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一章25話 砦行き「ゲームとかじゃよく居るよな、縦ロール」

「建築の手伝い?」


 リュインに言われリエルに次の仕事の話を聞きに来たのだが、砦の建築の手伝いに行ってくれと言われた。

 まぁ、見た目以上に力は有るから土方ができない訳じゃないが……素人が手伝っても大丈夫な内容か?


「そうよ~、本来だったらマインとソウマの付き添いであたしたちが行くんだけど、ルイも地の中級は使えるんでしょ~。だったらぁ、付き添いついでに手伝えるわ~」


 ソウマたちも手伝いに行くのか? それと俺の魔法適性を言って来るとなると……。


「あぁ、砦を建てるような効果の魔法刻印が有るのか」


 ドアチャイム、コンロ、水道、、そういった物に組み込まれ日常に使われている魔法石に刻まれた刻印にも俺の知らない物は使われているんだ。

 まして国毎にもその種類は違って来る、他にも知らない刻印が有るのは当然だな。


「正解よ~、でも~砦を建てるなんて規模の大きな物だから~、その分人手、魔力が要るのよ~」


 で、砦を建てるのと同様の魔法が使える者がミネラルレの復興に割かれているから、適性の有るソウマたちにも依頼が回って来て、ついでに俺もって所か?


「分かった、フォスたちはどうする?」


 フォスは竜騎士見習だからまだ連れて行っても大丈夫だろうが、ミリルは国のお抱え候補とは言え鍛冶師だしな、鍛えてるのは俺の勝手だから連れ回しても良いんだろうか?


「フォスは連れて行っても問題ないわ~、ミリルは~本人次第かしらぁ? 着いて行くって言っても私たちが無理に止める事は無いわ~」


 なら連れて行こう、纏めて育てているから向こうへ行っている間に一人だけレベル差が出来るのも変な感じだしな。


「なら連れて行く。出発は?」

「明日よ~」

「また急だな、もっと早く連絡しろよ……」


 準備しようにも早い店は閉まりだす時間だぞ。


「これから建てる砦は~ドラゴンの監視塔の最後の一つだからぁ、先日のミネラルレ襲撃が原因で建築を急かされているのよ~。あぁ、それとぉ、一緒に他の魔創術師と見習いも行くから仲良くしてねぇ」


 ドラゴンの回復力は知らないが、撤退したドラゴンはギリギリまでライフが削られていたから魔法や回復薬も無しにそんな早く回復できるとは思えないんだけどな。


「まぁ良いか、他の同行者に関しては大丈夫だ、相手が余計な事してこない限り無意味に敵対したりしないからな」


 ハインライトで学んだ、下手に敵を作るのは良くない。


「その相手がちょっと問題なのよ~」


 同行者に問題がある奴でも居るのか? まぁ、無視しておけばいいだけだ。 


「大丈夫だろ、鬱陶しければ無視するし、最悪黙らせる」


 そう言って威圧のスキルを発動しながらリエルに笑いかけてやる。


「やぁ~、殺気をこっちに向けないでぇ! 初めて会った時にも受けたけどそれほんとに怖いのよ~!」


 初期の頃の俺が魔物の前に出るようなもんか?

 無暗にリエルを怖がらせるのも悪いのでスキルは早々に効果を切る。


「も~う、とにかくよろしくね~、マインとソウマにはクラッドが伝えてるから」


 俺はフォスとミリルに伝えておけばいいんだな。

 普段からアイテムボックス内に備えはしているから俺の準備は必要ない。店が閉まる前に伝えておこう。


「前の時もだけど~、必要な物が有るなら無理のない範囲でメイドたちに用意させるのに~」


 部屋を出る時に後ろでリエルがなにか言っていたが、今は出発の準備する時間が無くならない内にフォスたちに伝えに言ってやる事を優先する。必要な事なら後でもう一回言って来るだろう。



 フォスたちも無事に閉店前に準備を終え、その後リエルからは何も無く次の日を迎えた。


「移動手段は用意してあるって言っていたけど……」


 また前みたいに馬車が用意していてリュインが操縦するのかと思っていたが、リエルの屋敷の前に停められた馬車は馬4頭引きで俺たち全員が乗っても十分余裕が有りそうな大きさをもち、嫌味ではないが要らないだろうという豪華な装飾がされていた。御者台に乗っている御者の男性が微動だにしないのが不気味だ。


「これに乗るのか? 正直勘弁してほしいんだが……」


 ソウマたちは何とも思っていないのか? うわ、気にして無さそうだ。

 なんか微妙なところでこの世界の奴らと根の感性がズレている気がする。


「はぁ、これだからこっちで用意するって言ったのに……まぁ、害は無いから我慢して頂だ……」


 見送りに来ていたリエルがため息を吐き俺の内心に気付いてか宥めようとしてくるが、言い終わる前に馬車の扉が開き金ぴかが出て来る。


「漸く集まりましたわね、準備ができているならさっさと出発しますわよ!」


 馬車から湧いて来た金髪の縦ロール女が偉そうに言い放つ。


「ほら、さっさと御乗りなさいな」


 偉そうだが、ちゃんと同乗させてくれるようだ。

 急かされたので、見送りのリエルとクラッドに少しだけ挨拶してさっさと馬車に乗り込む。


「あ、ルキラも一緒なんだ」


 先に乗り込んでいたソウマが、馬車内の入り口近くに設置された席に座っている見習い魔創術師のローブを纏った水色のセミロングの髪のソウマと同じ年頃の少女に気が付き声をかけた。

 この子は確か……そうだ、ソウマの魔創術師試験の時にソウマに親切にしてくれた子じゃなかったか?


