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異世界人~檻中の英雄~  作者: リジア・フリージア
序章 第二幕の始まり
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序章1話 LVオーバーの異世界人「まぁチートだよな」

 この世界は俺がこの世界に来る直前までプレイしていたゲームの世界だ。

 俺はそのゲームの世界に勇者の立ち位置で召喚された。とは言え、俺は勇者ではないようだ。

 この世界に来た当初、ゲームに酷似した状況に気が付いて、俺に話しかける王様たちの話を聞き流しながら考えるだけでアッサリと宙に開いたメニュー画面からステータスの確認をした所、俺の称号は勇者ではなく異世界人だった。

 夢の中で受けを狙うなよと思ったが、すぐに目が覚める夢だからと深く受け止めていなかった。

 だが、チュートリアルやら何やらをすっ飛ばし、魔物を倒したりして随分と時間を過ごしたが一向に目が覚める様子が無い、終いにはその夢の中で眠くなってくる始末だ。夢の中で寝て起きたら目が覚めているかと思って宿に泊まり眠ってみたりもしたが、結局は夢の中で一晩過ぎただけだった。

 その後も、何日経っても夢が覚めない……。

 そして、俺は理解した。これは夢なんかじゃなく現実なのだと……あのゲームの中、もしくはそれに酷似した世界に俺は迷い込んだのだと……。そう理解した俺は、元の世界に戻る方法を考える事にした。

 今俺が居る位置に本来居る筈の勇者の物語は、異世界(もちろん俺の居た世界とは違うゲームの中の地球)からこのゲームの舞台、サイファノートと言う世界に召喚され魔王を倒すという王道の物語だ。

 主人公が勇者として召喚されたのは、古に倒された魔王を復活させる為の器(生贄)として召喚された主人公の親友の願いを世界が叶えたからであったりするが、この辺りは主人公が俺と入れ替わっていることでどうなっているのかよく分からない。まぁ、その贄君は普通に魔王の器やってたんだけど……。

 それでも、あてにできる物は本来の勇者が歩む物語だけだ。そして、その勇者の物語が行き着くエンディングの中に元の世界に戻り、親友のみの居なくなった日常に戻るというものがある。確か……『そして、彼の居ない日常が続いていく……』と言ったエンディングタイトルだったかな? そのエンディングは、仲間となるメンバーの誰一人とも絆を結ばなかった(全員の好感度を高くしない)場合のノーマルエンドだ。

 仲間キャラの個別のエンディングは全部主人公がサイファーノートに残る話だったから除外しなければならない。

 クリアデータを一部引き継いで周回することでフラグが立ち、辿り着くことのできる魔王の器(親友)救済エンドも元の世界に親友と共に戻れるエンディングだが……その魔王の器(親友)と俺では帰る世界が違う上に今が周回プレイの筈も無いのでこれも除外した。

 よって、元の世界に帰れる可能性があるのはノーマルエンドだけとなる。


「だから、魔王の器をぶっ殺したんだよな……」


 最初のチュートリアル的なものをすっ飛ばしたせいで本来最初に仲間になる筈だった騎士は仲間にならなかったし、個別エンドを避ける為に道中仲間になる筈のキャラを無視して仲間にせず単騎クリアってセルフ縛りプレイになってしまっていたけど、仲間に経験値を回さなくていい分自分のレベルを最大まで上げて魔王の器の単独撃破に成功した。


「結果は……この世界は俺に優しくなかった。そもそも、俺はなんで帰ろうとしてたんだ? ああ、何か適当な目的が欲しかったのか……」


 こうして元の世界に帰れていないのは、まぁ、仕方ない……。多分俺がこの世界に迷い込んだことは、勇者と言う自分を倒せる者をこの世界に喚ぶと言う魔王の器の願いに応えた世界の意思とは関係が無いのだろう。俺に勇者として有る筈の能力が無いんだから、俺は別枠でここに居る気がする。

