表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

妹が色々なネタを突っ込んで来て困っている件について 2

作者: シロガネ

来ました。第2弾。


今回は球技大会の話を。

競技はソフトテニスです。はい。何度も言います。ソフト『テニス』です。

間違ってはいけません。

「いっけー!」

「負けるな!」


 そんな声がグラウンドや体育館内から聞こえてくる。時々女子生徒の黄色い声が上がる。



 夏休みに入る前の期末試験が終わり、來間周一が通う高校では待ちに待った球技大会が始まった。


 人数が多いと言うことで3種目で争われる。

 複数人で行われるバスケットボール、ソフトボール。

 個人として行われるソフトテニス。


 バスケとソフトは優勝すればクラスとして表彰される。それはソフトテニスも同じく、クラス代表として参加し、優勝すればクラスが表彰される。

 そのためテニスは部活をしている人、もしくは経験者が参加することが多い。


 もちろんバスケットボールやソフトボールでも部活をしている者が参加することがあるが、バスケットボールでは部活をしている者はコート内に3人までしか入れないなどのルールが存在するなど、ある程度楽しくできるようにはなっている。


 まあそんなことしたとしても優勝できるのは毎回3年生と自然になってしまうが。




 そんな中、周一は迷った末いろいろと見て回る。バスケットボール。ソフトボール。ソフトテニスと。


 周一がソフトテニスのコートへと足を進める。そこには問題児が1人いた。




 さかのぼること、球技大会が行われる前日。

 周一と、周一の妹である椎名はこんな会話をしていた。


「周一。明日どの競技に出るの?」

「俺か? 俺はソフトボールだ」


 テストの回答用紙がすでに帰ってきたと言うことで、どこがどのように間違ったかの確認作業を行っている周一に、彼のベッドで横になってマンガを読んでいる椎名が尋ねた。


 風呂から上がったばかりと言うことで、湿った髪の毛をタオルで包み、頬を上気させた椎名は大変色っぽい。

 だが周一は兄。妹に欲情することはない。というより見慣れている感じだ。


「え? まじ?」

「ああ。まじだ。椎名は?」

「私? ソフトテニスだよ」

「嘘だろお前! 経験ないくせに!」


 周一が解答用紙から目を離して椎名の方へガバッと振り返る。

 彼の言う通り、椎名は経験がない。現役もしくは経験者が集まる中に未経験者が入るなど無茶としか言えない。


「大丈夫大丈夫! 私強いから!」


 そういうと椎名は周一のベッドから起き上がると部屋から出ていこうとする。そんな椎名に周一は半分笑いながら言った。


「嘘つくな。絶対負けるぞ」

「大丈夫。だって……」


 立ち上がる椎名に周一がそう言う。

 椎名はその間に周一の部屋の扉を開けて外に出ようとしていた。

 そして振り返ると――


「私負けないので」


 どこぞのドクターに似た言葉を発すると周一の部屋から出ていった。




 時は戻り、周一がソフトテニスのコートへ足を運んだ瞬間、一際大きな歓声が上がった。


「見ろよあの1年女子! 尋常じゃないぞ!」

「あれで初心者かよ!」


 ソフトテニスには現役もしくは経験者が集まる。にもかかわらず、初心者が参加。しかもそいつは1年生。

 周一は嫌な予感がした。


 人をかき分けてコートを囲むネットに近づくと、その女子を見る。

 と同時にorzの体勢を取りそうになる。もちろんこらえた。


「まだまだだね」


 そこにはラケットを担ぐようにして相手選手を挑発する1年女子――椎名がいた。


 点数を確認。見事に圧勝していた。

 もちろん椎名が。

 しかも後3点で勝利が決まる。


 相手選手は見るからに3年。

 周一は知らないが、彼女は三野奈津美(みのなつみ)。小学生の時からテニスをしており、この高校では女子ソフトテニスのキャプテンを務めるほどの実力者。さらにはプロの人自らオファーしに来るほど。

