分の醜い嫉妬だったんじゃないかって思ってきました。考えてみればたかがゲームでムキになって相手をボコすってめっちゃ子供っぽいですよね。昔から僕ゲームだけは周りからすごいって言われてたからそれでつい調子に乗っちゃったんですね。ああ、姉さんに非があるんじゃないかって思ってた自分を殴りに行きたいですマジで。こんなのでどうやって仲直りすればいいんだ……。司祭さん、何か方法はないんでしょうか? このまま仲違いで終わるのは嫌なんです! なんか僕言ってることすげえ気持ち悪いかもしれないんですけどお願いします! なにか——————————」

 少年は想像以上に悩みをぶちまけた。


 *


 数時間前……

「ぐす、うう……絶対嫌われたあああ! 絶対嫌われたよおおお!」

 告解室の前で泣き崩れている少女がいた。

 少女の話によれば、最近双子の弟と喧嘩をし、それ以来口もあまり聞いておらず気まずい関係が続いているらしい。そんな状況を打破するために、教会にある告解室の噂を聞きつけ、ここにやってきたのだ。  そして司祭に悩みを聞いてもらっているうちに情緒がおかしくなり、現在泣き崩れているわけだ。

 そんな少女をなだめるように司祭は声をかけてきた。

「お嬢さん、早まってはいけません。まだそうと決まったわけではありませんよ」

「だってだって、たかがゲームで負けちゃったぐらいで怒って空気最悪にしちゃった私のせいだし! そっから恥ずかしくてごめんねも言えずにただ時間だけが過ぎてったアホの私のせいだし! ああもうどうして私っていつもこうなんだろう! 弟は私のこと明るくて社交的で運動もできるスーパーウーマンで羨ましいとか言ってたけど違うのよ! 弟の前ではカッコつけてるけど本当は友達とかと話してる時とかつまんないって思われてないか不安になるし一人の時はやたら独り言多いし肝心な時にイエスやノーがはっきり言えない不完全人間なの! 全っ然パーフェクトじゃないのよ! はあ…………ぶっちゃけ本音を言うと弟といる時が一番落ち着くんだよね。気使わなくていいし割と趣味合うし。でもこんなこと言ったら絶対気持ち悪いって思われるから言わないんだけど。でも今はなんでもいいから弟に言わないといけないのに〜くう〜今になって自分の真のネガティブ性を恨んだことはないよほんと…………」

 もはや司祭のことなどそっちのけで自己嫌悪に陥っている少女であったが、司祭は少女の悩み事が吐き終わるのを見計らっていたように助け舟を出した。

「お嬢さん。絶望の渦に飲み込まれてはいけません。あなたの目の前にはまだちゃんと希望が残っていますよ」

「……へ?」

「ここでお聞きしたいことがあります。あなたはここ数日、弟さんと会話はしましたか?」

「えっと、いや、直接話してはないです」

「なるほど。ちなみに食事やテレビを見るときなどは一緒にいましたか?」

「一緒っていうか……そういうのはたいていリビングで家族で一緒にいますけど」

「よろしい。ならば問題ありません。あとは弟さんと直接話して和解するだけです」

「は!? えっちょっ、なんでそうなるんですか!?」

たった二回の質問で結論が出てしまい、少女は困惑した様子だった。その反応を待ってたと言わんばかりに、司祭は少女に丁寧に解説し始めた。

「まずお嬢さん。あなたはここ数日間、弟さんと会話をしてないと言いましたね。そしてそのせいであなたは弟さんに嫌われていると思っている。ですが見方を変えれば、相手側もこちらになんと声をかけていいかわからないから声をかけれないとも考えられます」

「ん? ん〜そうですかね?」

「そしてあなた方二人は喧嘩中でありながらも、一緒の空間にいる。喧嘩している間は普通、あまり一緒の空間にいたり目を合わせたりしたくはないですよね? つまりこれは、弟さんはあなたを嫌っているわけではないということなのです」

「…………!」

「いいですかお嬢さん。あなたは確かに一度、些細なきっかけで言い争い、弟さんに酷いことを言ったのかもしれません。ですがもっと酷いのは、弟さんと向き合おうとせず、一歩を踏み出せていないままのあなた自身なのです。あなた方は姉弟だ。たとえ喧嘩をしたって、何度でも仲直りすればいいのです。それが家族というものではないでしょうか」

「!!!」

 司祭の言葉で我に帰った少女はハッと顔を上げ、決意を示すように立ち上がった。

「司祭さん、私バカでした。やっと目が覚めました。今までウジウジ悩んできたけど、まずは面と向かってちゃんと弟と話してみようと思います!」

「はい。それがあなた自身が導き出した答えなら、私からはもう何も言うことはありません」

「私なんかの悩みを聞いてくれて本当にありがとうございます! 今度友達に最高の懺悔室だったって言っときますねー!」

「また悩みができたらいつでもいらっしゃってください。あと、懺悔室じゃなくて告解室ですよ」

司祭は満足げな口調で少女を送り出した。少女は来た時とは打って変わって軽快な足取りで教会を後にした。


 *


 数時間後……

「本当にありがとうございます。なんてお礼を言っていいか……」

「礼は不要です。これが私の仕事ですので」

 少年は司祭と話し合いをし、思い悩んだ末、改めて姉ともう一度話してみることに決めた。そのまま感謝の言葉を残し、教会を後にした。

 その後、告解室には数人の悩める者達が訪れていき、気づけば空は暗闇に覆われていた。そして教会も閉まる時刻に近づいたのと同時に、告解室から————————

「っあーーーーやっと終わったーーーーーー」

 仕事がひと段落したような緊張感のない声が響いていた。

「いや〜告解室のバイトってのも大変だな〜。壁越しとはいえずっと客と対話すんのも楽じゃねえなあ。よっこらせ」

 バイトの勤務時間も終わり、身支度を済ませた青年は告解室から退室し、鍵をかけて教会を後にした。

 バイト先から帰る夜道の中、青年は大きくも小さくもない独り言を呟いていた。

「にしてもあいつら、まさか俺がバイトしてるところにいきなり来るなんてな〜。急すぎてびっくりしちまったぜ。ちゃんとバレずに演技できてたかな〜。喋り方もそれっぽく似せてたはずだし大丈夫だよな。

ていうか二人ともスッゲー喋ってたなあ。普段は性格とか全然違うのに一人になった途端卑屈になって早口になるんだもんな〜。やっぱり双子だから似るのか? 隠さないでもっと内面さらけ出せばいいのに。なんか変なところで素直じゃないよなあいつら。俺には結構素直なのに」

 歩きながら虚空に向かって自分の気持ちを吐露していると、いつの間にか自分の家に着いていた。玄関の門を開けて、続けてドアノブを握り扉を開けようとした時、家の中から二人分の声が聞こえてきた。どうやら二人でゲームをして盛り上がっているようで、ゲームのBGMと共に楽しそうな遊び声が漏れているのだった。

「……ま、なんだかんだ言って、あいつらめちゃくちゃ仲良いからな」

 そう言って微笑むと、青年は扉を開け、馴染み深い雰囲気が漂う我が家に帰宅した。

「ただいま」

 青年が発した言葉に続き、家のリビングにいた男女二人はこちらに姿を向けて笑顔で応えた。


「「おかえり、兄さん」」

                                              終

読んでくれた人もそうじゃない人もありがとうございました。

書き終わった後に感じましたが、これはオムニバス形式というのでしょうか?それともモキュメンタリー形式というのでしょうか?あんまりそういったものを意識したつもりはないですが、俺ももっと勉強が必要ですね。

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