第二章~ネビア・フォレスタ④~
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「……誰?」
瞼を開けると、僕は光が一切見当たらない真っ暗な空間に浮いていた。そして、目の前には人魂の様な形をした蒼い炎がふわふわと浮遊していた。
そして宙に漂う蒼炎が僕の脳内に言霊を飛ばした。
--我が名はルシオン。フォルツァの化身だ。一つ言う事があってお前に会いに来た。
「……ルシオン、何を言いたいの」
--よく聞け、後々の命をこの力に捧げてでも信念に誓いたいという覚悟があるのならば、我の名前を呼ぶと言い。フォルツァの真の力をお前に授けよう。それから、お前はまだ死ぬには早すぎる。あの娘がくれた試練を決して無駄にするな、健闘を祈っている。
「ティノがくれた試練って……」
僕がふわふわと浮遊する蒼い炎に手を伸ばそうとした時、急激に瞼が重くなって薄れていく意識と共に再び眠りの底についてしまった。
青白い満月の月光が薄墨色の岩々で形成された山道を照らす。僕が意識を取り戻した時には、時刻はすでに夜を指していた。
兵士に攻撃された時、自分を過大評価しすぎていて油断してしまっていた。旅というものは何時でも危険と隣り合わせにあるという事をわかっていたはずなのに、情けない。
「……ティノ」
ルシオンが言っていたティノがくれた試練とは、僕一人でも城に辿り着いて欲しいという見えない意図で繋がれているのだろうか。何にしろ、僕に見せたあの瞳のメッセージは何らかの意図があると考えて間違いないだろう。
それに、フォルツァの真の力とはどういう事なのか。今僕が使用できる二色の炎の他に別の力が存在するという事なのだろうか。
(……早く、ティノを取り戻しに行かないと)
僕は倒れている体を起こそうとしたが、先程の痛みが引いておらず、立ち上がるのにも苦労を掛ける状態だった。
「確か、フォルツァの白炎って鎮静だよな。という事は」
僕は左手に白い炎を宿し、兵士に蹴られた腹部に炎を当てた。すると、全身に回っていた痛みが呼吸をする度に鎮まっていき、腕や足を隈なく自由に動かせる程にまで回復する事ができた。
(やっぱり、思った通りだ)
どうやらフォルツァは自分が思った通りに炎の質を変えられるらしい。蒼の剛の炎で敵を攻撃し、白の柔の炎で自分の身体を回復する。そして白炎に薄蒼炎のコーティングが加わり、敵を染まってしまった闇の中から救い出すという能力を発動する。フォルツァについてネビア・フォレスタを攻略して大分理解してきた。
「さて、反撃の開始と行きますか」
僕は山道の一番上に暗々たる雰囲気を醸し出して(そび)え立つリア城を見据えて、今度こそ固く決意を結んで山道を歩き始めた。
「待ってろティノ、今助け出してやる。それと町の皆、僕がレッダを必ず止めて見せる。だから信じていてくれ」
この戦いが終わればリア王国を包む闇から人々を解放できる。最後の戦いに向けて、僕は様々な思いを胸に、山道を照らす暗黒色の夜空に浮かぶ氷輪に向かって決意を飛ばした。
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