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異世界人~檻中の英雄~  作者: リジア・フリージア
序章 第二幕の始まり
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序章5話 認識を改める「目的地を決めるか……」

 何事も無く王都を脱出した俺の道中は気楽な旅行気分だった。それも、魔王を倒す過程でレベルの上限に達してしまった今の俺に恐れるものなんてほぼ無いと言っていいからだ。

 この世界に来た最初の頃は魔物との戦闘に恐怖して早々に近接戦闘を諦めたが、魔物の見た目にもだいぶ慣れた今なら近接戦闘を練習してみるのもいいかもしれないな、とか考えながら戦闘マップで敵を警戒しながら街道を進む。レベル的にこの辺りの魔物に不意打ちされようが殆どダメージは殆ど入らないのだが、痛いものは痛い。もう癖になっているし、無駄なダメージは喰らわないに越した事は無い。

 警戒しながら進んではいるが、時折乗合馬車なんかとすれ違うだけで街道に魔物が出現することは殆ど無い。魔王を倒した影響も少なからず出ているのだろうが、これだけ平和だと徒歩での移動も面倒になって来るな……。懐には余裕が有るので通りかかる馬車に乗せて貰おうかと考えたが、脱出して来た王都で近々祭りが有るせいか、すれ違うのは王都に向かう馬車ばかりだ。後ろから来る馬車は今の所無い。

 まぁ仕方ない、急ぐ目的がある訳でも無いのでのんびりと進むとしよう。このまま街道を進めばゲームの勇者君が最初に向かう事になる街が有る筈だ。


「全部終わった後だが、一度ストーリー順に各地を巡ってみるって言うのも悪くないか?」


 今後の方針を考えながら街道を進んでいると、今日初めて後方から近づいて来るアイコンがマップに表示された。


「お、乗合馬車か?」


 アイコンの詳細を確認……てか、三つ有るアイコンが敵を示す赤なんだが……魔物か?

 アイコンの詳細に表示されたのはハインライト騎士か、この国の騎士だな……そりゃ魔物じゃなくても赤アイコンだな、俺一応逃亡者だし。逃げた俺の事に気付かれて探されてるんだろうか? んだよ、城に居座られるのが鬱陶しかったんじゃないのか? 出て行ってやったんだからもう放っておけよ……。


隠密(ハイド)……」


 後方から来る騎士は騎乗しているのか移動力が高い、視認される前にスキルで隠れておく。

 これで俺の姿は見えない。まぁ、見えないだけなのでぶつかられないように街道の端に寄っとこう。そうして様子を窺っていると、王都の方から馬に乗って騎士が3匹ほど駆けて来た。ハインライト騎士の鎧と兜にマント……馬の方までガッチガチに装備を固めた騎士がスキルで見えなくなっている俺に気が付かないでそのまま駆けて行った。

 面倒臭い、まだ俺を探していると確証が有る訳じゃないが、マップに表示されたアイコンが敵を示す赤なので多分俺を害する目的で探しているんだろう。

 ハインライト国内をうろつくのは諦めた方が良いかもしれないな……。俺を探しているのは今の所ハインライト騎士のようだから、他国なら俺を探し回るのにもこっちより制限がかかるだろう。


「となると、目指すは海、航路か……」


 今俺が向かっているのが、この国の中心地と言える街で国内のどこに行くにもこの街を中継した方が効率が良いように街道が整備されている。王都は政では国の中心だが、北と東を険しい山脈に囲まれた攻められ難い守りやすい場所というだけだ。で、今向かっている中心の街だが、ゲームのストーリーだと敵味方問わずにイベントが満載でそこで加入の味方キャラも数人いる。その為、避けていたので立ち寄るのは今回が初めてになる。

 まぁ、街で改めてイベントを起こしているとハインライトの奴らに見つかりそうだからのんびりもできないだろうけどな……。


 常に戦闘状態に意識を保っておくのも精神的に疲れる。魔王の討伐までは何とかやり切ったが、ハインライトの騎士に追われるぐらい大した障害に感じていないからか今は気が抜けてるからなぁ……かと言って隠密スキルを常に使っておくのも消費魔力的にどうだろう? まぁ、適当に行くか。見つかっても相手を片付けたらいいだけだしな。

 と、適当に進んでいたら定期的な確認の為に開いたマップに敵反応の赤マーカーが出た。


「って真後ろ!!」


 フラッシュタスク、とりあえず状況把握だな……背後の赤マーカーは、ハインライト暗殺者か、さっきの騎士とは別動か。レベルが低いから既に振りかぶられている攻撃は痛いだろうけどダメージ的には殆ど入らないだろう。まぁ、クリティカルや防御無視が怖いから避けるんだけどな!

