最終章~エピローグ・後書き⑥~
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空と海を境界とする地平線の辺りが橙に色づき始め、白い太陽が昇ろうとしている。
僕はティノと初めて出会い、物語が始まるキッカケとなった町外れの浜辺へと来ていた。隣にはティノが、小さい身体を駆使しながら木製の船を動かしていた。
「どうしたのこの船」
「魔法で出したんだ。凄いでしょ!」
本心で言うならば喉仏が飛び出る程に凄いと思うが、ドヤ顔で胸を張るティノを調子に乗らせたくなかったので、「ふうん」と一蹴した。
ティノは見てわかるほどに肩をがくりと落としていたが、地平線から顔を出す朝日を見て目を輝かせていた。僕はティノが、やはりまだ心は子供なのだろうと再認識し、若干心配になった。
「さあ、まずはあの朝日に向かって舵を切りますか!」
「何格好つけたこと言ってんのさ子供のくせに、でもその意見には賛成だね!」
僕は心を躍らせながら、波に揺れる木製のボートへと飛び乗った。ティノもそれに続いて助走をつけて飛んだ。
「ティノ、用意は良い?」
「うん! それじゃあ行こう! まだ見たこともない世界に!」
僕の前に立つティノは満面の笑みを溢しながら、白光で光り輝く朝日を指差した。そして次の瞬間ティノが振り返ると、僕の背面に向かって指をさした。不思議に思って振り返ると、僕の大切な人達が僕達に向かって大きく手を振っていた。
「アッズリー! ティノちゃんを守るんだぞー!」
「無事で帰ってくるんだよー!」
「アッズリー! またなー!」
両親、フリッツ、ブラン、それにムーンまで僕達の旅の船出を見送りに来てくれていた。僕はムーンと目があったと思うと、彼女は唇にそっと人差し指を当ててみせた。慌てて視線を逸らそうとしたが顔面全体が熱くなり、何だか恥ずかしくなって「じゃあね皆ー!」と大声で叫んで誤魔化した。
ムーンはそれを見て、唇を隠して笑っていた。
(……またね皆、必ず帰ってくるから。その時まで、さよなら)
大切な人達に別れを告げた僕は、ティノと共に朝日の方に目を凝らした。
これから、僕達の壮大な冒険が始まる。これまで以上に辛い事や悲しい事がたくさん僕達の身に襲い掛かってくるだろう。でもその分楽しみや嬉しい事が経験できる。ティノと一緒にこれまでの人生で見たことがない最高の景色、”絶景”を目指して旅に出よう。
白い光に導かれながら、あの蒼い地平線を追い越して行こう。
リア王国という故郷を巣立ったアッズリ・アベントリエロは世界の闇を鎮める為、各国各地を転々とした。蒼い眼を両目に宿して闇に立ち向かっていく彼は後に、全世界の人々に「蒼眼の旅人」という愛称で語り継がれることとなった。
蒼眼の旅人、お終い。
後書き
蒼眼の旅人~traveler of gray eyes~を読んでくださった読者の方、ご愛読本当にありがとうございます。さて、あまり長々と後書きを書くつもりはありませんが、ここで読者様がこの作品を二回目以降も読みたくなる様な豆知識を紹介したいと思います。
まず登場人物が暗示する象徴についてです。まず主人公の名前についてですが、「アベントリエロ」はイタリア語の「avventuriero」が由来で、「冒険者」という意味を持ちます。次にティノですが、「ティノ」はイタリア語で「小さい」と言う意味で、「フルール」は「花」と言う意味を持ちます。そう、小さい花が冒険者を導くのです。
私は蒼眼の旅人を執筆する前から題名はすでに決めておりました。それで普段頭の中で想像している冒険物語を今回書いてみました。自分としては、この本を手に取ってくれた人が一人でもいれば本当に嬉しいです。
蒼眼の旅人を通して私、北斗白に関わってくれた皆様、表紙絵を担当してくださった灯籠様、心より深い感謝と共に、また何処かで出会えることを願っています。
ではまた、蒼い地平線の先でお会いしましょう。
カクヨムにて応援よろしくお願いします。
今回で蒼眼の旅人本当の最終回です。今までお読みくださった読者の方々に心より深い感謝を申し上げます。
イラストや近況報告は北斗白のTwitter、又は活動報告にて掲載しておりますので目を通してくださるとうれしいです。
@hokutoshiro1010




