異世界へ――。……4
明日は、あまりの忙しさに小説投稿すら出来そうにありません。
と、いうわけで、明日の分を投稿しておきます。
「「…………」」
壮絶……といえばいいのだろうか。僕と鏡君は、あまりにも悲惨な光景に思わず唖然とする。
殺人、略奪、強姦。あまりにも単純に、地獄が繰り広げられていた。
「夢、だよな……?」
錆び付いた人形のようにこっちを見てくる鏡君に、僕は一言、
「残念ながら、現実と思った方が利口かと」と、それだけを残す。
「でも、さ。そんな事言われても、俺達は高校生だぜ!? ……理解出来ない」
「だったら、鏡君はそこで見てると良い」
「っおい! 由希、何処に行く気だ!?」
一人走り出す。
こちとら異世界に召喚された身。誰に望まれなくとも、勇者の一つや二つは演じてみせる。
「いやああぁぁ!!」
「……っ!!」
叫び声が聞こえ、反射的に立ち止まる。
叫び声の聞こえる路地に目を向け――
「誰か助けて……助けて下さいっ!!」
――襲われている女性を見つけた。女性も、襲っている騎士風の男も明後日の方を向いており、こちらには気が付いていない。
――殺るなら今しかない。
無意識の内に震える。恐怖? 武者震い? ……どちらでもいい。
ただ、襲っている男には僕が本当の勇者に祭り上げられるために死んでもらうだけだ。
鏡君は僕に言うかも知れない。「何でそこまで勇者に固執するんだ?」と。
……別段、僕は勇者に固執しているわけではない。鏡君より理解しているだけだ。こんな右も左も分からない世界で生き抜く事が、どれだけ大変だということを。
「地獄に堕ちろ、下衆」
男が俺に気付き、慌てて剣を抜くが――遅い。
振り抜いたオッサンソードは頸動脈を易々と切り裂く。その切れ味は中々のもので、男の首の中程まで引き裂き止まった。
一瞬遅れて出る大量の血。なんとも言えない吐き気を催すが……気合いで捩じ伏せる。
死なない僕が死んでまで此処に来たって事は、それは神の仕業であり、鏡君が巻き込まれたのは僕の所為になる。
だから僕は、彼を死なせるわけにはいかない。僕の勝手で人生が目茶苦茶になったのに、第二の人生まで壊すわけにはいかない。
静かな決意を明らかにしたところで、女性と目が合った。