 回避行動を思考、命中予測を逆に使って相手の攻撃の命中確率が0%になる行動を選択し、思考加速を止めて実行する。


「!」


 完全な不意打ちだと思っていただろう、避けられたことで声を上げなかったのは暗殺者として誉めてやろう。でも、今ので仕留められなかったらもう詰みだ。拳を握り腹にぶち込む。レベル差的に特殊な状況じゃない限り俺の攻撃は当たると命中予測で判断し、ダメージ予測で殺さないダメージになるまで手加減する。

 声も無く気絶した暗殺者を放置して俺は再び歩き出した。指名手配されてるような盗賊なんかだったら懸賞金目当てで簀巻きにして街まで持って行くんだが、こいつハインライトの暗殺者だからなぁ……。懸賞金なんてかけられてないだろう。そうなると連れて行くだけ面倒だ……。

 その後も警戒を続けながら街道を進む。この道中は暗殺者の襲撃さえ捌いていれば順調なものだ。ここが街道だからか野生の感なのか、魔物も全然見かけない……偶に戦闘マップに赤の魔物アイコンが表示されるがすぐに感知外に消えてしまう。マジで俺から逃げているようにしか見えない。

 普通のRPGのエンカウントか? レベルが高いと弱い魔物は逃げ出すって感じで……この世界SRPGなんだけどな。敵に逃げ出すってコマンドが無い……あ、だからエンカウントする前に逃げてるのか? まぁ、この世界は色々ゲームとは違うと言う事なんだろう。

 そうなんだよ、この世界はゲームの設定が結構生きているがゲームそのままじゃない。

 俺も最初の頃は剣持って魔物に突っ込んで行ってたが、画面で見る魔物は平気だがリアルに目の前に居るとすっげー怖い。ゲーム感覚でやっていると命が幾つあっても足りないと早々に判断して遠距離攻撃に切り替えたからなぁ、それに合わせて戦闘マップや命中予測、ダメージ予測なんかのシステムをフルに使って、敵に見つかる前に一撃必殺って繰り返してた。気が付いたらほとんどの習得可能なスキルが暗殺者みたいなスキルばっかりになってたんだよなぁ……。魔物にも慣れてレベルが最大まで上がった今だと正面戦闘でも行けるだろうが、俺のスキルってレベルを上げた時に増えていたからなぁ……今から新しいスキルを覚える事はできないと予想をしているが、今の殺り方で戦えてるから問題は無い。

 まぁ、ゲームのままの世界じゃないんだから、スキルが無くても慣れれば近接戦闘も達人みたいになるのかねぇ?


 因みに俺の習得しているスキルは、この世界に来た初期状態からあったフラッシュタスク、アイテムボックスやステータス表示、戦闘中の命中予測やダメージ予測、戦闘マップといったシステムスキル。

 基本の各種ステータス補正系のパッシブスキルと一部の上位ステータス補正……これは、攻撃、命中、俊敏の3つしか取得可能にならなかった。

 それと、俺のレベルの上限を上げている限界突破だな。これは最初から習得していたスキルでレベルの上限を上げる以外にもアクティブ系の能力が有るが、そっちは余程の事が無い限り使わないので割愛。

 後は、夜目とか遠見、先制……。

 アクティブ系では、敵の目の前に居ても姿が隠せるって大変便利な隠密(ハイド)、まだ剣メインで戦ってた頃に取得した次の攻撃の威力を倍にする溜め(チャージ)と威圧、威圧は周囲を威圧して相手の動きを鈍らせるそのままの効果だな。遠距離戦に切り替えてから取得可能になったのが、指定した対象を攻撃することで攻撃が必ず当たる 必中(ロックオン)、装備や装甲の間を突くことで相手の防御力を無視する 貫通(ピアッシング)必墜(クリティカル)と言う遠距離攻撃の必殺武技。アイテムや武器を投げて使用したり攻撃する投擲。こんな所だろうか?

 何と言うか、このスキルは俺の行動がそのまま取得可能なスキルに影響するようで、隠れて遠距離から相手を一撃で確実に仕留める為のスキルがほとんどになっていた。

 俺の行動で取得可能なスキルが変わるって気が付いたのはレベルを最大まで上げて、取得可能なスキルが増えなくなったからだからな……。もっと早く分かっていたなら色んな戦い方を試したんだがな……。

 まぁ、投擲なんかはスキルが無くてもできるんだが、スキルを使用してからの方が何かと上がっている気がするので惜しい事をしたという自覚はある。


「それでも、魔王を撃破するまでだって考えていたからあまり気にしてなかったんだがな……」


 帰ってしまえばスキルなんてどれを習得していても関係ないが、長い間こっちに留まり続けたせいで、今帰れても面倒ばかりが予想できる。魔王撃破後のノーマルエンドで帰れなかった時点で、もう帰る事を諦めているんだよな……。むしろこっちで暮らした方が楽しいだろう。追っ手さえ撒いてしまえればだけどな。


「てなわけで、さっさと国外逃亡だな」


 中央都市と幾つかの街を経由して港町へ。あと何回か見つかりそうだが、まぁ大丈夫だろう。

 まったく、召喚された国から逃げるなんていうのは最初にやるもんじゃないのか? どうせ俺を召喚した奴らに元の世界に帰る方法を知っている奴なんて居ないと思っていたんだから、下手に報酬をぶんどりに来ずに気ままに旅してればよかったな。そうすれば、召喚の魔方陣や資料の写しは手に入らなかったが逃げる手間を省けた。それらの写しは帰る気が無いなら無用の物……あ、完全に余計な事やって厄介事抱えてるよ……失敗した。

 まぁ、仕方ないか……さっさと片付けてこの世界を満喫するとしよう。

 


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