人気女性Vtuberの私が家に帰るとガチ恋勢(女)がいた件について(不法侵入)
『【ASMR】今日も1日頑張った皆さんを癒やします♪/白宮レノ』
銀色の髪に白いドレス。耳は尖っていて、エルフだということが分かる。
顔は整っており、年齢は20代に見える。
そんなアバターがにっこり笑顔で、画面に映っていた。
「皆さん、今日もお疲れ様でした。私の声で少しでも癒やされたでしょうか?それではまた明日会いましょう。おやすみなさい。」
チャット
:おやすみ~
:癒やされました!
:これで明日も戦える
:明日会えるのが楽しみです!
:おつ~
私は配信を終え、ふぅ…っと息を吐く。
今日もおわったぁ。
私が白宮レノとしてVtuberを始めてから3年。
今では登録者も15万人を超え、個人勢としてはかなりの大手だと思う。
私は元々声には自信が有ったため、この結果に凄く満足している。
「はぁ…寝よ。」
ただ、現実の私は普通だ。容姿も悪くはないけど、美人かどうかは分からない。
頭も運動神経もそこそこで、今は大きな商業施設の、そこそこ人気な洋服店で店員をしている。
今はもう仕事を辞めても大丈夫なほどには稼げているけど、Vtuberがいつまで人気か分からないから、仕事を辞めるわけにはいかない。
だから私は、毎日疲れており、配信が終わればすぐに寝ている。
一人暮らしだと、家事をするのも大変なのだ。主にめんどくさくて。
配信活動は趣味で始めて、最初は息抜き程度だった。
歌を歌ったり、ゲームをしたり、雑談をしたり。でも途中からはコロナの影響でVtuber人気が高まり、ASMR用のマイクを買ったり出来るほどに人気が出た。
だから次第に配信時間を増やすこととなり、結果的に疲労が取れきれなくなっていた。
私も年を取ったっということかな。
まあこんなことは考えても仕方がない。
明日も仕事だから寝よう。
「ただいまー。」
玄関を開け、誰もいない部屋に挨拶をする。
今日も仕事を終え、やっと家に帰ってきたのだった。
「…あれ?部屋の電気消し忘れてた?」
リビングの電気が点いている。
うそぉ、電気代もったいないなぁ。
私はため息をつき、靴を脱いでリビングに入った。
「あ、お帰りなさいレノちゃん!」
「…あなた誰?」
リビングには制服を着た、知らない女の子がいた。
「いただきます。」
「どうぞ~。」
疲れている私の脳みそが予想外の出来事に混乱している間に、女の子は私の手から鞄を取り、服を脱がせて、椅子に座らせた。
私はいつも、部屋では下着だけでいるのだ。
そして女の子はキッチンからいくつかの皿を持って来た。
皿の上にはオムライスとサラダ、コンソメスープが載っていた。
そして流され続けて、私は彼女が作った料理を食べることになった。
「…待って、色々おかしい所しかない。」
「…ん?どうかしましたか?料理が冷める前に食べてくださいね。」
「あ、うん。…じゃなくて!あなた誰!? なんで部屋にいるの!? なんで料理を作ってるの!? そして、なんで私が普段下着生活なのを知ってるの!?」
「まぁまぁ、先に料理を食べてくださいよ。お話はそれからにしましょう。オムライスが好きって配信で言ってたので、頑張って作ったんです。」
ぐぅぅぅぅぅ~~~~
私のお腹がそんな音を鳴らした。
「ねっ?」
「うぅ…。」
私はふわっふわ卵のオムライスを食べることにした。
めっちゃオムライス美味しかった。
「それで、どうしてあなたはここに?」
お腹がいっぱいになった私は、オムライスが美味しかったせいか、全く怒りも恐怖もなかったのだった。
「私の名前は春乃です。レノちゃんに会いたくてここまで来ました!」
「…春乃ちゃんはどうして私がレノだと知ってるの?どうしてこの家を知ってるの?というかどうやって入った?ピッキング出来ない部屋なんだけど?あと何より、なんで私が下着生活だと知ってるの?」
私の家は、結構お高いマンションで、防犯もしっかりしているはず。
ロックはパスワードかマスターキーじゃないと開かないし、マスターキーは私と大家しか持っていないはず。なんでこの子はここにいるの?
あと、私は誰にも下着生活のことは言ってないんだけど!
