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一章1話 崩壊する街 「刻印済みは高価いんだぞ!」

 港街ツヴァイティア、フェヴリエ大陸の東端に位置する大陸外への行き来と交易の中心地になるそうだ。

 船旅の間はずっと甲板で海を眺めていたが、最後の方は話し好きの船客に目を付けられ、そいつがやたらに話しかけて来るから色々とフェヴリエ大陸の事について聞いていたんだ。

 情報源としか見て無かったが機嫌良く色々教えてくれたから問題は無いだろう。

 聞いた話によると、フェヴリエ大陸で海から上陸できるのはツヴァイティアのある大陸の東側の港や海岸からだけらしい。他の三方は山脈にが広がっていて海沿いも険しい崖になっていると聞いたが、全部の場所がそうなのか? 山脈が広がっているって事は人の手が入り難いって事で調べていないだけかもしれないが……人の生活圏内を離れれば人を襲う魔物が出て来るような世界だから簡単には調べられないのかもな。

 フェヴリエ大陸に国は1つって、ファンタジー世界で小さな島国って訳でもないのに1つしか国が無いってすごいな、だが、大陸内での国家間の争いは無いって事だな。国が1つなら争いになりようがない、内乱は別だが……。

 気候は北が寒くて南は暑いってところか。暑いのも寒いのも得意じゃないんだが、とりあえずはどっちも避けて東・中央・西方面で活動するか。

 とは言え、何をするにしてもまず資金が必要だ。当面の生活費なら残っているが、やはり慣れた武器である弓が欲しい。今の俺のレベルなら子供用の練習弓でも大ダメージが出るんだから、ランクは落ちても良いから予備を用意しておくべきだったな。

 その弓を用意する為にも仕事を探そう。確か広場に掲示板が有るんだったか? 街によっては冒険者やフリーター的な者に仕事を依頼する用の建物が有るようだが、ここはどうなんだろうな?

 とりあえずの目的を決め港を出る。

 目的の場所は戦闘マップで確認してそれっぽい場所を探しながらその辺の人にでも聞けばいいだろう。

 そうして住民の話を聞きけば、この街のそういった場所は冒険者への依頼を集め斡旋している場所が用意されているらしい、戦闘マップで確認しながらその斡旋所に向かう。


「っと……」


 斡旋所のある通りに出たが……戦闘マップに映る前方の赤アイコン3つが気になる。

 俺に敵意を向けている敵性ユニット以外にも、例えば攻撃性の高い魔物なんかが赤アイコンで出て来るので、街の外でもない限りいちいち気にしてはいられないが……。


「カツアゲとかそんな感じ?」


 赤アイコン三つが白のアイコンを囲み路地裏の方へ誘導している。拐かしか?

 前方を確認して赤アイコンと思われる人物を探すと白いローブを着た4人の集団が目に付く。背丈的に大人の赤アイコンが3つ、俺より少し年下ぐらいと思われる白アイコンが1つ、全員同じ格好だが……。

 子供っぽい白ローブだけが白アイコン……やっぱり拐かしか? それだと子供と赤アイコンが同じ格好していたり大人しくついて行っていることに疑問が出て来るんだが。


「ちょっと様子を見るか……」


 拐かしなら……あの赤アイコン共をぶっ飛ばさないといけない。ハインライトではエンディングに行く事だけしか考えていなかったので、こういった感じのものも見ないようにしていたが、余裕が有るなら気に入らない奴をぶっ飛ばすのも悪くない。


 戦闘マップを使って赤アイコン共に気付かれないように尾行する。あ、隠密(ハイド)使えば良かった。

 隠密(ハイド)を使って姿を消し会話が聞こえるぐらいにまで赤アイコンたちに近づく。

 無言かよ……。そりゃ親切に状況を話して居たりはしないか。


「あ……」


 白ローブの4人がそのまま路地裏に入り込む寸前、赤アイコンのローブの袖口から白い宝石……いや、刻印されているから魔法石か。魔法石がこぼれ落ち、赤アイコンがその事に気付き声を上げる。

 腕輪にでも取り付けていた魔法石が外れたのだろうか?

