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4.白兎理事長の説明その2




 兎の理事長は2人にわかりやすく伝えているが、内容について来れているか確認しながら話す。


 「ここまでの話は良いか?」


 美咲と蓉子は無言で頷く。


 「そうか、とてつも無い話だと思うが、これからが大事な事じゃ、もう少し付き合ってもらうぞ。…そうそう、この地秋田に辿り着いた儂は衝撃を受けたのじゃ…。」


 「それはどんなものだったのですか?」


 蓉子が理事長に質問する。美咲も聞きたかったので、黙ったまま肯く。理事長は話を続けた。


 「うむ、この地…その当時は九州方面を中心に弥生人と後に呼ばれる渡来人の文化圏があったのじゃが、東にはこの東北を中心に縄文文化がまだ主流だったのじゃ。儂はこの地の人々の生活や文化が本当に素晴らしい事に衝撃を受けたのじゃ…」


 美咲は縄文文化と聞き、原始人的な暮らしを想像してしまった。顔に現れていたのか、兎の理事長は美咲を見て話す。


 「ほほほ、縄文文化と言って、原始時代のようなものを思い浮かべたかのう?じゃが実際のところ全然違うのじゃ。この地には縄文の頃の遺跡が多いが、弥生人の文化に負けない程の建築技術を持っておった。それは見ればわかるじゃろう?それだけではなく、儂はこの地に住む人々は争いを起こさず、自然と共存し、家族や隣人を愛し、それはそれは素晴らしい生活を営んでいる事がわかったのじゃ。儂は宝石のようなこの地を絶対に守らねばならぬという強い使命感を持った。何故かというと、大陸は何百年もの間、ずっと戦争を続けておったのじゃ。春秋戦国時代などと後に呼ばれようになったが、当時一番苦労を強いられたのは、戦っている者どもよりも、一般の民草じゃ。普通の暮らしをしていた者達は何よりも平和を望んでおった…。戦争にうんざりしておったのじゃ。しかし、ここ東北は一切の争いが無く、人々は安寧に暮らしていた。こういう世界を儂は求めておった」


 美咲は教科書には載っていない話を聞いている。少し信じられない事だが、兎の理事長の話を最後まで聞きたいと思っていた。蓉子も同じように感じているだろう。理事長は続けた。


 「儂は仲間と合流し、この地を守る為に行動を始めた。その頃儂は別の名前を名乗っておった。アマテルという名じゃ」


 美咲と蓉子は驚いて、聞き返す。


 「アマテルって、もしかして天照の事ですか?」

 「天照大御神…?」


 兎の理事長は答える。


 「うむ、そんな呼び方もされておるようじゃな」

 「待って下さい、天照って確か女神じゃ…」

 「そうです、それが理事長だなんて…?」

 「そうじゃな、当然そう考えるじゃろう。じゃがのう、誰がそう決めたのじゃ?」

 「え、それは、誰かに聞いて…ね、お蓉」

 「はい!記紀に書いてあります」

 「ほう、そう来るか、しかし記紀に書いてある事はどれだけ正しいかのう?儂は書かれる前から存在しておるが、東北の事が記紀に書いてあったかのう?」

 「う、確かに…」

 「2人とも、もう少し話を聞いてもらえるかのう?」


 美咲と蓉子は肯く。兎の理事長は話を続ける。


 「儂はアマテルと名乗り、儂の探していた仲間は物部八十氏(もののべのやそうじ)と名乗っておった。儂の右腕とも呼べる存在じゃ。儂らは一度中つ国に帰り、必要な物や物資を集める事にしたのじゃ。じゃが、その頃持っていた物資が底をつき、他国に応援できる状態ではなかったのじゃ…。そこで儂は一計を案じ、大陸に戻る事にした。皇帝に資金や物資を手配してもらおうとしたのじゃ。死を覚悟したが、皇帝はかなり身体が弱っておって、儂の不老不死の薬を何としても欲しかったらしい。そして霊薬を持ち帰る事を約束したが、皇帝は間もなく亡くなった…。儂はこの蓬莱の国、日本で生きる事に決めたのじゃ。その頃この日本の東部は(大倭日高見国(おおやまとひだかみのくに))と呼ばれておった。儂は中つ国を八十氏にまかせ、日高見国に皇帝からもらった物資を届け、しばらくこの地に留まった。しばらく過ごすうち、この地に神聖な力がある事に気づいたのじゃ」


 「神聖な力ですか…?」


 美咲は兎の理事長に問いかける。続けて蓉子も問う。


 「もしかしてさっき愛菜さんが使った…」

 「そうです、神気です」


 ずっと黙ったままだった愛菜が声を掛ける。美咲と蓉子は愛菜の方を見る。兎の理事長は短い前足を愛菜の方に向け伸ばす。言葉を遮る仕草のようだ。理事長は話を続けた。


 「うむ、じゃが愛菜のものとは違うものじゃな。儂は一族の者にある場所に案内された。その場所はこの学園のすぐ近くにある黒又山じゃ…。その当時はクロマンタと呼ばれておった。神の住む場所と言う意味じゃ。儂は初めてその場を訪れた時に、その場にある存在を感じたのじゃ。儂は元々方士でな、呪術や天文などを学んでおって、ある程度術も使えた。いわゆる仙術じゃな。日本では陰陽師などと呼ばれ、術を使う…その類のものじゃ。そしてその場で術を使ってみると、その大いなる存在を確かに感じたのじゃ。その存在こそが3柱の神の1つである(ミナカヌシ)じゃ」


 美咲は学園近くに黒又山があるのは知っていた。また、そこが日本のピラミッドと呼ばれていることも聞いた事があった。理事長は続けて話す。


 「儂は存在を感じたのじゃが、その存在が何であるかはわからなかった。しかし、一瞬の出来事じゃったが、ミナカヌシは儂に伝えてきたのじゃ。ビジョンのような夢のような映像を儂に見せたのじゃ。3人の神子が黒い影と戦う映像じゃ…。儂は咄嗟にこの3人を探さなくてはならないと分かった。黒い影とはさっきの(穢れ)という奴等じゃ」


 美咲は兎の理事長に聞く。


 「もしかして、その3人の神子って私達ですか…?」

 「うむ、正しくもあり、間違いでもあるのう」


 蓉子も問いかける。


 「そんな、どういう意味ですか?」

 「まあ焦るでない、つまりじゃ」


 兎の理事長は更に続ける。


 「儂がその時探したのは先代の神子じゃ。君達はその次の神子じゃな。気の遠くなるような時が過ぎておるが、奴等(穢れ)どもは千年に1度現れるのじゃ…。何十万年もそんな事が繰り返されておる。儂は先代を探し出した時には老齢になっており、3人を3柱の神に合わせた時にはもう寿命じゃった…しかしのう、この愛菜に加護を与えておるカミムスビの神は、慈愛と生産の神でのう、儂をその力で蘇らせたのじゃ。それが今の儂じゃがのう…。その時に儂は本当に不老不死になったのじゃ。じゃが、この身体はロボットのようなものじゃな。有機物で作られてはおるが、その動力はまるでわからんのじゃ…。気がついたらこうなって(スクナヒコナ)と名乗る事だけ覚えておったのじゃがな…」


 美咲は愛菜に聞いてみる。


 「愛菜さんはその仕組みとかわからないの?」


 愛菜は答える。


 「それが、私にもわからないのです。カミムスビの存在は感じ、力も出せるのですが、聞こうとすると一言だけ伝えて来ます。(レムリア)と…」


 


 




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