表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界人~檻中の英雄~  作者: リジア・フリージア
序章 第二幕の始まり
12/53

序章11話 魔王軍の生き残り「面倒なのが……」

 今回俺が各地のイベントをすっ飛ばしているせいで生き残っている魔王の配下は多い。とは言っても、魔王の配下って魔王の名を利用して好き勝手やっていた奴が大半なんだが……。

 そんな中でも本来は勇者たちと各地で衝突し、最後は魔王城の前で勇者たちを単身で待ち受け、勇者に一騎打ちを挑む者が居る。まぁ、俺が行った時は何故か居なかったんだが……最初のイベントを発生させてないからか?

 とにかく、そいつは勇者との一騎打ちに敗れると勇者一行を魔王の元まで案内してくれる。

 その時のセリフが……。


「オレじゃあの人の願いは叶えられない、だから……あんたが魔王を倒してあの人の願いを叶えてやってくれ!」


 この台詞の、あの人と言うのが本来の勇者君と同じ世界から魔王の器として召喚された勇者君の親友の事で、魔王と言うのが器君の中で復活の時を待っている魔王の事だ。こんなセリフが出るのは、こいつが器君が自身の中に居る魔王を復活させない為に抑え込んでいる事を知っているって設定だからだ。

 一週目だとこの後魔王を器ごと倒すしかないんだが、二週目以降に条件を満たしていればそいつが案内だけじゃなく仲間に加わる。まぁ、仲間になった途端に弱くなるを地で行く為、足手纏いでしかないが……そいつを出撃させかつ戦闘不能になっていない状態で魔王戦に勝利すると色々ご都合主義が働いて器君を助ける事が出来る。そして勇者と器君が元の世界に帰るのが、勇者が元の世界に帰る事ができるエンディングの二つ目だ。

 俺が例え今の状況で二週目であろうと、器君と他人の俺には到達できないエンディングの事をなぜ思い出しているかと言うと……。


「見つけたぞ勇者! オレと戦え!」


 今思い返していた奴、獣人の闘士アルトが行く手を遮っていたからだ。

 しかし、おかしいな……戦闘マップで敵性の赤アイコンだったから隠密(ハイド)使って姿を消していた筈なんだけど? 獣人のだし鼻は利く筈だが俺の隠密(ハイド)はそういったものまで隠す、そうじゃ無けりゃ姿を消した所で魔物には簡単に見つかってしまう。

 ならなんでこいつ、アルトは姿を消している俺に気付けた? ティリアスみたいなスキル持ちって訳でもない筈なんだがな。俺の憶えているアルトのステータスには、敵の時も味方の時もティリアスの騎士の直感に類似するスキルは無かった筈だ。

 今のアルトのステータス確認ができれば良いんだが、仲間になってない状態で確認する方法は戦闘メニューでの敵ユニット情報か……あれってスキルまで見れたっけか? 普段は攻略本なんかで覚えたデータを当てにしているから敵のステータスなんてレベルとHPMP位しか見ないからなぁ……あ、あと称号か。姿形は同じでも良いアイテムを落とすレアユニットが偶に居るから確認するようにはしてたんだよなぁ、結局ドロップアイテムなんて一切出なかったけど……。


「人違いだ」


 隠れて通り過ぎようとしても移動して道を塞いでくる。どうやってか本当に俺の位置を把握している様子なので隠密を解除して惚けて見せる。


「いいや! さっきまでは薄かったけど目の前にして確信した! お前から城に残っていた勇者の匂いと同じ匂いがしている!」


 勇者の匂い!? おいおい、この言い方だと隠密で隠してても気づけるような嗅覚を持って居るって事か? そいつは……スキルじゃねぇな。てか、こいつにそんな設定有ったのかよ!


「他人の空似だ」


 臭いが似てるって誤魔化せる……訳ないよなぁ。


「問答無用!」


 誤魔化すとかそんなレベルじゃないな、もし本当に人違いでも……気にしないか、こいつ魔王側の奴だからなぁ。まぁ……馬鹿だが。


「ゴフ!!」


 思いっきり大振りに拳を振りかぶって殴りかかって来たので、軽く躱してカウンターのボディブローを叩き込む。勿論手加減はしているので戦闘不能止まりだが。


「これ放置したら死ぬよな……」


 気絶したアルトを見下ろしながら思考する。

 こいつは元魔王軍所属だ、他の場所じゃ知らないがこの国で獣人と言えば魔王の配下になる。すでに魔王が倒された現状では人々から隠れて暮らしているらしい。という事は、こいつは多分単独で勇者、俺を探していたんだろう。おそらく戦闘不能状態から助けてくれるような奴は居ないだろう。元より大半の魔王配下に仲間意識なんてものは無い。

 ゲームの設定でも魔王、と言うより器の方との関わりは深いようだったから魔王と一緒に器君を倒した俺に恨みを持っていてもおかしくないが……こいつ、設定的に子供時分の成長の早い獣人故に見た目は俺と同じぐらいの歳に見えるが、実際は城で俺の世話役になっていたメイドのシィルと大差無い歳なんだよな……。

