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一章17話 坑道から帰還後「剥ぎ取り……だと?」

 とりあえず坑道の方は閉鎖状態となった。防壁として設置して来た地壁(アースウォール)は、地面を隆起させたもの以外は時間が経つと魔力切れで消えてしまうんだが……どうするんだろうな。

 後、俺たちは今回採掘して来た鉱石で出来上がった武器を王都に届けるまでが仕事らしく、今は出来上がりを待っている状態で……。


「つまりは暇だ」


 ソウマはいつの間に仲良くなったのか知らないが、ミネラルレの住人たちに呼ばれて出かけている。時間は有るから何していても構わないんだが……トラブルは起こすなよ。

 まぁ、ソウマは大丈夫だろうが、問題はもう一人の方だ。

 その、問題のマインはミリルに借りた大剣槍が気に入ったらしく、このまま譲って貰えるように話しに行った。


「ダレてるっすね~、ルイ様も出かけたらどうっすか?」


 宿のベッドでゴロゴロして暇だと言っていればダレていると言われても仕方がないが。それはリュインも一緒じゃないのか? ダレてるかどうかは知らないが、宿に残って俺の観察なんてしている時点で暇人以外の何物でもない。


「何しろって言うんだよ、俺の所持金分かってんのか?」


 マインに破壊されたから本格的に武器が無くなったので新調したいんだが、武器を調達するための資金稼ぎも兼ねて今回の仕事を引き受けたんだ。仕事が終わってないのに報酬が払われている筈も無く……未だに金欠に変わりはない。

 依頼を受けている間にかかる経費は出ているが、それで武器を買う訳にもいかない。

 自由な時間ができたと言っても、ソウマたちの修練以外にやる事が無いのだが……そのソウマたちも出かけている為やれることが無いって訳だ。


「お金が無いなら魔物でも狩りに行けば良いじゃないっすか」


 は? 何言ってるんだ? ゲームじゃないんだから魔物倒したって金を落とすわけじゃないんだぞ。


「ここなら素材の買取は何処の工房でもやってくれるっすよ」


 素材の買取? え? ……あ!


「うわ、そうだよ。ゲームじゃないんだから倒しただけで金が手に入る訳ないじゃないか。ゲームだと省略されている工程を踏まないと……」


 魔物から売れる者をはぎ取って売ったり装備にするって事が省略されていないゲームもあるじゃないか、どうしてそこに思い至らなかった! この世界に似たゲームを知っているって先入観で俺の見方が固定されてしまっていたって事か……しまったな。


「所で……剥ぎ取りってどうやるんだ?」

「え? 知らないんすか? 道中の倒した魔物とか持って来たのって後で解体する為じゃないんっすか?」


 おう……そうだった。アイテムボックスの中に大量の魔物の死体があったな。丁度良い、剥ぎ取り方法を教えてもらうか。ついでに魔物の死体も全部処分してしまおう。やる事が出来たな……。


「やり方教えてくれ」

「構わないっすよ。けど、解体するなら街の外に移動した方が良いっすね」


 まぁ、街中で解体作業を始める訳にもいかないだろうからな。

 で、街の外に移動。魔物の死体を処理するので街道からも離れて目立たない場所を探しす。


「人気のない場所にメイド連れ込んで何する気っすか!」

「魔物の解体だ」


 リュインのくだらない冗談は流してアイテムボックスから魔物の死体を取り出して行く。


「つれないっすねぇ~、まぁ良いんっすけど……」


 暫く存在を忘れていた魔物の死体は幸いな事に腐敗が進んでいるようには見えない。状態がヤバかったら剥ぎ取りは中断して全部焼却処分するところだった。


「数日たってる割には思ったよりも状態が良いっすね」


 そう言ってリュインが解体用と思われるナイフを何処からか取り出して渡してくる。毎回思うが、俺みたいにアイテムボックスが無いのにどこに持っていたんだ?


