一章23話 漸くの帰還「増えてる……」
ソウマたちがどうやってリュインを振り切って追って来たのかとドラゴンが逃げてから疑問に思った為、マインに聞いてみるとソウマの魔法で縛って来たと言った後、マインがが焦りだした。
急いで戻る為にソウマを叩き起こそうとするので魔力回復薬を渡してやる。
「気絶しているから口移しな」
マインは俺の冗談を無視してひったくった魔力回復薬をソウマの口に無理矢理ぶち込む。
改めてこいつをからかうとか無理だと感じた……基本がマイペース過ぎる。
ぶち込まれた魔力回復薬は殆ど口から零れているが、放置したままよりは早く目が覚めるだろう。
だからそれ以上頬を叩くのは止めてやれ。
「もういいですか?」
おっと、俺は見習い竜騎士の相手をしている途中だったな。面倒だから忘れていた。
と言っても、ドラゴンと戦って街の皆の逃げる時間を稼いでいたとしか言えないんだが……。
「マイン様! ソウマ様!! ルイ様!」
マインの往復ビンタでソウマの頬が腫れてきた頃、街の衛兵を伴ったリュインがやって来た。
竜騎士団に保護され、共に街に戻ってきた後、俺たちを探しに行こうとするのを衛兵たちによって止められていたが、ドラゴンが去って行くのを確認してやって来たらしい。
「マイン様とソウマ様は覚えておいてください、あの時は本当に貞操の危機を感じたんですからね!」
街道とは言え、魔法で縛って放置とか危険でしかないな。リュインは怒っていい。
でも、最初に離脱した俺が言うのもなんだが、頼むからこっちに矛先を向けないでくれよ……。
とりあえずは魔物や野盗に遭遇しなくて良かったな。
「でも、無事でよかった……」
余裕が無いのか、普段の下っ端のような口調が無くなっているリュインは、俺らの無事を確認して本当に安堵していた。
「リュイン! ごめんって! お願い離して!!」
「リュインさん! 締まってます! 締まって……ぐ」
リュインの抱きしめが思いの外強いらしく、なんか弟子二人の顔がヤバさを訴えているが、弟子共を抱きしめるリュインの姿が普段よりも真剣な雰囲気で俺には止められなかった。
いつの間にか目を覚ましたソウマが早々に落ちそうなんだが……。
「「…………」」
あ、二人共落ちた。
「放って置いて良いんですか?」
「やらせておけ、俺は知らん」
ソウマたちを絞め落としたままのリュインの説明で俺の身分が証明され、見習い竜騎士の追及を退ける事が出来た。
なぜリュインが俺の嘱託騎士証明書を持っているのか謎だが……。
リュインの説明にリエルの名前も出されていて、それもあってすんなりと納得したんだが……どうでも良いが、あいつ結構上の立場なのか?
俺が嘱託騎士という事が証明された後も見習い騎士君はしつこくどうやって戦ったのかを聞いて来る。
「そっちで気絶してる奴と全力で魔法を使って……その後はあのドラゴンの守りを突破できる武器で叩いてたな」
魔石懐放の事は言わない。
リエルたちも俺の説明を聞いて試しはしたみたいだが、今使えるのは俺とソウマだけなので使用可能な条件が分からない、そんな技能なんて説明に時間が取られそうだからな。
代わりにあのドラゴンに有効な武器を作ったミリルの事をばらしておく。矛先を逸らす行為だが、この場合はミリルに武器作成の依頼が舞い込むぐらいだろう。
「その子の武器な、ダオンの工房の鍛冶師見習いが作った魔剣なんだ」
ちょっと見せてくれと見習い騎士がマインに近づくと、突然跳ね起きたマインが見習い君に斬りかかった。
「女の子の~寝込みを襲おうなんて~、す~け~べ~!!」
マイン、リュインから逃げる為に気絶した振りをしてたな……。
「な! 僕はそんなつもりじゃ!!」
マインの大剣槍を剣で受け止めた騎士君はそのままマインと斬り合いを始めた。
「止めなくて良いんすか?」
ソウマを抱えたままのリュインはさっき何処かの見習い騎士から聞いたようなセリフを……。
リュインの口調が戻ったな。落ち着いたか?
「放って置け、俺は知らん」
二人の斬り合いは、救出作業を終えた竜騎士たちが戻って来るまで暫く続いた。
見習い騎士君、マインと暫くやり合ってるとか結構な腕だな。
見習い騎士君の方がレベルは高いので、それで斬り合えるマインが異常なのか……騎士君が加減しているだけか……いや、ソウマもだが、マインは鍛え出してからの成長が異常だからレベル相応と考えるのは危険だな。
竜騎士の団長に協力を感謝され、その後もまだ何か聞きたげな見習い君を引き連れて竜騎士団の面々は撤収していった。
彼らは暫くは復興作業でミネラルレに留まるらしい。
あの竜騎士の団長は他の奴らのようにドラゴンを撃退したことに浮かれていないみたいだな……まぁ、この街の惨状を見れば浮かれてもいられないんだろうが……。
俺たちの方はもう帰ってもいいようなので、依頼の装備の乗った馬車が置いてあるという避難所に向かった。
そう言えば何本か俺のアイテムボックスに入っている依頼品の武器を使ったが……どうしよう?