「ちょちょいと調べたら、すぐ特定できましたよ?それに、部屋のロックは大家さんに言ったら開けてくれました!」
「…なんて言ったの?」
「えっと…『従姉の部屋に内緒で遊びに来たのに、お姉ちゃんが出かけてて入れないんです。電話してみたら、大家さんは優しいから事情を話したら開けてくれるって、お姉ちゃんが言ってたので、開けてもらえませんか…?』って言いました。」
「うわぁ…。」
春乃ちゃんは清純な美少女という容姿で、こんな子が悪いわけないっていうオーラがある。
大家は実際優しいおじいちゃんなので、孫みたいな可愛い女の子に頼まれたら、喜んで聞いてしまうだろう。
「…そんなに特定簡単だった?」
「はい。10分かかりませんでしたよ?」
「うそぉ…。」
私はスマホを取り出して、検索してみる。
『白宮レノ 特定』っと。
…いや、どこにも私を特定したなんてページ無いんだけど?
どの掲示板やホームページを見ても、私の中身は特定されていない。
どこの誰だ?っていうものばかり。
そりゃそうだ。銀髪美人の中身が、こんなどこにでもいそうな女な訳がない。
声だって、普段は高めの声を出している。でも配信では、地声の低い声だ。その低い声が落ち着くと人気になったのだから、高い声からは気付けるはずもない。
もしかしてこの子、天才系ヤバい奴?料理も上手だったし、容姿も凄く可愛い。
神は一人に才能を与えすぎでは?
「皆、あんなに簡単に特定できるのに、まだまだですね。」
「いや、簡単に特定とかされたくないんだけど…。」
「でも、もう特定されることは無いと思いますよ。私が特定したときに使った情報は、全て削除してますから。それに、レノちゃんのパソコンのセキュリティも強化しておきました。」
『【悲報】勝手にパソコンの中身を見られた件について』
おっかしいなぁ…。パソコンにもパスワードが必要なんだけどなぁ。
「…ふぅ。まあいいわ。それで春乃ちゃんはどうしたいの?何が目的?」
「目的…ですか?」
「ええ。わざわざそこまでした理由が何かあるでしょう。お金?それとも脅迫でもする?」
「…?別にそんなの考えてないですよ?」
「はぁ?じゃあなんでこの部屋に来たのよ。」
「好きな人に会いたいって思っただけですよ?」
「…それだけ?」
「はいっ、それだけです。」
春乃ちゃんの目は、嘘をついてなさそうだった。
じゃあ、マジで私のことが好きだからってだけでここまで来たの?
「聞きたいことってそれだけですか?」
「んー…なんかもういいや。」
この子は頭はおかしいけど、安全そうだった。
「それじゃあ、お風呂を沸かしてあるので、入りましょう。背中を流してあげますよ。髪も乾かしてあげます。」
「え?いや、それぐらい自分でするわよ?」
「でも前に言ってたじゃないですか。私のお世話を全てしてくれるお嫁さんが欲しいって。」
「言ったっけ?」
「はい。13回目の配信で、10分21秒経ったときに言ってました。」
「…記憶力いいね。」
記憶力良すぎて怖い。
13回目の配信とか、今ではアーカイブ消してるのに。
あの配信は、私の今までの配信で唯一アーカイブが消えている。
理由は、仕事で嫌なことがあって、お酒を飲んでべろんべろんに酔っていたから。
後から見返すと失言の嵐で、翌朝すぐに消したのだった。
もう2年と10ヶ月前のことだった。
「だって、今でも見直してますし。」
「…ん?もしかして録画でもしてた?」
「はい。第一回配信から全て録画してますよ?」
「ちょっ、それ消して!」
最近の配信ではしてないけど、過去の配信は黒歴史が量産されすぎてて、アーカイブだと編集で半分以上消えていることもあるぐらいなんだから!
そんな負の遺産を残しておくわけにはいかないっ!