 魔法石が簡単に外れるような状態だった事に気づかなかった間抜けな赤アイコンは慌てて落とした魔法石に手を伸ばす……が、赤アイコンの手が魔法石に届く前に、別の掌が魔法石を掠め取る。


「な!」

「馬鹿者! 今のそいつに魔法石なんぞ触らせれば!!」


 なんか白ローブの子供が魔法石を拾った事に赤アイコン共が慌てているが、その理由はすぐに理解できた。

 子供の持った魔法石が暴力的な光を放つ。その輝きはゲームで何度か見た事のあるものに似たエフェクト。


「こいつはもう駄目だ、逃げろ!」


 魔力暴走(オーバードライブ)、魔力が高い子供が、その魔力の制御方法を持たないまま魔法石に触れた際、その者の精神状態が不安定な事によって引き起こされる魔力の暴走、それは、その者の全魔力を破壊の力に変換し周囲を消し飛ばす。性質が悪いのは周囲は消し飛ばすが暴走した本人は自身の魔力に守られて無傷と言う点だ。だが、この世界の者は魔法石に触れただけで周囲を消し飛ばすような者が存在することを容易には認めない。巻き込まれ生き残った者も、暴走の痕跡を目にした者も必ず暴走した者を世界から排除しようとするだろう。


「まぁ、周囲に被害が及ばなきゃ良いだけだがな!」


 暴走のエフェクトに気付いた時点でフラッシュタスクは発動させている、引き延ばされた思考の中でメニューを操作してアイテムボックスから魔法石を取り出す。両手の各指の間に挟むようにそれぞれ4個づつ、計8個の魔法石。黄色が4つと無色が4つで黄色の物はすべて同じ魔法地壁(アースウォール)が刻まれている。無色のは防護(プロテクション)2つ魔障盾(レジストシールド)2つ。

 周囲に被害を出さない為に地壁(アースウォール)で四方を囲み、耐久値の有るオブジェクトである地壁(アースウォール)防護(プロテクション)魔障盾(レジストシールド)で防御力と抵抗力を底上げする。

 地壁(アースウォール)も少し斜めに設置して暴走の衝撃を全て受けずに一部を空へと逃がす。

 暴走する子供の魔力が戦闘マップで確認した魔力ならこれだけやれば十分に防ぎ切れると思うが……。この世界がゲームとそっくりで、そのゲームで知っているイベントが普通に起こっている点が不安材料か……。このまま何もしなければおそらくこの港街が半壊する程の暴走が巻き起こる。それだけ大きな出来事、これが……この状況がもし、ゲーム内のイベントに相当するものなら、この子供の暴走には補正がかかるかもしれない。

 そうなれば、これだけの魔法では足りなくなるだろうが、暴走を防げるような魔法石をこれ以上持ってはいない。

 なら、今できる最善を込めるしかない。暴走には暴走を……同性質の力をぶつける!


「あああああああああああああああああああ!」

魔石懐放(マナブレイク)地壁(アースウォール)! 防護(プロテクション)! 魔障盾(レジストシールド)!」


 それは本来の勇者君が使用可能だった技能、魔石懐放(マナブレイク)。本来の限界以上に魔力を込め魔法石を暴発ともいえる強制発動させることで適性ランク以上の魔法を発動させたり、威力を引き上げたうえで制御する。それは威力が少し弱まった魔力暴走(オーバードライブ)を意図的に発動させ制御している様な物だ。

 子供の周囲に4つの黄色い魔法陣が現れ、暴走の直前に地壁(アースウォール)は想定通りに設置された。直後に暴走が始まるが、地壁(アースウォール)魔石懐放(マナブレイク)を使用したことにより想定以上の性能を発揮し、子供の暴走を受けとめ、或いは空へと受け流す。


「ああああぁぁぁぁぁぁ…………」

「やっぱ足りねぇか!」


 暴走の衝撃が地壁(アースウォール)を削り始める感覚が届く。拙いと、更に魔力を魔法石に注ぎ込み、それ以上の浸食を防ぐが……唯でさえ大量に消費していた魔力がごっそりと減った。こんなに魔力を消費するのは初めてだ。