「お兄さん! よかった、無事だったんですね!」
「おう! おめぇら、竜騎士団がそっちに向かった後ドラゴンの野郎が逃げて行ったが……まぁ、無事だったんなら良い、おめぇのおかげで助かった。ありがとうよ」
避難所に無事に避難できていたダオンとミリルが俺たちを見つけて寄って来た。
戦闘マップで戦闘範囲内から離れていた事は確認しているが、ちゃんと無事でよかった。
せっかく助けたんだから知らない所で何か有っても嫌だからな。
工房の方は多分めちゃくちゃに壊れているんだろうけど……ダオンなら生きてたらどうにでもできるだろう。
でも、街の方の復興は大変そうだな……後、何人亡くなったんだろう? 俺が来てからの人的な被害は確認しながらやってたから出て無いと思うが、それまでにやられた分はどうにもならないからなぁ。
にしても、あのドラゴン、やってくれたな……奥の手が残ってたからやられる気は無かったが、次会った時はぶっ飛ばせるように対策しとかないとな。
今回でやり方は分かったから次はもっとましに戦えるだろう、具体的には黄の属性の高ランク魔法を複数用意しておけばやれる、今回は有効な属性の高ランク魔法石が無くなって打つ手が減ったからな……魔石懐放がないと使えなくても数を用意しておく必要が有るな……今ならソウマが居るから空の魔法石さえ用意すれば刻印済み魔法石は簡単に手に入るからな、今度頼んでおこう。
国の許可? 今まででもなぁなぁなんだから気にしなくても大丈夫だろう。駄目ならクラッドあたりに何とかさせればいいだけだ。
まぁ、用心はしておくが、そう何度もドラゴンに出くわすなんてことはないだろう。
そして、なんだかんだ有ったが、俺たちは無事に王都フォルリオのリエルの屋敷に帰って来る事ができた。
「ここがマインちゃんたちの先生のお屋敷?」
「本当だ、リエルさんの屋敷ですね」
「なんでアンタが分かるのよ~、先生変態が居ます~」
「マイン、黙って」
なんかおまけが二人ほどついて来た。
ミリルは……まぁ、俺がマインの魔剣を作ったのがミリルだってばらしたから、国のお抱え鍛冶師としてスカウトされた結果一緒に来ることになったんだが……スカウトしたの誰だよ? 竜騎士の団長ぐらいしか思い浮かばないが……。
もう一人一緒に来た奴は俺がミリルの事を教えた見習い竜騎士の少年、名前はフォスだ。
こいつは帰る段階になる少し前から再び現れてしつこく付き纏って来た。
鬱陶しくなって気絶させようかと思ったら竜騎士の団長に後で上に話は通しておくから鍛えてやってくれと頼まれた。
なんでだ……。
「僕は生贄なんかにはなりません、貴方のようにドラゴンを倒せる力を得て見せます! 本当の竜騎士、竜を倒す騎士になって見せます!」
うん、まぁ、生贄根性の奴らばっかりの竜騎士団では成長できないって見限ったと、竜騎士の団長もフォスの願いを聞き届けて俺らに託したと……悪く言えば周りと馴染まない見習いを丸投げされたか?
暫くリエルの屋敷でミリルとフォスを預かり適当にソウマたちと一緒に鍛えていたら、数日後に二人の面倒を見る事を仕事として依頼された……多分竜騎士の団長の話が通ったんだろう。
面倒を見るって言っても生活の方はリエルのメイドたちが面倒を見ているので、俺はソウマたちと同じように鍛えるだけでたいした手間でもない、これで定期収入が入って来るなら儲けもんだ。
「うえぇえ!? アタシもですか!?」
「ついでだ、その内鍛冶師として修行の旅に出るんだろ? まぁ、国に仕えちまえば行けるのか分からないが、護衛を雇わなくても大丈夫な位には鍛えてやる」
拒否は認めない。認めても良いけど鍛えてレベルを上げた方が鍛冶のスキルも上がる気がする。
弟子共のステータスが見れたら早いんだが、ぶっちゃけ実験だな。
「旅には出ますよ。アタシがあの大剣槍を作れたのは偶然が重なっただけで、もう一度作れなんて言われても出来ませんから、お抱え鍛冶師の誘いを受けたのも修行の一環です。お兄さんに武器を作る約束も有りますから」
「んじゃ鍛えような?」
「…………はい」
ミリルは鍛冶だけじゃなく戦闘面でも近接武器の方が向いているようだった。
だが、基本からなのでソウマと一緒に色々やらせる。
フォスの方は見習い竜騎士という事もあり基礎は十分で剣や槍での近接と魔法がそこそこ使えるようだった。
今までソウマがやっていたマインとの模擬戦を任せられるぐらいだったので、マイン同様に一度叩きのめした後二人に模擬戦をさせるという流れに変化した。
こいつらのレベルアップは俺とシステムが違っているみたいだから魔物を倒して各自に経験値が入る普通のロープレみたいなシステムっぽい。
今度レベルを上げるために魔物を倒しに行くか……。




