第2話
俺達と騎士団はお互いに見つめ合いながら、隙を伺い、膠着状態が続いていた。
ゴブリンA「ギギィ!ムギィ!」
ゴブリンB「ギギィ!ムギィ!」
ゴブリンC「ギギィ!ムギィ!」
天々ぷれお「ギギィ!ムギィ!」
騎士A「…うん?」
騎士B「おい、よく見たら今来たアイツ、人間じゃないか?」
そんな言葉が聞こえてくるがもう遅い。
あいつらは加勢に来た俺をあろうことか馬鹿にしたのだ。
ゴブリンに間違われたおれの怒りは、神であろうとも納めることはできないだろう。
「ギムッ!ギムムギィムムギーッ!!」
おれはゴブリン達に指示をする。
指令を聞いたゴブリン達はすぐさま騎士団に襲いかかった。
騎士A「ふんっ!こんな見え見えの攻撃なんぞっ!!」
騎士B「しゃらくせえっ!」
騎士C「ゴブリン1人の加勢なんぞに負けるなよ、お前らっ!!」
騎士D「ゴブリン語を喋るのか…(困惑)」
おれの指示を受けたゴブリン達は、今までの優勢が嘘のように傾き、無残に殺されていく。
このまま負けるわけにはいかない。
おれは、そんな不甲斐ないゴブリン達を怒鳴りつけた。
「オッペテケンムッキー!!」
ゴブリン達の顔が恐怖に染まる。
その怒声を聞いた彼らは顔を真っ青に染め、怯えて立ち止まっていたゴブリン達をも巻き込み、騎士団へと突っ込んで行った。
そんな恐怖に押され、がむしゃらに突っ込んだゴブリン達は、皆殺しにされたのだった。
「ムギィ………。」
皆殺しにされたゴブリン達を見て、自らの負けを悟り、おれは腕を組んで敵の様子を伺った。
騎士A「隊長、ゴブリンのリーダーだけ残りやしたぜ?」
騎士B「そもそもこいつは人間なのか?」
「ふむ…。」
彼らの隊長と呼ばれた奴に目を向けてみる。
彼は何か悩んでいる様子だった。
暇なので隊長とやらの身体を観察する。
鍛えられた身体は筋肉で出来てそうで、まるで人間のようだと感じた。
髪は金髪でおしゃれだろうか、耳に銀色のピアスらしきものをはめていた。
この容姿からするに彼は人間だろう。
おれは即座に答えを出した。
「お前、ゴブリン供のリーダーだな?」
そうおれに訪ねて来た。
こいつは何を言っているんだ?
彼の言葉が理解できず、俺は困惑した。
「いかにも」
おれは正論をぶつけてやった。
「だがおかしいな、お前はさっきゴブリンに指示を出していただろう。奴らは自分より強い存在の指示には従うが、同族内の中だけだ。あいつらは人間の指示には従わない。
何故人間のお前がゴブリンに指示を出せた?」
遠回しにおれをゴブリンだと言っているようなものだろう。おれは腹わたが煮え繰り返そうだった。
どうやら隊長はおれを敵と見なしているらしい。
ゴブリンにそんな特性があるとは知らない。おれはただ指示をしただけだ。
そしたら勝手にゴブリン達が指示通りに動いただけである。
隊長が言っていることが本当だとするならば、おれはゴブリン達に同族と認められたと言うことであり、甚だ遺憾だ。
「だからなんだよ、おれを殺すのか?あぁん?」
おれはその事実が認められず逆ギレする。
「今のお前はよくわからないイレギュラーだ。排除するのが一番だな。」
そういい腰を落としおれに斬りかかってきた。
「ふん、雑魚が…。」
隊長は腕を振り上げ斬りさげポーズをとる。
殺そうとしてくる隊長とは反対に、俺は仁王立ちして腕を組んだまま動かなかった。
「(何故何もしてこない…!!)」
隊長は困惑する。
「(何か策があるのか…?)」
隊長の剣が俺の頭を切り裂くかと思われた時、馬車から大きな叫び声が聞こえた。
「やめてくださいっ!!!」
透き通るような可憐な声がした。
男ならば誰もが惚れてしまうような澄んだ、それでいて心が安らぐ声が辺りにこだまする。
ガジャンッ
おれの頭上の上で剣が止まる音がした。
「姫さま……?何故止めるのです!」
隊長らしき男は困惑しているようだ。
「いいから剣を下ろしなさい!恩人に対してのブレスは私が許しません!!」
「し、しかし…」
「二度は言いません」
「しょうち、致しました。」
困惑気味な声とともに頭上にあった剣が消える。どうやら姫の言葉が通じたようだった。
「我が騎士達が無礼を働きました。どうぞお許しを。」
そういい頭を下げてきた。
無礼も何もあんな状況は特に焦るようなことはなかった。ただ姫の言葉がなければ剣が振り下ろされていた、それだけである。
そんなことを考えていると、姫は続けて言葉を放つ。
「失礼ながら、貴方のステータスを馬車の中で拝見させて頂きました。私はテンプーレ王国の第一皇女、プレーテンテンプーレでございます。手を挙げたのにもかかわらず、騎士達に反撃をしなかったこと、また危なげないところを助けていただき、有難うございます。」
皇女が口にした。
おそらくおれのステータスの表面だけを見て全て最強だったことを見つけ、慌てて騎士を止めたのだろう。
実際は最弱なんだが今言うと死にそうなのでやめておく。
馬車を助け皇女が出てくる。
テンプレ通りな展開だ。
ここからの話の流れは馬車の同行兼護衛だろう。
「つきまして、わたくしたちの方から迷惑をかけた分、守っていただいたお礼をさせていただきたいと存じます。ですので、わたくしのお城まできていただきたいと考えておりますが、いかがでしょうか?」
やはり読み通りだ。
だがこのままだとテンプレ通りになってしまう。それは避けたい。なのでおれは奴らに告げる。
「いや、ただゴブリンごっこをしていただけだ。礼には及ぶ。貴方の言ってることはよくわからない、さらばだ。」
おれはとりあえず逃げることにした。