「適当に一体バラすんで見といてください」


 俺に渡したのとは別に自分用に取り出したナイフで俺がアイテムボックスから取り出した魔物の死体の一体を遅めの速度で丁寧に解体し始める。


「この魔物から取れるのは角と皮っすね~骨も使えない事は無いすけど二束三文っすよ~」


 当然魔物によって取れる素材は違って来るか、そりゃそうだよな。


「あ、ルイ様、水出してもらっていいっすか」

「ん? ほいほい、水落(アクアドロップ)


 解体した素材の処理だろうと予想して、魔法で出す水の量を調整して暫く空中に留まるように設定した。

 リュインはその水を使って解体した素材を処理していく。


「全属性使えるとか便利っすねぇ、自分は緑だけなんで日常での利便性が微妙なんっすよねぇ」


 いや、刻印済みの魔法石の販売に制限が有るから日常で魔法使える奴の方が少ないからな。今使った水落(アクアドロップ)も一応攻撃魔法だからな。


「とにかくやってみるっす」


 ほいほい、促され今リュインが解体したのと同じ魔物の死体にナイフを突き立てる、見よう見まねで角を取って皮を剥ぐ。それらを水で処理して終了。残った死体は一か所に纏めておく。後で纏めて消し炭にして埋めよう。


「まぁまぁっすね、解体作業で気分を崩す事も無いみたいですし、慣れれば問題ないっすね、どんどん行きましょう」


 まぁ、解体については、最初の頃は魔物を切ってその中身、グロテスクなモノを見て気分が悪くなったものだが、それも、感覚が麻痺したのか慣れたのか、今では特に何も感じなくなったな。

 早い段階で戦闘スタイルを遠距離戦に切り替えた理由にも少なからず影響しているが今は遠近関係無く戦うしな。

 とにかく今の俺は、もう解体作業についての不快感は無いので、魔物毎に取れる素材とやり方をリュインに教わりながら剥ぎ取りを続ける。

 アイテムボックス内の魔物を処理しきった頃には日がだいぶ傾いていた。


「後は燃やしちまうか……火炎球(ファイヤーボール)


 うわ、臭いが酷いな……安易に大量の死体なんて焼くもんじゃない。


「もうちょい火力を強くしときゃ良かったか……」


 匂いが発生する前に焼き尽くすぐらいでないと駄目だな。


地壁(アースウォール)、んで倒す」


 大体燃えた所で焼死体に覆い被さるように地面を隆起させて地壁(アースウォール)を設置して踏み倒す。根元の方を脆く設定しているのでちょっと蹴れば倒れる。

 見た目的には不自然に見えるが、これで一応死体は埋められたな。

 素材の方はアイテムボックスに放り込む、後で売りに行こう。ようやく金欠とおさらばだ。

 っと、そう言えば魔物は俺だけが倒したわけじゃないんだよな、寧ろ俺は殆ど戦っていない。なら、ソウマたちにも分け前が必要か……。


「あ、自分はいいっすよ、メイドなんで、リエル様からちゃんとお給金も貰ってるっすから」


 なら三等分だな……今回取れた素材の値段なんてどれぐらいになるのか全く想像がつかないな。武器の新調できるか?

 とりあえず売ってしまおうと街に戻る。売る場所はどこでも良かったが、リュインの勧めでダオンの工房、ミリルの働く工房に持ち込むことになった。


「いらっしゃいませ、ってお兄さん? 納品分の装備はまだできてませんよ」


 ダオンの工房、その商店の方にはミリルが店番をしていた。ミリルと交渉中なのか、もう交渉は終わって談笑中なのかマインも居るな。


「あれ、師匠? リュインも一緒だ~、もしかしてデート?」


 アホか、デートならこんな所来るわけねぇだろ。

 馬鹿言っているマインは放って置いてミリルに用件を伝える。


「魔物の素材ですか? はい、買い取りもやってますよ」


 先ほど剥ぎ取ったばかりの魔物の素材をカウンターの上に出していく。少し湿っている物も有るが……まぁ大丈夫だろう。


「わぁ、こんなに、冒険者からの買取を取り止めようって話が出ているので有難いです」


 ん? こういった素材は冒険者から買い取ってるのか。

 まぁ、それなら冒険者への信用が無くて冒険者たちに仕事が回らない街に冒険者が残っている理由も分かるか。仕事は無くても魔物を買って素材を持ち込めば金は手に入るんだからな。

 冒険者たちの信用が無いのは、以前一部の冒険者にミネラルタートルを大量に狩られたからだって話だし、今の冒険者からの買取を止めようって話も、多分坑道に居た馬鹿共のせいだろ?