 それに加えて顔も整っており、高嶺の花ともいわれている。もはや届く人などこの世にはいないのではないかと思うほど。



 どうやら三野のサーブのようで、ボールが三野にわたる。

 ボールを地面にバウンドさせて手に取ると、天高く投げ、落ちてきたところを大きく振りかぶったラケットで打つ。

 それを椎名は現役選手のように見事なフォームで弾き返す。


 そのボールは再び三野のコートへ。

 椎名は緩く打ち返したために前の方へ落ちるボール。それにいち早く気が付いた三野がダッシュ。


 ボールは三野のラケットに吸い込まれるように、地面にぶつかって跳ねる。はずだった。


 ボールは跳ねることを拒否するかのようにバウンドせず、そのうえコロコロとネットのある方向へと地面を転がった。


「「「「「来た! 零式ドロップショット!」」」」」


 どこぞのテニスのプリンセスに出てきそうな名前が周囲から上がる。


 今行われているのはソフトテニスである。決してソフトテニヌではない。


 再び三野のサーブ。あと2点で勝負が決まる。


 再び相手がボールを高く投げ、落ちてきたところを叩く。

 椎名が撃ち返す。それを三野が撃ち返す。ボールが椎名側のコート端へ向かう。椎名はそれを撃ち返そうとする……が。


「何している!」


 誰かが叫んだ。というのも椎名がラケットを振ったとしてもどう見たって少なくともラケット3本分届かない。


 三野はにやりと笑った。

 だが驚くべきことが起きた。


 まるで椎名に吸い込まれるかのようにボールが軌道を変える。

 椎名は1歩も動くことなく、ボールを撃ち返した。


 ボールはコート隅へ向かう。それを打ち返す三野。

 今度こそ椎名側のコートの隅へ向かうボール。


 だが再び事は起きた。

 まるでボールが椎名に引き寄せられるかのように軌道を変える。


 それは相手が椎名側のコートへ何度もどこへでも打ち返しても変わらなかった。

 それはプレイしている三野だけではなく、観客も次第に理解した。


「何だあれは! ボールが引き寄せられているぞ!」

「まさか噂に聞く、『手塚ゾーン』じゃないか!」

「いや、あいつの苗字は來間だ! つまりあれは『來間ゾーン』だ!」

「『來間ゾーン』かっけぇ!!」


 手塚――『來間ゾーン』が周りの観客に広がる。


 何度も走らされる三野。対する椎名はその場から動いていない。

 結果は明らかだった。疲れた三野がボールに追いつかず、椎名に点が入る。勝利まで残り1点。


 幸いにも隕石となったボールが恐竜を絶滅させることはなかった。

 わざわざ隕石となったボールに絶滅させられるために蘇らずに済んだ恐竜たち。

 きっと恐竜達はホッとしているだろう。



「すっげー! 椎名様! 俺と付き合って下さい!」

「馬鹿野郎! 椎名様と付き合うのは俺だ!」

「椎名様! 俺を罵ってください!」

「椎名様! 俺を踏みつけてください!」

「ちょっと男子うるさい!」


『來間ゾーン』が引き寄せたのはボールだけではなかったようだ。

 椎名を見ていた男子生徒が椎名に引き寄せられる。


 それを冷たい目で睨む女子生徒たち。


「そうよ! 椎名お姉様と付き合うのは――いいえ。結婚するのはこの私よ!」

「ちょっと待ちなさい! 椎名お姉様と結婚するのはこの私よ!」


 ついでに女子生徒も引き寄せられたようだ。


 そんな様子を見て頭が痛くなる周一。

 周一はどうやら頭痛を引き寄せたらしい。


 さすが來間家。兄妹そろって『來間ゾーン』を使えるようだ。



 ラスト1点。三野はボールを高く投げ――なかった。その代わり……。


「あんたには勝てないことが分かった。だから最後に私が今まで以上に本気を出す。悪あがきだって分かっている。だからあなたも本気を出しなさい!」

「わかりました! その勝負、受けて立ちます!」


 両者声を張り上げる。


 三野がサーブを放つ。

 それを椎名が撃ち返した。


 三野が普通に打ち返すと周囲が思った瞬間、それは起きた。


「波動球!」

「「「「「!?」」」」」


 その言葉を聞き、周囲が驚く。


 ボールが当てのラケットに当たる。

 それを全力で打ち返す三野。ラケットからボールが離れた瞬間、ボールが煙を上げながら燃えた。


 火の玉となったボールが椎名に向かう。


 それを見て椎名は……口角を上げ笑った。


 椎名はボールをラケットでとらえる。ボールの勢いが強すぎたためか、ラケットが若干押される。だがだが椎名は諦めない。


 両手でラケットを持つと、全身に力を入れる。そして――


「波動球!」

「「「「「!?」」」」」


 三野と同じ技を椎名が繰り出した。

 燃えるボールが三野へと向かう。


 一瞬三野が驚くが、すぐに対応。

 ラケットを振って椎名の打ったボールをラケットでとらえ、『波動球』で打ち返す椎名に打ち返す。


 そしてそれを椎名が再び『波動球』で打ち返す。


 もはや頂上決戦。いや、頂上戦争である。

