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1. プロローグ 貴族都市

 貴族都市――

 その街はアーガルムと呼ばれていた。隣国から遙かに離れた広大な土地にぽつりと孤立する、豪奢ごうしゃに着飾った富裕層の街だ。

 外界を拒絶するように高い壁が月明かりすらも遮る。

 時刻は宵をとおに過ぎて、まもなく日にちが変わる時間帯。明日が休日だからか、豪奢な作りの屋敷は喧騒けんそうに包まれている。

 屋敷から漏れ出た光は混ざり合い、特殊な効果でも施しているのかとばかりにアーガルムの街を栄えさせている。


 無邪気に騒ぎ、横柄に酒を飲み、彼らはさかなとして噂話にうつつを抜かす。

 品切れたソーセージの代わり。その程度の小さな噂。

 しかし、一人の男が真剣な眼差しで噂話を深刻なものへと早変わりさせる。アーガルムのどこかにいる護衛人(ガーディアン)は不殺の力を持っている。人を傷つけない、欠陥品であると。さぞかし心優しい人間なのだろうと、男は笑む。

 退屈そうに聴いていた別の男が「面白くない」と言わんばかりに酒を飲みながら呟く。


「不殺の護衛人ガーディアン? そんなもの、存在意義なんてあるのかね?」


 この街で護衛という言葉の意味は、ただ護るという意味では通じない。人を殺す力を持っているからこその護衛人ガーディアン。人を殺せぬ護衛人ガーディアンなぞ、夜な夜な一人でトイレへ行けない大人のようなものだ。

 馬鹿馬鹿しい話だが、そんな噂すらも肴になってしまうほど、この街は噂に事欠かない。


 それが貴族による貴族のための街――アーガルムだ。


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