「ソウマ、うん、私は今回必要な適性が無いからほぼ見学だけどね」


 試験の時よりも打ち解けているな、住んでいる街はここで一緒だし何度か会っているのかな?


「大丈夫よ~、こっちの二人だって適性無いから~」


 ソウマに続いて馬車に入ったマインが初対面の相手に物怖じもせず普段通りに軽く話しかける。

 こっちの二人とさされたフォスは軽く頭を下げるだけで挨拶を済ませ、ミリルはダオンの工房で店員もやっていたためかスッと会話に加わって行った。


「そっちの人が、前にソウマの話してた師匠さん?」


 お、俺か?


「一応初めまして、俺は嘱託騎士の瑠衣、こいつらの師匠をやっている、よろしくな」

「……うん、ルキラ、です」


 暫くじっと俺の顔を見た後頷いてくれた。


「いつまでも入り口で止まらないでくださいますの! もう出発しますわよ!」


 縦ロールに急かされ皆席に腰を下ろす。

 リエルになんか挑発的な事を言い放った後、クラッドに妙に甘ったるい声音で別れを告げてから御者に出発の合図を出した縦ロールが馬車内に戻って来た。

 縦ロールが席に着き一呼吸の後、馬車が少しの揺れだけを発して動き出した。


「で、俺たちは何処に向かっているんだ?」


 ソウマ、マイン、ミリル、ルキラの4人が纏まって話し始めたので、ルキラとの挨拶を終えていた俺は縦ロールの方を向き話のきっかけにと問う。


「聞いていませんの? 翠の厄災、ドラゴンの生息する平原で唯一監視塔の無い西端アバタールですわ」


 そんな事も知らないで来たのか、仕方ない教えてやろうって感じの物言い、微妙にイラっと来る。


「アバタールに監視塔が置けていれば今回のミネラルレ襲撃も、もっと早くに気付いて駆けつけられました」


 ああ、王都から西に行くって言ったら最終的にはミネラルレか。ミネラルレに行く際に使った街道は平原の南の監視塔の更に南側を通っているらしい。

 でも、ドラゴンの生息域ってその平原だけに留まるものなのか? 監視塔って無駄に思えるんだが、どうなんだ? 確かにミネラルレの時は最後に竜騎士団が来たから切り札を使わずに済んだが……。

 てか、フォスもソウマたちに交じって話してても良いんだぞ? 縦ロールの相手すんのなんか疲れそうだしな。


「貴方は?」

「はっ、僕は竜騎士見習いのフォスと言います! 今はこちらの嘱託騎士殿の下で学ばせてもらっています」


 誰が嘱託騎士殿だ、お前俺をそんな呼び方したことねぇだろ。

 てか、何失礼縦ロール相手に緊張してんだよ? 何? 惚れたの? ガキ共の方に行かないのはそれでなの? 趣味悪くね? 見た目は最上級かも知れないが性格がムカつくタイプの貴族のお嬢様じゃねぇか。考え直せ。


「嘱託騎士……ふぅん」


 なんだよ?


「いいですわ、(わたくし)はシアン・リュアマリン、栄えあるリュアマリン家の長女にして凍堅(トウケン)の二つ名を与えられた国家魔創術師ですわ!」

「二つ名……」

「なんですの?」


 いや、元々ゲームの世界なんだしそう言うのが有っても良いか。


「言っておきますけど、リエルやクラッド様も持っていますわよ!」


 おいおい、あいつ等にも有るのかよ、帰ったらからかってやろう。


「ルイさんにも付く可能性が有りますよ。いえ、一般的には竜騎士が撃退したことになってるのでないかも知れませんが、国の上層の方では滅竜騎士なんて呼ばれていそうです」


 要らねぇ、いや、俺の称号の魔王殺しのようにセットすれば魔王特攻とかの効果がつくなら貰って損は無いが、ただの二つ名だと恥ずかしいだけだ。


「要らん、止めさせろ」

「王まで関わっているんですよ! 僕にどうこうする力は有りません」

「なら縦ロール」

「シアンですわ!」

「ならシアン! その栄えあるリュアマリン家の権力と財力と才力を駆使して!」

「栄えあるリュアマリン家と言えど力の及ぶ範囲では有りませんわ!」


 ちっ、所詮はノブレス・オブリージュを解さない貴族か。


「よし、変な名で呼んだ奴は片っ端から消そう、そうすればその内変な名で呼ぶ奴は誰も居なくなる……」

「止めてください!」


 冗談だよ、冗談だとは絶対に口に出して言ってやらないけど……。


「冗談、ですわよね?」


 縦ロール、シアンの引き攣った笑い顔が間抜けでちょっと気が晴れた。




――――――――――――――――――――――


「ふ~、行ったわねぇ」


 瑠衣と弟子もどきズを見送ったリエルはシアンの馬車が見えなくなったところで漸く一息ついた。


「大丈夫なのか? あの二人、前に会った時は印象最悪だったんだろう?」


 以前、瑠衣は嘱託騎士試験を受けた際にシアンと出会っている。


「大丈夫よ~、ルイ、前の時は速攻でシアンを無視してたもの~、存在を消すくらいの勢いでね~、もう前の事は覚えて無いんじゃないかしら~? シアンには一応言葉を選ぶように言い含めているから決定的な事は言わない筈よ~、せっかくルイが忘れているんだからねぇ」


 以前瑠衣がシアンと会った時、瑠衣は直ぐにシアンに関わらないように関心を外したので、今の瑠衣は以前のシアンの事を忘れているというのは正解だった。


「面倒なのか大雑把なのか、どうにせよ、僕はルイとは敵対したくないな」

「あの殺気を直に浴びた事が有るならぁ、誰でもそう思うわよ~」


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