「あぁ…………ぁ…………」


 壁の向こうの衝撃と子供の声が呼応するように弱まって行く。


「何とかなったか?」


 暴走の衝撃と子供の声が消えたので魔法を解除する。すると同時に8つの魔法石は粉々に砕け手から零れ落ちる。

 魔石懐放(マナブレイク)の代償だ。魔力暴走(オーバードライブ)は暴走者の全魔力を破壊の力に変えて放出する。それと同等の力が代償無しに行使できる筈も無い。


 暴走の治まった場所には、暴走の衝撃でボロボロになったローブを纏った無傷の気絶した少年と僅か一マスにのみ残る破壊の痕跡。

 後は暴走のきっかけになった魔法石だが、拾って刻印を確認しても俺の憶えているどの刻印とも違う……やっぱり、国が変われば刻印も変わってくるな。

 とりあえず、また暴走されたら困るからアイテムボックスに突っ込んでおこう。


「で、もうひと悶着ある訳か……」


 困るな、今の魔石懐放(マナブレイク)でほとんど魔力は使い切ってるんだぞ。

 戦闘マップで周囲確認、暴走の影響で周囲に居た人たちはとっくに逃げている。あれだけの破壊の力が空に打ち上げられていたんだ、余程の馬鹿でもなけりゃ逃げるよな。でも、ばらけて建物の影からこっちの様子を窺っている赤アイコンが確認できる。さっさと逃げやがった子供以外の白ローブだな、って早速攻撃してきやがった!

 赤アイコンが潜む建物の影から一斉に光の矢が飛んで来る。子供には当たらないように俺だけを狙っているみたいだが、動けばどうなるか……。下手に敵の技量を信じる訳にもいかないか。

 ステータス的な差が激しいから当たった時の衝撃だけで痛くは無いんだが。


「問答無用で攻撃して来たって事は、片付けていいんだよな?」


 やられたのを返してやるよ、アイテムボックスから白い魔法石を取り出す。さっきしまった読めない刻印の魔法石じゃなくハインライトで入手したものだ。


光矢(ライトアロー)


 魔法の見た目的には殆ど赤アイコンたちの放った物と変わらない。ただし、命中精度は命中予測を使い100%だ。それを続けて各赤アイコンの頭に一発づつ撃ち込む。


「「ぎゃあぁぁぁぁ!」」「ぐっ!」


 ヘッドショット、クリティカルが発生して各々を一撃で戦闘不能にする。

 はい、掃除終了。周辺被害は暴走の中心部のみ人的被害はな……


「……え?」


 視界が傾いたと思ったらそのまま横倒しになって受け身すら取れず地面に倒された。いや、違う。倒された訳じゃない、俺が勝手に倒れたんだ……と言うか身体が動かない。なんだこれ?

 ステータスに状態異常は見られない。いや、状態異常は無いが……MPが空だ。

 ええっと……なに? この世界MPが切れると動けなくなるのか!?

 この状況で動けないとかどうすんだよ!!

 あ~、でも俺の横でぶっ倒れてる子供も暴走の影響でMP空なんだよな……俺は魔力暴走(オーバードライブ)の事を知っているんだから気づくことも……出来るか! そこまで考えてねぇよ!

 兎に角MPの回復を待つしかねぇな。ゲームだったら戦闘終了で全回復なんだが、ここじゃそうもいかねぇんだよな……過去に俺のMPが回復したのは魔力の回復薬を使った時か眠った時だ。他にも回復手段が有るのかもしれないが、知らないので置いておいて、魔力の回復アイテムはアイテムボックスに有るが動けないので使えない。手中に取り出す事はできても掴む事すら出来ないから駄目だ。

 もう寝るしかないんだが……この状況で寝ろと? おいおい、無茶だろ。

 でも仕方ないから寝るしかないんだよな……ハァ、寝るか。どうか無事に目覚められますように……。

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