「やーです。さぁ、お風呂に入りましょう。」
「ちょっと待って!消すのが先だよ!」
「レノちゃんがお風呂に一緒に入るなら、消すかもです。」
「よし、春乃ちゃんお風呂へ行こう。」
背中だけでなく、全身を優しく綺麗に洗われ、私は髪の毛を乾かされていた。
私が自分で何かしようとすると、全部止められたのだった。ぴえん。
…あれ?何か忘れてる気がする…。
「はい、乾きましたよ。」
「ありがとう春乃ちゃん。
…思ったんだけど、もしかして春乃ちゃんって、私のお世話を全てするお嫁さんになりにきたの?」
「はい、そうですよ?今日からここに住みますし。」
「待って、それ聞いてない。」
「…?お嫁さんなので当たり前では?」
「いや、お母さんとかが怒るでしょう。」
「両親はもういませんよ?」
「えっ…あ、その、ごめんなさい。」
「大丈夫です。もう3年前のことですから。」
「そう…。」
「はい。当時の私はもちろん落ち込んでましたけど、レノちゃんがいたお陰で生きる道を選んだのです。」
「そうなの?」
「はい。レノちゃんが私を生かしてくれました。だから次は、私がレノちゃんに恩返しをする番です。」
「私は別に…趣味で配信してただけだし。」
「じゃあ私も、趣味でレノちゃんのお嫁さんになりますね。」
「いや、それはおかしい。」
「あ、レノちゃん。もう配信の時間ですよ。」
時計を見ると、21時だった。もうそんな時間なのか。
「配信しても良いけど…春乃ちゃんはどうするの?」
「レノちゃんの隣で座ってます。そして片耳と片目で配信を見て、もう片方の目と耳で実際のレノちゃんを見てます。」
「あぁー…もうそれでいいや。」
『今日は普通のマイクです/白宮レノ』
「こんばんは~。」
チャット
:こんばんは~!
:今日は間に合った!
:金曜終わったぜ!
:普通のマイク久しぶり
「今日は久しぶりに普通のマイクでお送りしますー。」
チャット
:これはこれでいい
:最近ずっとASMRだったもんな
:急にどしたん?
:マイク壊れた?
「あ、別にマイクは壊れてないですよ。えっと…実は今日人が来ているので、生活音が入るかもしれないので、普通のマイクにしました。」
チャット
:!?
:来客だと!?
:男か!?
:裏切られた!
「待ってください、男じゃないですよ!女性です!女の子ですよ!」
チャット
:女なら許す
:なんだ、女か
:ん?女?
:女の子って、子どもなのか?
「えっと…多分高校生です。」
チャット
:多分?
:未成年連れ込んだの?
:ナンパ?
「いや、皆私のことどう思ってるんですか!そういうのじゃないです!」
チャット
:じゃあどういうの?
:親戚とか従姉妹か?
:妹なんかいたっけ?
:もしかして:彼女
「あー関係性ですか…、えっと…嫁です。」
チャット
:!?
:はあ!?
:嫁!?
:彼女いたの!?
:これは問い詰めなければ
:というか、誰か泣いてる?
「え、ちょっと、なんで泣いてるの!?」
コメントを見て隣を向くと、春乃ちゃんが泣いていた。
ちょっと、なんで!?
「あ、ごめんなさい…レノちゃん公認の嫁になれたので…。」
チャット
:今まで非公認だったって事か!?
:非公認の嫁!?
:嫁が非公認!?
:嫁の非公認!?
:非公認が嫁!?
:↑なんか浮気したみたい
:↑それな
「いや、なんで浮気したことになるのよ!そういうわけじゃなくて、色々事情があるの!」
チャット
:事情とは?
:kwsk
:はよ言え
:ビール持って来た
「人の話を肴にして酒を飲むなよ…あ、肴ってそういうものか。
え、皆聞きたい?」
チャット
:キリキリ吐きなさい
:カツ丼いるか?
:なんで高校生に手を出した?
:正直に話しなさい
:おまえにも家族がいるだろう
「いや、私まだ犯罪者じゃないから!あと皆協力しすぎ!
…じゃあ話すね。」
チャット
:はよはよ
:ワクワク
:俺もまねして高校生の嫁作る
:↑通報した
:ああ、警官さん、こいつ↑です
「これは今朝の事です。私は仕事に向かうため、家の鍵をして仕事に向かいました。」
チャット
:①部屋の鍵を閉めて仕事に向かう。
:これは俺もしてる
:次は?
「私は1日仕事を頑張り、家に帰ってきました。」
チャット
:②仕事頑張った。
:頑張って偉い
:それに比べておまえらときたら…
:やめろっ、それ以上言うんじゃねぇ!
:その攻撃は俺に効く
:俺にも効く
:無差別攻撃かよ…ぐふっ
「玄関に入ると、朝消したはずのリビングの電気が点いていました。」
チャット
:③家に帰るとリビングが明るかった。
:…ん?
:あれ?
:もしかしてそういうお話?
:霊媒師呼ぶ?
:幽霊かよw
「私がリビングに向かうと、そこには制服を着た、初めて見た嫁がいたのでした。」
:④リビングには初見のJK嫁がいた。
:…はあ?
:嫁なのに初見…?