 このゲームで本来勇者が持っていて、物語にも大きく関わって来る能力が無いのには軽く絶望した。その能力はこの世界の住人でも生まれながらに持っている者と持っていない者が分かれ、基本的に後天的には発現しない能力だからだ。

 勇者と言う称号の代わりの異世界人の称号に付いていた能力が無かったらもっと早くに詰んでいたかもしれないな。


「まぁ、ラストバトルを終えても元の世界に帰れてないんだから、現状は詰んでるんだけどな……」


 まぁでも、元の世界に帰りたい思いは既に無い、異世界人として俺に備わっていた能力に『限界突破(オーバードライブ)5』と言うのが有り、俺はこの世界の者より5つだけ上限を超えてレベルが上げられる。

 この世界中でもレベル上限に達している者は居ないに等しい中、その上限を超えている訳だからこの世界で生きて行くこと自体は全く問題が無い訳だ。レベルが上限に達している俺にとって、この世界は最早脅威ではない。奥の手もあるしな……。

 このゲームに続編が出たとして、その続編の中で前作主人公が仲間になった場合も、加入時にレベルがMAXなんてことは先ず無い……つまり、最大レベルに達した上に更に5つレベルの上がっている今の俺は素質の差を無視すれば、勇者や今後現れる可能性のある英雄以上の戦闘力が有る事になる。大概の相手は一方的にボコれる……だから、荒事に関しては問題無いんだろう。

 俺の思いつく唯一の帰還方法は機能していない。そうなると本当に手が無いんだよな……。俺の持ちうる知識もゲームのシステム的な物と設定、それと、もう既に終わってしまった勇者のオープニングからエンディングまでの物語だけだ。


「ここからは俺の知らない世界……」


 レベルがカンストしてるって現状じゃ帰るよりもこの世界で生きて行く方が楽しそうだ……家族や親友の事は気になるが、この世界でやって行くしかないんだよな。


 とりあえず、魔王の為に用意されていた城からは無事に抜け出して今に至る。

 まぁ、道中の敵はぶっ殺して来ていたから帰りもすんなり行ったんだけど……。


「とりあえず、魔王を倒したって報告をしないといけないのか?」


 この世界に来た時に話していた王様の話は聞き流していたが、その話の内容は魔王を倒してくれと言うものだった筈だ。

 まぁ、魔王は復活していないから魔王の器である勇者の親友が魔王って認識されていたんだが、その親友君(俺がぶっ殺した彼)は実際には何もやってないんだよな……むしろ、強い意志で魔王の復活に抵抗して自分共々魔王を倒す存在を望み、その願いを世界に認められ勇者を喚んでいる(まぁ、今のこの世界じゃ、勇者は存在せず、その立場に居るのは俺だからどうなってるのか分からないけど)。この魔王の器君はゲームでは主人公なんかよりよっぽど勇者と言える魂の持ち主だとプレイヤーたちからの評判は高い。

 各地で魔王の仕業とされている悪さは、魔王の復活によって目的を達成しようという組織が騙った物や、魔王の名を利用して好き勝手やっていた連中の仕業だからな……本当に彼は何も悪い事はしていないんだよなぁ……。


「もしかしてあの組織(あいつら)が残ってるから俺はまだ帰れないのか?」


 いや、ゲームでもあの組織については放置されたままエンディングを迎えた。プレイヤーには続編のフラグだなんて言われているし、その組織のやっていることはゲームの舞台になったハインライト王国だけに限らず、サイファノートの全域、世界中に及ぶ。そんなものを解決しないと帰れないなんてのは考えたくも無い。どうしても帰りたいわけじゃないし、もう放置で良いだろう。


