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5.白兎理事長の説明その3




 「レムリア…って何?」


 美咲が愛菜に問いかけると、愛菜は素直に話始める。


 「ええ…それが私にも白兎様にも良くわからないのです…」


 今度は蓉子が兎の理事長、白兎に問いかけた。


 「それは何か呪文のようなものでしょうか…?」


 白兎は答える。


 「レムリアとは、どうやら太古の地球の事らしいのじゃ。儂らにわかるのはその程度なんじゃ、この事に関してはのう…。儂からはカミムスビに話しかけても応答は無いのじゃ。カミムスビから一方的に話しかけて来る事はあるがのう」


 美咲が白兎に聞く。


 「つまり、理事長も万能ではないって事ですか…?」

 「そうじゃ、儂は異形の造られたおもちゃのようなものじゃ…しかし、今日まで神の意志には従って来た。そしてそれは如何なる時も正しかった…。それだけは間違いなかろう」


 蓉子が愛菜に聞く。


 「愛菜さん、あなたは、その…カミムスビだったっけ?その神様に通信できるの?」


 愛菜が答える。


 「波多野先輩、私の事は愛菜とお呼びください。そうですね、通信というか、直接会話する感じでは無くて、スマホのメールでやりとりする感覚に似ています。祝詞(のりと)を唱えると変身できる、聞きたい事を思い浮かべると、メッセージを送ってくれる…そんな感じです」

 「そう…それで何かぶつぶつ話していたのね。それが祝詞と言う訳ね」

 「はい、祝詞とはつまり言霊で、その力で聖なるウィンドウが開く感じでしょうか?」

 

 今度は美咲が愛菜に聞く。


 「愛菜…でいいわね?、で、愛菜はその力をどうやって手に入れたの?」


 愛菜はチラリと白兎を見る。白兎は肯く、話しても良いという意味だ。愛菜は答える。


 「私は不思議な力が幼い頃からあったのです…いわゆる霊感が強いって言うのでしょうか…?あ、私、こう見えて忍者の一族です、えへ」


 美咲は驚き、愛菜に問いかける。

 「忍者って、もしかして、あの手裏剣使ったりするやつ?」


 愛菜は答える。

 「はい、その忍者で間違い無いと思います。それで修行をしている時、不思議な夢を見ました。兎が私を迎えに来る夢です。白日夢のようなものを見る事はたまにあったのですが、すごくリアルでした。しばらくして白兎様に会い、神子の話を聞きました。私はこの不思議な力は何かのために使わされたものと信じていましたし、すんなり受け入れる事ができました。そして私が赴いたのは福岡にある英彦山です。昔から修験道の新興が強い場所ですね。そこには凄く霊気というか、神気というか…そういう力が強かったのです」


 「愛菜は予知とかできたりするの?」


 今度は蓉子が愛菜に聞いた。


 「はい、自分の意思ではできません…突然夢を見たようにちょっと先の事が見えたり、寝ている時に夢でみたり、という感じです。他にも霊が見えたりも…」

 「えっ、幽霊見えたりするの…?」

 「はい、それは割と頻繁に見えます…」

 「マジ…?」


 美咲と蓉子は武術を学んで、普通の人間が相手なら怖いとは思わないだろう。幽霊の類に関してはさすがに怖いと感じてしまうのは、女子高生らしい…。


 再び愛菜が話を続ける。


 「…それで、私は英彦山でさっき白兎様がおっしゃった神聖な存在を感じました。でも…それは神聖というよりも、温かく、とても慈愛に満ちた感覚でした。私はその力に身を任せました。そしてその感覚は今まで受けたことのない、地球の愛とでも言うのでしょうか?とても優しく、大きな…全てを包むような感じでした。私はその優しい神気を受け、初めてカミムスビの神と会話しました。あなたの優しさはとても大きく優しい、と私から伝えてみると、頭の中に優しい笑顔のような…カミムスビの神が微笑んでいる感覚がわかったのです。私は嬉しくてその事を白兎様に伝えました。白兎様も喜んでくれて、私に祝詞も教えて下さいました。そして祝詞を唱えると、あの神気が私の周りに発生し、あの姿に変身することが出来るようになったのです」


 美咲と蓉子は愛菜の言ったことに嘘は無いと感じていた。

 美咲は愛菜と白兎に疑問をぶつける。


 「愛菜と理事長の言ってる事に嘘は無いと思います…でも、なぜ私と蓉子なのでしょうか?そして(穢れ)とは何なのですか?」

 蓉子も私も聞きたいと美咲に同意する。今度は白兎理事長が答える。


 「そうじゃな…その質問は当然じゃ。儂は2人に儂らの事を信頼して貰えるように儂らの個人的な事を話した。そして今度は、2人に神子になって貰う為の話をする。まず(穢れ)についてじゃな…奴等はこの地上のあらゆる場所に存在している。簡単に説明すると、神気に反発する邪気の塊じゃ。邪気は神気よりも遥かに多くの場所に存在しておる。普段は何も起こらないのじゃが、千年に1度だけ地上のあらゆる邪気が活性化するのじゃ。溜まっている邪気…それが即ち(穢れ)じゃ。長い間邪気が溜まると災いを起こす。その邪気を祓って来たのが3柱の神の神子なのじゃ。そしてその(穢れ)は、今最も活性化しておる。神気に祓われるのを阻止する為、神気あるところを邪気で満たそうと集まる習性があるのじゃ。その為に神子の周りに(穢れ)は集まる。いくら神聖な場所でも、邪気に満たされ続ければ、その場所は穢れた場所に変わってしまう。だから、神聖な神社の前では手を洗い、口をすすぐ…。それは穢れを祓う為じゃ、わかるな?」


 美咲と蓉子は白兎理事長の話に肯く。また理事長は話を続ける。


 「そして神子には、ある素質が必要でのう。それが、正義、慈愛、勇気じゃ。愛菜には慈愛の素質が高く、それを感じる力も強かった。君達が最初会った時は良い感覚は受けなかったじゃろうが、それは愛菜の優しさなのじゃ…。最初にあまり良い印象を受けなければ、普通に接するだけで逆に良い印象を受けるものじゃ。さっき愛菜が話した時2人とも嫌な印象は持たなかったじゃろう?」


 美咲は、そう言われてみれば愛菜とは深く関わりたくない感覚を持っていた。単純に感じの悪い奴と…。でも確かにさっき話してくれた愛菜には、逆に好感が持てる。さらに、普通に話せる相手に変わっていた。不思議だけど、確かに嫌味は消えている。蓉子もそう感じたのか、美咲にはっとした顔を見せる。


 「最初に嫌な印象を相手に与えるのは、なかなか勇気がいる事じゃが、相手をを思っての事じゃ。そういう事を愛菜は普通に出来る、これは才能じゃのう。そして見たところ、立花君には正義の、そして波多野君には勇気の素質が強く感じられるのじゃ。突然の話で申し訳ない事じゃが、2人とも神子になって貰えるかのう?」


 蓉子が美咲に声をかける。


 「美咲、これはやるしかないんじゃないか?」

 「でもそんな簡単に決められる事じゃないわよ…」

 「何を迷う必要があるの?私達は何の為に今まで武術を学んで来たの?今こそ私達の力を使うべきよ!」

 「お蓉…そっか、わかった。私も神子になって、もっと自分を鍛えてみる」

 「真面目か!まあ、でもそれが美咲らしいけどね」


 白兎理事長は2人を肯きながら見ている。そして愛菜も慈愛に満ちた優しい笑顔で微笑んでいた。





 

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