:初見でどうやって嫁と見抜いたのか
「嫁は私の服を脱がして椅子に座らせ、食卓に私の大好物のオムライスを置いたのでした。」
チャット
:⑤服を脱がされて、オムライスを見せられた。
:…脱がせた?
:なんで脱いだ?
:というか抵抗しろよwww
:そういえばレノちゃんって普段は下着生活だよな
:確か削除された伝説の第13回配信で言ってたな
:誰も録画してなかったとかいうあの伝説の回か!?
「そして色々有って、私はそのオムライスを食べたのです。ふわっふわで美味しかったです。」
チャット
:⑥オムライスがふわっふわで美味しかった。
:急に感想じゃん笑
:色々ってなに…?
:何があったのだ…
「そして私は嫁と一緒にお風呂に入りました。」
チャット
:⑦嫁と風呂に入った。
:惚気か?
:ぺっ、結局惚気かよ
:はいかいさーん
:ビール美味かった
「そして嫁に全身を洗われた後、配信を始めて、ついに嫁が公認となる。」
チャット
:⑧嫁に身体を洗われて、公認した。
:いや、今まで本当に非公認だったのかよwww
:非公認の嫁と風呂に入る女
:というか未成年を風呂に連れ込むなよー
:それな
「はい、こんな感じのことが有りました。どうでしたか?」
チャット
:まとめてたけど、よく分からなかった。
:聞いてる感じ、嫁ちゃんヤバい奴じゃん
:ストーカー?
:通報するべき?
:レノちゃん大丈夫?
「あ、大丈夫ですよ。生きてますし。」
:生きてるから大丈夫らしい
:レノちゃんもなかなかにおかしい
:というかどうやって嫁ちゃんは家に行ったのか分からん
「あ、私初めて特定されたんです。それで、家にまでやって来ちゃいました。」
チャット
:特定ってマジ?
:今まで身バレすらなかったのに?
:というか特定からのリア凸って普通にアウトじゃね?
:やっぱり通報する?
「私は本当に大丈夫です。久しぶりに人の手料理も食べられたし、人からこんなに愛されたのも初めてなので、正直嬉しいです。」
チャット
:【悲報】レノちゃん既に手遅れ
:あぁ…レノちゃんがおかしくなってしまった…
:元々おかしかっただろ
:ついにモテたんだね…良かったね…
:レノちゃんが絆されてしまった…
:チョロインレノ
:【悲報】レノちゃん即堕ちする
「おいおまえら、喧嘩したいのか?ん?」
チャット
:ガクブル
:ごめんなさい!悪気はなかったんです!
:最初に言ったのはこいつ↑です!
:悪いのはこいつ↑で、俺は悪くありません!
:↑お前ら許さねぇ…
:ヒエッ
「まあこういうわけで嫁が出来ました。」
:嫁ちゃんヤバい奴っぽいけどおめでとう
:レノちゃんが元気ならそれでいいよ
:また二人で配信してね。
:お前らそれで良いのか(困惑)
:これからは百合配信が見れるなら良いかなって
:百合は世界を救う
:確かに
「はい、また今度二人で配信しますね。それでは今日はここで終わっておきます。
今から嫁と話し合わないといけないので。おやすみなさい。」
チャット
:お休み~
:ちゃんと寝なよー
:ハメを外しすぎるなよー
:レノちゃん食べられそう()
「いや、未成年としないから!」
「レノちゃん、私のことを受け入れてくれてありがとう。」
「うん。でも、私だったから良かったけど、他の人だったら警察呼ばれてたからね?」
「それは大丈夫です。レノちゃん以外にはしませんので。」
「それなら良いけど…。じゃあ寝よっか。うちにはベッド1つしかないし、一緒でも別に良いよね?女同士だし。」
「はい。大丈夫です。」
「うん。じゃあおやすみー。」
「おやすみなさい。…でもその前に、夜のお世話をさせて頂きますね。」
「夜のお世話?それってもしかして…。」
「はい。そのもしかしてです。でもレノちゃんは寝ててくださいね。私が全部してあげますから。」
「いや、それは遠慮しとくよ。もう今日は疲れたし。」
「でも、毎日1人でしてますよね?」
「…春乃ちゃん、どこまで知ってるの?」
「さぁ、どこまででしょう?お世話させてくれたら教えるかもですよ?」
「それ絶対教えてくれないやつじゃん…。」
「ということで、早速しますね!」
「ねぇ、ちょっと待って!あっ、ダメだってっ!」
お世話されました(比喩)。
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