「とにかく、戻ってみるか……」


 戻ると言っても最初の場所とここってハインライト王国の端から端だ。ゲームの時のようにマップから目的地を選択すればすぐにそこに行けると言う訳ではない……。移動手段は当然のように徒歩だ。馬になんて乗れないから馬等を購入して使うという選択肢も無い。そもそも、装備とか必要な魔法石の調達に使ってしまっているのでそんな金を持っていない。仲間がいない分装備代なんかには余裕が有る筈なんだけど……ゲームの時のように金が集まらないんだよなぁ。ゲームと違うからって納得はしていたけど魔物を倒しても金が手に入らないのは痛いよなぁ……。街で仕事を探すか、人型の魔物(盗賊)から取るぐらいしか金を集める方法が無かったんだから仕方ない。


「街中の仕事って言うのも……隠しキャラの参入フラグなんだよな……」


 バイトし過ぎるとそのキャラが仲間になって初期好感度も高いなんて状態になる。この世界でそのキャラが居るかもバイト回数と言うフラグが有るのかも分からないけど警戒するしかなかったんだよな……他に仲間の居ない現状じゃ個別エンド待った無しな位の好感度設定だった筈だしな。その懸念があったせいで、金策の為に国中の人型の魔物(盗賊)を探し回る羽目になったんだよ、ちくしょう。

 でもまぁ、もうそれを気にする必要も無いんだよな……。

 ノーマルエンドルートは破綻した。単騎縛りをする必要も無い。とは言え、今更仲間なんて居ても邪魔なだけなんだけどな。

 まぁ、金に関しては、予想した元の世界に帰る為の方法を実行しての結果だが王様の頼みは達成したんだ、世界を救った報酬ってやつに期待しよう。





 数十日後、ハインライト王国の王都。そこのハインライト城に戻って来た俺は、融通の利かない門番や見回りの兵士なんかを身を隠すスキルを使いスルーして王様の前にたどり着いた。


「は? 誰だお前は?」


 だが、その王がふざけた事をほざきやがった。

 ぶち殺したい衝動を抑え込み、俺が勇者(本当は違うけどこいつ等にはそう呼ばれてた)であることと魔王を倒した事を話すと……。


「ケッ、またこの輩か……魔王が倒されたと世界の声が届いてから何人目だ?」


 全く信じやがらねぇ! ってか世界の声とか何人目ってなんだ!?


「誰かティリアスを呼んで来い、とっとと片付けさせろ」


 このなんか投げやりな態度の王が言うティリアスってのは、俺がチュートリアルすっ飛ばしたせいで仲間にし損ねたこの国の騎士だった筈だ。


「団長は現在遠征中の為私が相手をしますよ」


 王の側に仕えていたメイドの一人(結構可愛い←重要)に呼ばれてやって来たのはティリアスではなく、片目が隠れるように伸ばした金髪をうざくファサァってやっている優男……確か、ハインライト騎士団の副団長だった筈だけど……何て名前だったっけな?

 ってか、今ティリアスの事を団長て言わなかったか? 団長って言ったらハインライト騎士団の団長だよな? 勇者の仲間として旅に出ていなければ副団長を追い越して団長に出世していたのか……。まぁ、ティリアスの個別エンドは、好待遇でハインライト騎士団に入った主人公が魔王討伐の功績で団長になったティリアスと共に数々の武功を上げるというものだったから、そういう流れになるのかもしれない。

 で……いつの間にか戦わされそうになっている相手はそんなティアリスじゃなく……。


「ティリアスが団長って事は、後輩に抜かれた副団長か……雑魚だな」


 え? 聞こえてる? 聞こえるように言ってんだよ、実際にレベルカンストしてる俺を相手に一対一とか自殺行為だろ? まぁ、この世界の連中には俺のようなシステムメニューみたいなスキルが無いから、敵のステータスを確認して命中予測やダメージ予測ができない訳だし、仕方がないな。

 まぁ、システムスキルが無くても本当の強者ってのは相手の実力を感じ取るもんなんだけどなぁ……。この辺りはゲームのスキルだけでは語れない所だよな。


「とりあえず、倒すか……」


 よし、セルフ縛りプレイで溜まった鬱憤や、王の態度やら何やらで溜まったものを吐き出させて貰おう。


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