1人だけ別ゲー・理不尽VS理不尽
理不尽VS理不尽 勝手に戦え!
空は雲に覆われ、どこかの石製の闘技場のボロボロになった舞台にも見える広い空間。
そこには神々しくも人型と呼び切れない冒涜さを見せる、圧倒的に禍々しい巨大なナニカがいた。
そしてそれに対峙するように、探検隊が着るような服と丸々と太った人間サイズにまで膨らんだ大きなリュックを背負い腰のベルトにスリングショットを挟み剣に見立てた木の枝を握った、まだ10歳位と見られる少年の姿がある。
『なぜだ! なぜ我がこんな童に! こんな粗末な得物で……!! なぜだぁ…………!!!!』
「へっ! 刺激が欲しいと異物を喚んだお前の結果だろうがっ!! お前が戯れでこの世界に引きずり込んだ、異物中の異物たる俺にこうやられる気分はどうだっ!?」
『我が……亡ぶ……!! あり得ぬ………!!!』
「へっ! お前の気まぐれでどれだけの人間が死んだと思ってるっ! それの報いが、今来たってだけさっ!」
『そんな、バカな……!!』
「消えちまえっ! この邪神がっ!!」
『おのれ……おのれぇ……!! だが、我を亡ぼしたらお前は帰れなくなる……! 元より帰す気など無かったが、このままこの地で彷徨い続けるが良い…………!!!』
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なんてクライマックスを放っといて、この少年の秘密をこっそり紹介。
彼の正体は、どっかの魂とか血とかの理不尽世界のラスボスに、暇つぶしで異世界召喚された“おっさん”だ。
正確には肉体は喚べなかったので、魂だけで世界を越えさせて、その魂の形のまま受肉させた。
で、この魂が死にゲー世界には劇物だった。
おっさんはゲーム好きで、その根っこになったのが、少年達が主役のキャラが死ぬ概念の無いアクション謎解きアドベンチャーゲームだった。
敵からのダメージは全て、1秒くらい座り込んで脱力&頭の上でヒヨコが回る演出だけ。 ピヨり中と復帰後2秒は無敵。
地面が無い落とし穴に落ちても、落ちた所の近くに瞬時に復帰する。
戦闘より謎解きアクションがメインで、武器らしいものは木の枝やスリングショットやその辺に落ちてる両手で持ち上げる大きな石や大きな草。
木の枝やスリングショットの攻撃は敵の種類次第だが、それでもラスボス相手に10発当てれば倒せる。
持ち上げた草なら木の枝2発分、石なら3発分の威力がある。
そう。 死にゲーなのに死なないし、死にゲーの綱渡り戦闘すらラスボス相手に10発当てるだけで勝てる理不尽が刻み込まれた魂を召喚してしまったのだ!
理不尽VS理不尽の対戦結果は、死ぬ概念が無い別ゲーの勝利で決着がついたのだ。
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「…………さて、と」
邪神が亡び、全てが終わった世界で彼がつぶやく。
「この後は……まあ心配する事は無いな。 なにせこのゲームのエピローグが、確か……」
こんな事をつぶやきながら、彼の意識が薄くなって行く。
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『起きなさい……起きなさい……』
「………………ん」
『起きなさい……起きn』
ピッ。
「…………ふぅ」
おっさんがそこらのアニメから録音した目覚ましを止めて、起き上がる。
「まあ、こうなるよな」
おっさんは“夢”の中身を寝ぼけた頭で反芻を始めた。
あの子供の頃に初めてプレイしてハマりにハマったゲームのエピローグを。
あのゲーム中の事は、実際はそれよりもっと安全でちょっとした子供の冒険が、夢の中って事で膨らみに膨らんだ大冒険になったものを見ていた。
ぶっちゃけ夢オチである。
それから醒めて、良い思い出だったと現実に戻るエピローグ。
つまり異世界召喚されたが、現実に戻ってこられたのだ。
あんな死にゲーで退廃的で陰鬱とした世界で生きていかねばならんのは、本当にゴメン被る事態なのだ。
「うん。 良い夢だった」
そうまとめて、おっさんは時間に追われる現実を生きる。
死にゲーで理不尽って、やっぱこう言った死ぬ概念が無い系のゲーム世界の住人が攻めてくるタイプだよなとゲス笑い。