一章13話 鉱山・錬鍛の街「武器(弓)が欲しい」
やってきました鉱山・錬鍛の街ミネラルレ!
道中ついにソウマとマインがお互いに妥協する事は無く毎晩口論を続け俺のアイテムボックス内も魔物の死体だらけになっているが……この街の炉で処理させてくれないかな?
「そんな質問しちゃ駄目っすよ、鍛冶師にとって炉は神聖な物っすからね」
神聖なら死体の処理をするのは全く問題ないんじゃないか? 神の御許に送ってやろうぜ~って冗談は置いておいて……。
「俺らはどこに行けば良いんだ?」
鉱山らしき山々に囲まれた熱気とそこかしこから鋼を打つ音の響き渡る石造の街。ここを目的地としたは良いが、ここから何処に行けば良いんだろうか?
「今回の素材採集時の護衛を依頼して来た工房っすね。国が装備を依頼した工房で、ミネラルレでは一番規模の大きな工房っすから、誰かに聞けば場所はすぐにわかると思うっすよ」
工房の名前はリュインが聞いていたので、適当にその辺を歩いている人に聞けば目的の場所はすぐに判明した。
普段よりは錬鍛の音が少ないと言うミネラルレの街を進む。
「うわぁ、やっばいのがいっぱいあるよ~」
目を輝かせてその辺の工房隣接店の店頭に並ぶ武器に引き寄せられるマイン。
「武器なんて買う金ないぞ、てか今のそれで十分だろ?」
「ソウマだけ先生たちから貰ってるのが気に食わないの~」
後輩の魔創術師試験合格祝いに嫉妬するなよ……。
「マイン様の大剣もマイン様が魔創術師の試験に合格した時にリエル様が贈った物っすよ」
お前も貰ってるんじゃねぇか。
「んじゃ、さっさと工房に行くか」
「はい」
「了解っす」
マインを放置して工房に向けて足を進めるとソウマとリュインもマインを放置して付いて来た。
「あ~、待ってよ~」
マインが慌てて後を追って来るのが確認できたのでそのまま目的の工房前までやって来た。
が、正面はこの街の他の工房と同様に店になっているみたいだな。工房は裏手のようだが……店の方から入って行けばいいのか?
いつまでも店の前で考えてても仕方ねぇか。とりあえず店に入って責任者に話を通して貰えば大丈夫だろう。
リュインが邪魔にならない場所に馬車を移動させて戻って来たので店に入る。
「いらっしゃいませ! あ、ごめんなさい。今はオーダメイドはやってないんですよ」
入店早々にこっちに顔を向けた店員らしき金髪ロングの美少女がオーダーメイドがどうのと言って来た……。ああ、メイド服のリュインを見て俺たちをそういった者を従えている上客だと勘違いしたか。
少女は今は街全体で鉱石が用意できないから仕事の依頼が来ても断るしかないのを申し訳なさそうに伝えて来る。
「仕事を頼みに来たんじゃなく、仕事をしに来た方だ。採掘時の護衛が必要なんだろ?」
って話だよな? てか、俺と見習い二人が依頼を受けて来ることって伝わっているのか?
「わ、本当ですか! 少し待ってくださいね!」
そう言って少女は店の奥の方へと駆けて行ってしまった。
「親方~、依頼していた護衛の方が来られましたよ!」
「だあぁ! うるせぇ! 今は殆ど錬鍛してねぇんだ! 叫ばんでも聞こえるわい!」
こっちまで聞こえてくる煩い位に元気な少女の声とそれに勝る野太い声が響く。
「おう、依頼を受けて来てくれたか……冒険者じゃねぇよな?」
店の奥、おそらく工房と繋がっているであろう場所から出て来た禿のおっさんは、俺たちをじろりと睨むように見回した後、俺に視線を固定して聞いて来た。
まぁ、子供二人にメイドと俺じゃ俺が代表だって判断するよな。
「一応嘱託騎士だ。今回が初仕事だけどな……」
「その歳で嘱託騎士かよ。子供が二人居るが、それなら大丈夫か」
後半は聞き取れなかったらしい。まぁ、見た感じで判断するなら俺らの戦力は不足している様にしか見えないからな。
嘱託騎士は騎士に指導したりする立場の実力者がなる事が多い。俺の見た目が学生位でも嘱託騎士ってだけで実力は見た目以上に高いと判断してくれるみたいだ。
リュインがいつの間にかダオンに何か見せてたが、後で聞いたら俺が嘱託騎士だと証明するものって事だった。いや、そう言うのって本人に直接渡されないのか? なんでお前が持ってるんだよ?
