表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界人~檻中の英雄~  作者: リジア・フリージア
序章 第二幕の始まり
8/53

序章7話 騎士団長「お前らが魔王倒せば良かったんじゃないのか?」

 俺を追い抜き先に進もうとしていたティリアスが馬の踵を返し、馬から降りて俺に対峙すると腰に差した剣を抜き放った。


「避けられないか……」


 そう言えばティリアスは騎士の直感と言うスキルを習得したな。ゲームでは背後からの攻撃も確率で回避するって言う能力だが、この世界じゃ普通に直感として機能しているのか? 怪しい奴が俺しかいなかったからか……まぁ、どっちでも同じか。

 いつの間にか戦闘マップのティリアスの表示が赤に変わっている。そして、俺を囲むように赤のアイコンが大量に出現している。それらは全員レベル28~30、最大レベルが50のこの世界では結構な実力者だと言える。ティリアスの部下か?


「大人しく捕まってはもらえないか?」


 そう問いかけて来るティリアスのレベルは37、ゲームならこのレベルの奴をバランスよく八人用意すれば戦略次第で魔王にも勝てるレベルだな。本来なら勇者と共に魔王に挑んでいる訳だから、そのレベルに達していても不思議じゃないか?


「なぜ捕まる必要がある? それより聞かせろ、誰がシィルを毒牙にかけたって? 嘘の情報なら良いが、もしそんな事をした奴が居るなら……殺すぞ」


 威圧スキルを発動させる。近接戦闘を早々に止めた俺には目の前の相手を委縮させる威圧までしかスキルを所持していないが、俺とのレベル差がこれだけあればティリアスの受ける威圧は周囲の俺への囲いを狭めて来ている奴らも感じているだろう。そこはゲーム程明確に効果範囲が区別されていないからな。


「何を言っているんだ、お前がやった事だろう?」


 意図したとおり威圧を警戒して周囲の敵の包囲が縮小を止めている。ならもう少しティリアスと話をするか。


「シィルに確認は取ったのか? 姫の証言か? あの三十路なら自分から夜這いに来るビッチだろうが、あんなの頼まれても手ェ出さねぇよ」

「お前、姫様を馬鹿にするのか!? 不敬罪で……」

「黙れ! 三十路はどうでも良いんだよ! シィルは大丈夫なのか! 今回の件を利用して豚共に傷つけられてねぇだろうな!? お前がこのまま事実を確認せずに俺を捕らえようとするなら……滅亡を覚悟しろ」


 本気になればこの国を滅ぼす位の事はできる、とりあえず王都を壊滅させれば良いんだろ? 奥の手使って魔法を暴走させれば一発の筈だ。本当にやっちまうとマジの魔王扱いを受けるんだろうが……。


「うおおおおおおおお!!」


 周囲の奴らから堪え性の無い奴が出て来たな。威圧の気に当てられて発狂したか?

 丁度いい見せしめに盛大に吹っ飛んでもらう。突き出して来た短剣を予測を使って回避して、その伸びた腕を掴み勢いを加速させるように振り回して別の奴に当てる。包囲網から二人結構な距離を吹っ飛んで行った。


「お前はまともだって信じてる……よく考えて俺を追うかは決めるんだな」


 ティリアスにそう言い残し、その場で隠密(ハイド)を使い二人吹っ飛んで隙のできた包囲から離脱する。

 吹っ飛ばした二人が抜けたことで出来た隙を……突いて包囲を抜けるのは止め! 俺の進行方向に突き出された剣を咄嗟に抜いた剣で弾く。


「真偽はしっかりと確認しよう。だが、確認するまでは君への疑いは晴れていない。無実だと言うなら大人しく捕まって貰おう」


 ティリアスから逃げるのは無理か……騎士の直感、厄介だな。隠密も壊れ性能だが、ゲームじゃなくなってる事で他のスキルまで厄介になっているものが有るようだな……。

 そして、俺の隠密はティリアスの剣を弾いた動作を攻撃と見做したようで解除されている。


「面倒……」

「いや、面倒って」


 面倒なのはお前のスキルとこの世界だ。大体俺のやってない事でしょっ引こうってのが間違ってるんだ。証拠がねぇなら任意同行? こっちが断ったら終わりだろうが。異世界にそんな法は有りませんってか?


「俺自身が俺を勇者だと思ってないから勇者を騙ったって言うのは間違いないが……」


 あ、そうなると嘘ついたって事にはなるのか……いや、でも俺勇者の位置で召喚されてるしセーフ?


「魔王を殺したのは事実だぞ、捕まえられると思ってるのか?」


 ま、まぁ功績は勇者だし大丈夫大丈夫。


「でも、今の君は一人だろう?」


 ん? ずっと一人だが? 何を言ってるんだ?


「魔王を倒したと言うのが本当だとしても、今の仲間の居ない君一人を捕らえる事ぐらい私たちなら可能だ!」


 ん? んん?

