異世界へ――。……3
「取り敢えず俺はトラックに轢かれて、目が覚めたら死体と眠ってて、良く分からんけど夢かと思って死体から剣を入手。そのまま歩いてたらなんか弱そうな男がいたから……ひっ! すみませんでした!!」
危ない。人の事を弱そうとか宣う馬鹿のせいで、危うくオッサンソードを振るうとこだった。
……そういえば、馬鹿……鏡君が言って思い出したけど、僕ってトラックに轢かれたんだっけ。……鏡君は死んでも僕は無傷なはずなんだけどな……まぁ、別にいいや。考えるのが面倒だし。
「で、由希はどうやって此処に?」
「僕? 僕はトラックに轢かれて、目が覚める前にオッサンに起こされて、状況を理解する前に伝説のオッサンソードを渡されて此処まで逃げる、もとい歩いて来た」
「なるほど。そこで」「振り返ると馬鹿が自滅してた」「……そこまで言わなくても……」
一人で落ち込み、ひたすら地面に『の』を書いてる馬鹿をおいて歩きだ「待ってよぉ~」……ちっ、着いてきた。
「何処に行くわけさ?」
「別に決めてないけど、普通なら町じゃない?」
で、傭兵とかギルド登録とか済ませるのが異世界召喚ものの常識だろ。……まぁ、それは小説の話しで、現実だとそこまで上手くいくのかは知らないけど……少なくとも僕は大丈夫だろう。
「なるほど、町か。でも由希、なんか……燃えてね?」
指を差された方を見る…………燃えてる。僕達が行くべきであろう町が。
「……どうする?」
鏡君の頬がぴくぴくっと動く。その気持ちは分からない事もない。
「……取り敢えず、行ってみようか」