「俺はこの工房の代表のダオンだ」
「ルイ、さっき言った様に嘱託騎士だ。こいつらは魔創術師見習いのソウマとマイン、一応今回の護衛の手伝いだな。メイドは……いいか」
そうっすね、とリュインの呟きが聞こえる。リュインは役割的に今回の依頼の護衛には加わらないだろう。戦力としては多分俺たち四人の中で二番目なんだが……。
「よろしく頼む、内容は分かってるか?」
「一応、今回の依頼分の鉱石を採掘している間の護衛で良いんだよな?」
「ああ、それだけだが、採掘場所に居座る魔物は儂らが採掘をしている事に気が付くと必ず襲って来る」
見つからないようにやっても、採掘時は必ず音が出るからそれを聞きつけてやって来ると……。
「で、襲われたからって倒してもらっては困る、殺さないように足止めすることになるが大丈夫だよな?」
まぁ、相手は亀だろ? なら転がせば良いだけだ。
サイズとか重さは実際に見ないと分からないが、転がすぐらいなら魔法で何とでもできるだろう。
「え~、一匹ぐらい倒したい!」
話が面倒になるからマインは黙ってろ。
「んんん~、まぁ、やれるならやって見りゃ良いんじゃねぇか」
ダオンのおっさんはマインとマインの武器をじろじろと見た後軽く許可を出してしまうが、後でこの時にマインの実力と装備の性能を確認して無理だと判断したんだと分かった。
「自分も殺ってやるって顔してるが、ソウマは止めとけよ。防御の高い魔物を倒せるような魔法を鉱山内でぶっ放したらどうなるか分かんねぇからな」
「確かに、そうですね」
ソウマはマインには無理だと言外に言われているのが、自分になら周りの被害を気にしない魔法でならやれるという事を判断してあっさり引き下がる。
ソウマもマインもお互いに張り合うのは良い事なんだか悪い事なんだか。
普段の鍛錬している時は良いんだがこういった任務中なんかは自重してくれないかなぁ。
「それじゃ、採掘要員を集めるから鉱山へ出発するのは明日になる。宿の方は手配しておくから今日はゆっくり休んでくれ。ミリル! こいつらを案内してやってくれ!」
「は~い!」
おっさんが奥に向かって声をかけると,先ほどおっさんを呼びに行った少女が戻って来た。
「いつもの所で良いんですか?」
「おうよ、こいつを見せればいつも通り手配してくれる」
と、少女に木板の様な物を渡している。
「じゃ、案内しますね!」
「明日はよろしく頼むぜ!」
おっさんに騒がしく見送られて店を出る。リュインが馬車を移動させてきたことを確認すると少女の案内で宿に向かった。
「その子たちが大剣と杖、メイドさんは短剣、お兄さんは……素手?」
宿に向かっている最中、少女がマインたちの武器を見た後、リュインの隠し持っている武器にまで気づいたが、一人丸腰である俺を疑問に思ったのか、そう問いかけて来る。
「いや、今は無いが本来の武器は弓だな」
「弓!? それに、今は無いって、どうやって魔物と戦う気ですか!?」
魔物ってミネラルタートルだろ? しかも倒しちゃダメな奴。倒すにしても武器は効き難いんじゃないか? 魔法使うだけなら無手でも十分だろ。
「問題無いよね?」
「そ~ね、師匠なら素手でも大丈夫よ~」
今の俺の攻撃力なら、素手でも堅い程度の防御力じゃ問題にならないのは確かだが……。武器が有った方が貫通のスキルが発動できるから楽なんだぞ。
「まぁ、武器は有った方が良いが、どうにでもなるしな……」
金も無いし……。
「ああ、もったいないなぁ、強そうなのに武器持ってないなんて……」
「師匠に武器持たれたら更に勝ち目が無くなるわよ!」
安心しろマイン、武器も魔法も無しでもまだ全然負ける気がしないからどの道変わらん。
「作りたいなぁ……」
武器をだよな? 上気した顔で上目遣いに見つめて来ないでくれ。なんだこいつ。
そもそも金が無いからオーダーメイドなんてできないからな!
「はぁ、はぁ、最近鎚を振るってないんですよ……」
素材が無いからだろ! ってか、お前ただの店員じゃなくて鍛冶師か!?
「師匠がまた厄介なのに絡まれてる……」
「よくやるわよね~」
ソウマは傍観してないで助けろ! そしてマインは厄介なのの一人だからな! 後、後ろで笑ってるメイドも!
「今は(金が無いから)要らねぇが、作るなら弓だ」
「剣とか似合いますよ?」
似合わねぇよ、剣術なんて習ってないから構え方一つでも適当なんだからな。
それに、剣なら適当なボロいのがアイテムボックスに有る。
それも相手がティリアスみたいな奴じゃなけりゃ使う必要はない。
「作るなら弓だ。それ以外は要らねぇ」
「う~ん、射撃武器は得意じゃないんですよ」
知るか、頼んでもいねぇんだから作らなくて良いからな。そもそも素材が無いだろ。
「はぁ~、欲求不満です。あ、マインちゃんには明日前に作った大剣貸すね。多分ミネラルタートルの甲羅を貫ける出来にはなってると思うんだけど」
「ホント!? やった~!」
余計なことするな! てか、何時の間に仲良くなった!?
「女の子って分からない……」
ソウマが俺と同じように疑問を抱いたようだが、こいつらを世間一般の女に含めるのはどうなんだってところが有るからあんまり気にするな。