 さすがにガキをこのまま放置して見殺しにするのも気が引ける。

 とは言っても、普通に回復させたんじゃまた襲い掛かって来て面倒だよなぁ。


「こいつの鼻がどこまで利くのか分からないが、一時的にでも鼻を潰すために汚物の中にでも放り込むか。それから回復だな」


 そんじゃ、こいつが死なない内に盗賊のアジトでも探そう。そこなら屑共の糞溜が有るだろう。ついでに盗賊狩りだ。

 戦闘マップを今表示できる最広域に調整する、所詮は戦闘マップなので現在のエリア外の事は分からないが移動しながら探していけばそのうち当たるだろう。

 ステータスに物を言わせアルトを担ぎあげる。こいつ、ハッキリ言うと俺よりも鍛えられた良い体格しているんだが……軽い。俺の方は元の世界では帰宅部の上に休日はもっぱら家でゲームだったから、通学や体育の授業程度でしか鍛えられていない。こっちに来てから毎日戦ってたから少しは鍛えられているがアルト程じゃないんだよなぁ……実際に戦いに身を置いていた月日が違うんだ。それでもこいつを軽いと感じるのはそれだけ俺のレベルが高いからだ。身体自体は多少しか鍛えられていないのにレベルによってステータスが上がっていて動きが人間を超えている……このちぐはぐ感、ずっとこの世界がゲームだって認識で行動してしまうのも仕方ないよなぁ……。

 まぁ、今はこれを現実として認識してるから良いんだがな。

 お、適当に考え事しながら歩いてたら丁度良いのが戦闘マップに引っかかった。

 数は6、全部赤アイコンで称号は盗賊、当たりなのは良いが……盗賊多すぎないか? ゲームではそんなに出て来なかったと思うんだが、もしかして俺が勇者がこなすイベントを無視してたからその影響で治安が悪化してる? 分かんねぇ、まぁ、治安とかは国が、ティリアスとかが何とかするだろう。

 治安とかの事は置いておいて、戦闘不能で気絶中のアルトを道具と見做し隠密(ハイド)に巻き込んで盗賊共の後をつける。

 本来は自分と所持品だけに適用される隠密だが、こういったシステムは案外条件が緩い。それは、戦闘メニューが意識を切り替えるなんていういい加減な方法で普段でも使用可能になるのが分かり易い例だ。

 なので、スキルに合っていない事でもやってみると上手くいったりすることがある。今やってる他人を隠密に巻き込む方法も上手くいった一つだな、対象に意識が有ると無理だが……アルトに意識が無く、俺が担いでいる状態でさらに俺がアルトを物として認識することでアルトの事を俺の所持品としてシステムを誤魔化している感じなんだろうな。その認識で合ってるかは分からんが……。

 とりあえず盗賊共を尾行してアジトに案内させる。

 アルトと戦った街道から随分外れ木々の生い茂る森の中にぼろい小屋がひっそりと建っていた。とは言っても、この辺りはおそらく魔物の生息域じゃないな。魔物よりも肉食の獣類の心配をした方が良さそうな場所だ。

 あの盗賊共がいつからこの場所を根城にしているのか分からないが、対策はしてあるんだろう。戦闘マップで確認したが、周囲に獣の反応は無い。ただ、小屋の中にも何人か盗賊が居たようで屑が増えたが……問題無い。

 アイテムボックスから黄色い魔法石を取り出して一発。


地隆槍(グレイブランス)


 小屋に隠れて魔方陣は見えないが、盗賊の小屋の下で大地が隆起して無数の槍を形作り小屋を盗賊諸共串刺しにする。すぐに魔力を散らして槍を消し魔法石をアイテムボックスに戻す。槍が消えると小屋が崩れ埃が舞い盛大に倒壊音が鳴る。ゲームならこの魔法は術者から対象の居る場所に向けて射程4で地面から地の槍が次々と隆起していく魔法なんだが、やっぱりこの世界だとイメージで細かい変化がつけられるな。今回は対象を中心に射程2の範囲が地の槍で貫かれている。そうイメージしたからな。

 戦闘マップの赤アイコンが消えた。どうやらうまく仕留められたようだ。うわっ、盗賊共弱過ぎ……まぁ、ランク3、中級の魔法と言っても俺のレベルで撃てばこうなるか。

 なんか壊れた小屋の隙間から赤いのが流れて来てるが気にせず目的を果たすことにしよう。


「とは言え戦闘マップじゃ探せないんだよな」


 戦闘マップを使えば、周囲の大体の地形や構造は把握出来るがピンポイントにあれを探すのは無理だ。だけどまぁ、臭いのキツイ場所を探せば良いだけだからすぐに見つかるだろう。


「と思ってたが……甘かったな」


 盗賊共自体の臭いが臭いだから探すのに苦労した。おまけにそこには木板で蓋がされて臭いが多少抑えられていたから余計にだな。


「いくら屑共でも汚物溜めを蓋もせずに放置は無いか……」


 むしろ屑共だからこそ自分のテリトリーじゃそう言うのは気にしそうだな。これが他人の敷地とかなら全く気にせず放置しそうだがな。

 まぁ、とにかく目的を果たそう。念のためにそこの周辺をグルグルと歩き回って俺が逃げる方向の匂いが残るのを誤魔化す。まぁ鼻は潰すんだが念のためだ。

 そんじゃ、糞溜めをオープン、アルトの顔をそっちに近づけて設置、崩れた小屋の木材をアルトの上に積み上げて~、アイテムボックスから白い魔法石を取り出す。


治癒(ヒール)


 よし、アルトの頭上に白い魔方陣が出現したことを確認できたからダッシュ! あばよ~っと。

 魔法効果が表れる前に俺はアルトに背を向けて駆け出した。しばらく走ると背後で凄い悲鳴が聞こえた気がするが、気のせいだな。

 街道まで戻って元の道を進んでいると悲鳴も完全に聞こえなくなった。いや、聞こえない、聞こえて無いしんだ、だから気のせいだったんだよ、気のせい気のせい。

 でも、この国を出るまでにまだなんかありそうだよなぁ……本来の勇者君が知り合う中でまだ出てきていないのって誰だ? 結構居るんだが、これから向かう先には居ない筈だ。ゲームとは状況が違うから移動している可能性が有るけど、そんなもの考えても無駄か……。まぁ、どうにでもなるだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