 何だろ、碌な冒険者の話を聞かないな……。勇者君の仲間になる冒険者は自由な旅人って感じでかっこいい感じだったんだが……。


「これが買い取り料金表で、こっちが今回の各買取数です。それで、合計買い取り額がこれだけになります」


 手早く集計を済ませたミリルが料金表と言って魔物の素材とグラム毎の値段が書かれた木板と共に、今回の買取素材の明細が書かれた紙を差し出して確認するように促してくる。


「大体相場通りっすよ」


 俺に相場なんて知識は無いが、リュインが俺にだけ聞こえるように教えてくれた。


「大丈夫だ、これで頼む」

「はい、ありがとうございます」


 素材を売却し料金を受け取る。もうついでだからこの場でマインの分を渡してしまっておく。


「え? アタシの分? やった~! ミリルちゃんこれで足りる?」

「あ、うん、これなら良いよ」


 渡した金をそのままミリルに回して、マインは例の大剣槍をミリルから受け取った。

 交渉で値段が所持金に満たなかったが、今の分で足りたって所か?


「師匠、勝負勝負!」

「待て待て! さすがに魔剣相手に素手はダメだろ!」


 魔力を流せば切れ味が増すって言ってたからあれって魔剣だよな? 攻撃力が多少増した所でどうにかなるだろうが、こいつ変な強化スキル持ってる疑いが有るんだよな。まさか手に入れたばかりの武器を破壊したりはしないだろうからミスリルタートルに使ったスキルを発動させる事は無いだろうが、その下位か上位互換で武器が壊れない強化スキルが無いとも限らない。もう、マインを素手で相手にするのは危険だ。


「俺の残ってた武器はお前が壊しただろうが……訓練するにしても大剣槍(それ)を使うのは無しだ」

「え~」


 え~じゃねぇよ。頼むからもうちょい大人しくしてくれ。


「あ、そう言えば、お兄さん、あの時ミスリルタートルを仕留めたんですよね?」


 ミスリルタートルって言えば採掘の護衛の時だな、地壁(アースウォール)でミスリルタートルと戦っていた場面はミリルに見えていなかった筈だが?


「止めはマインに持って行かれたけどな」


 ダメージが通らないと思ってマインにやらせた俺も悪いんだが、まぁ一体ぐらいいいだろう。ダオンにも報告してあるしな。あ、ミリルはダオンから聞いたのか?


「でも、あの状況だとミスリルタートルの素材はそのままですよね?」


 ああ、そう言えばそうだな。ミネラルタートルからは鉱石が採れるって事は分かってたが、剥いでいられる状況じゃなかったからな。


「それなら、坑道に入れるようになったら早めに取りに行った方が良いですよ、今は見張りの人員も変わりましたから、誰かに先に盗られるといった事は無いと思いますけどね」

「ミスリルタートルの素材って俺が貰っても良いのか? ボス個体の素材なんだから結構貴重な物だと思うんだが?」

「一体のミネラルタートルの個体から取れる鉱石だと量が微妙ですから、所有権を放棄されても何処の工房がその素材を貰うかという事で騒ぎになりますから」


 騒ぎになるぐらいなら俺に丸投げして何処に加工を依頼するか任せようってか? 良いのか、俺に知り合いなんて数えるほどだから、ぶっちゃけ素材を任せるの誰でもいいんだぞ。面倒だと思ったらアイテムボックスの肥やしになるかもな。


「まぁ、いいや。ミリル、ミスリルタートルの素材で武器作ってみないか?」

「良いの!」


 うおう、えらく食いつきが良いな。


「それはそうっすよ、ミスリルタートルの素材なんて普通なら見習いが扱いを任せて貰える素材じゃないっすからね」 


 おう……素材の使い道なんてどうでも良いとは思っていたが、ミリルに任せるのは工房の先達共的にはあまり良くないのか?


「まぁ、いいや。様子を見て行けそうなら早めに取って来るからやってみな」

「わっかりましたぁ!!」


 テンション高けぇな。任せて大丈夫か? まぁ、失敗しても良いんだが……。


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