 ああ……こいつ、俺が仲間と一緒に魔王を倒したって思ってるのか? まぁ、普通魔王なんて呼ばれる奴を一人で倒したなんて思わないか。

 だが残念ながら魔王を撃破したのは俺一人だ。隠密からの不意打ちって邪道も邪道だけどな。それでも、お前らを相手にするぐらいは俺一人で十分だと思うぞ。


「試してみろ……」


 無理なんだけどな……。

 俺に仕掛けて来る奴を一人づつ命中予測で回避して叩きのめしていく。回避、転がす、回避、転がす、回避、転がす、回避、転がす……最後はティリアス一人になった。


「早く手当てした方が良いぞ」


 多分この世界でも所々ゲーム的な面が働いているから状態異常戦闘不能って感じだろうが、打ち所が悪かった奴とが居たらそのまま死なない保証は無い。


「馬鹿な……勇者とはこれ程なのか……」


 実際に俺が一人で魔王を撃破した所を見てない奴には分からないだろう、嘗めてかかられるのも仕方ない。まぁ、見てても分からないだろうが……。


「殺しちゃいない、俺が手加減できる意味分かるよな?」


 それだけ実力差が有るって事だ。俺の場合は上限突破しているレベルが有るし、フラッシュタスクを使用した上での命中予測とダメージ予測で攻撃は回避して、丁度ライフが無くなる威力に調整して攻撃しているからこいつ等からしたら反則もいいとこなんだがな。


「これだけの実力、勇者を騙ったという事自体が間違いか姫への未遂行為に関しても真偽の確認が必須か。それはそれとして、私とも手合わせ願おうか」


 ティリアスの中で俺への疑いはほぼ無くなっているようだが……やり合う気満々か。ゲーム通りのティリアスの性格ならそうなるか……。


「(戦闘不能の奴等が)死んでも知らねぇからな……」


 既に倒している騎士共よりもティリアスの方がレベルは高いからティリアスが死ぬような事は無いだろうが、それだけ俺とティリアスのレベル差も少ないって事だ。そうなると加減するのが難しくなる。本気でやると確実に殺しちゃうから論外として、効果が壊れてる感じのするスキル持ちに加減するのか……結構大変じゃね?


「行くぞ!」


 ほらぁ! 騎士の直感のせいか、何度シミュレートしても命中予測値が50%を下回らない! 五分五分で回避なんてできるか!

 先ほどティリアスの突きを弾いた剣で攻撃を受ける。チッ、隠密状態でないとこっちの迎撃も五分を上回らないか……全部剣で受けるしかないな。

 そんな状況から俺とティリアスの打ち合いが始まった。フラッシュタスク、剣で受ける場合命中予測で100%になる動作をシミュレート、剣で受ける。五分の反撃。回避はされていないが、同じく剣で受けられる。繰り返し繰り返し……。

 めんどくせぇ! 俺の専門は遠距離攻撃だぞ! 遠距離武器の方に金使ってるから今の剣は投げ売りのしょぼい奴だし! ティリアスの騎士剣と打ち合っていると折れそうで怖いんだよ!

 今までずっとフラッシュタスクと命中予測に頼って来た附けか……ティリアスのような感が俺には無い、そのせいで結構なレベル差が有るのにこんな打ち合いになるんだ。


「あ……」


 そうだ、ティリアスの攻撃を当たらないようにする方法が有るじゃないか。

 近接戦なんて相手の土俵に立っているからいけないんだ。俺の戦闘スタイルは遠距離から一方的に殺るか隠密での奇襲だ。ティリアスに隠密が効かなかろうが、距離を取ってしまえば攻撃は当たらない。

 そして、能力的には俺の方が速い。

 そうと分かれば、ティリアスの剣を受けた直後に反撃の代わりにバックステップで後ろに下がり剣を鞘に納める。訝しむティリアスが追って来ない内にアイテムボックスから弓と矢を取り出して換装する。俺が何をするか気づいたティリアスが慌てて距離を詰めて来るが、俺は更に後ろに下がっている。それに、弓に矢をつがえて狙いをつけて放つこの動作は、魔王を倒すまで散々やって来た動きだ。今回は必中(ロックオン)貫通(ピアッシング)のスキルを使っていないから準備時間は更に短い。

 まぁ、当たらないだろうが……目的は足止めだ。ティリアスが矢を弾き近づいて来ようとする所に更にもう一発撃ち込む。ゲームだったら一度放てば相手の手番だがそんなもんを待つ必要も無い。ティリアスが追って来れないように次々と矢を撃ち込みながら更に距離を取る。

 ほどほどに距離が開いた所で反転して全力で走りだした。


「あ、待ってくれ!」

「んじゃぁな~! さっさとその転がってる奴ら治療してやれよ~」


 待つわけねぇ、ティリアスを殺さずに無力化するのは面倒なんだよ! 魔物や魔王関係の奴ら相手してる方が遠慮しなくていい分楽だ。

 戦闘マップで確認するとティリアスが追って来る様子は無い、やっと諦めたか。まぁ、あいつの性格なら周りの仲間を放り出してまで追っては来ないよな。最初からこうすればよかった。

 ティリアスの奴、この後戻ってシィルの無事を確認をしてくれればいいが……大丈夫だろう、あいつは勇者の相棒になれる器の持ち主だからな、今はあいつシィルの事は任せておこう。ほとぼりが冷めた頃確認しに来てもし……、その時は本気を出すとしよう。

 とりあえず、今は行ける所まで走ろう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