 神々の闘いと言ってもいいだろう。それほどまでに椎名のいるコートは異常だった。

 間違えである。椎名と三野にとっては普通のことであった。



『波動球』での打ち合い。それは長く続くように見えたが、長くは続かなかった。


「くっ!」


 三野が苦しそうな表情をする。

 苦しそうな表情をするが、『波動球』で椎名の方へ打ち返してきた。


「んっ!」


 歯を食いしばって打ち返そうとする椎名。それでもわずかに押される。

 尚一層力を入れる椎名。彼女の腕にはもはや感覚がなかった。


「っああぁぁぁ!!!」


 声を出しながら波動球を打つ。


 それが三野のラケットへ吸い込まれる。


 それを打ち返そうとする三野。だが……


 カランカランッ


 ラケットが音を立てて地面に落ちた。

 ボールは後ろのネットに音を立ててぶつかり、地面へと落ちる。


 椎名同様、彼女の腕もまた、限界を迎えていたのだ。


「勝者、1年來間椎名!」


 その瞬間、周囲が歓声に包まれる。


 だが椎名はそれに答える前に、相手コートで女の子座りをしている三野へと駆け寄る。

 そこで誰もが驚いた。


「ごめんなさい! あなたの綺麗な手をこんなにしてしまって」


 三野選手の手を取って今にも泣きそうな表情をする椎名。

 それを三野は目をぱちくりして見る。


「なんで……謝るの?」

「もし、私が諦めていたらこんなことにはならなかったのに!」


 人の域を出たボールを打ち出す三野の手は皮が破れており、痛々しそうだった。

 だが。


「そんなこと言わないで! あなたの手も同じような物でしょ!」


 そう。椎名の手も似たような物だった。

 だが。


「私は大丈夫! あなたの手の方が大事よ! 始める前はあんなに綺麗だったのに、私のせいで! 本当にごめんなさい!」


 そういう椎名。

 ラケットとは別の物が三野から落ちる音が聞こえた。


「気にしないでください、椎名――いいえ。椎名お姉様!」


 彼女もまた、『來間ゾーン』に引き寄せられたのだった。




 そんな中、男子が試合をしているコートでも、ちょっとした事件が起きていた。


「ねえ手塚君!」

「なんだい?」


 手塚という苗字の選手に言い寄る男子生徒。

 その男子生徒も表情は恋する乙女その物だった。


手塚と呼ばれた少年は、それはもう、イケメンだった。


「君は椎名さんの方には行かないよね?」

「僕には君しかいないよ」

「キャッ!」


 手塚にそう言われ嬉しそうに喜ぶ男子生徒。


 それを見た男子生徒が、近くにいた男子生徒に言った。


「見ろよ。手塚のやつ『手塚ゾーン』で男子を引き寄せてやがる」

「ああ。さすが『手塚ゾーン』だ。俺もあいつに引き寄せられそうだぜ」

「え? 俺もう引き寄せられているかも!」


 男子を『手塚ゾーン』で引き寄せる手塚。彼は男子からモテモテであった。

 その代わり。


「うわー。私無理だわ」

「私も」


 同時発動していた『手塚ファントム』によって手塚の近くから離れていく女子生徒。

 手塚よ。それで良いのか……




 ちなみにだが、椎名はこの後も数多くの技――つばめ返し、零式サーブ、白鯨、白龍、來間印バズーカ、來間印のステップ、COOLドライブ、レーザービーム、來間ゾーン、來間ファントム、無我の境地、などなどなど。

 数えられないほどの技を使って順調に勝ち進み優勝。

 圧倒的な力を使い、1年生ながらも優勝したことに全校生徒が驚いた。



 こうして普通の高校と同様の、普通な球技大会が幕を下ろしたのであった。






 これは余談であるが、気になる人がいるであろうから追記する。


 椎名がお姉様と呼ばれ続けられたのは、彼女が卒業するまで。

 卒業式の日には、恋人になってもらおうとする1.2年男子が殺到。また踏みつけてもらおうと花道に寝転がる男子もいたり。


 もちろんそんなことを椎名をお姉様と慕う()()が許すわけがなかった。

 あらゆる手を使って恋人になろうとする男子や(変態)紳士たちから椎名を守った。守り切った。さすが妹たちである。



 そんなありふれた卒業式の光景は、椎名の初めての舞台である1年生の時の球技大会と一緒にいつまでも語り継がれるのであった。

読んでいただきありがとうございました。


『テニス』の描写って結構大変でした。

動画で調べたり云々……


『來間ゾーン』本当に良いですね!


『手塚ゾーン』は結構です。お帰り下さい。

尚、一部の人には好評な模様。



第3弾は何にしようか検討中。


波動砲を撃つ宇宙戦艦を椎名に乗ってもらおうか。

仙人が編み出した、体内の潜在エネルギーを凝縮させて一気に放出させる技でも撃ってもらおうか。

それともテニスどうよう、人かどうか怪しい人たちが行うバスケでもしてもらおうか。


あと、短編ではなく連載にした方がいいですね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