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第1話





「んぁえ?」



突然視界がガラッと変わった気がし、間抜けな声を出してしまう。



「え、ん??どこだここ…。」



辺りを見渡すと、周りには木しか生えておらず、人の気配は全くしなかった。



「なんでこんなところにいるんだ?」



確か俺はついさっきまで、泥水でプール大会をしていたはずだ。


来た覚えのない場所にいきなりきたものだから夢かと思ったが、服が泥だらけだったので夢ではなさそうだ。



「ーー異世界転移か!!」



即座に納得した。

俺は異世界転移の小説を読んでいたため、即座に状況を理解することができた。



「ついにおれの思ってたことを実行できる日が…。」



そう、彼はテンプレは好きだが、全部逆のことをしたらどうなるのかと言う妄想に人生を費やしていた。



「テンプレ的にはこっからは馬車が通るはずだ。…いや、ステータスオープンが先か?」



いいながらキョロキョロと見回してみる。



「馬車はいないな。となると……」



(ここはおそらくステータスを見るべきところなのであろう。)


小説にならん!を読み漁っているぷれおは、即座にその考えに至る。



「ステータスが最強系か?それともステータスが弱いけど最強系か?」



おれの中のテンプレはこの2つが当てはまる。

テンプレと言ったらこの2つなのだ、間違いない。うん。



「まぁ、とりあえずは見てみるか、スゥゥゥゥゥッ。」



おれは思いっきり息を吸う。

そして、人生で叫びたい台詞ベスト10のうちの1つの言葉を口にした。



「ステータスゥゥゥゥオーーーーーープンッッッツ!!」






ーーーーーーー

名前:天々ぷれお

体力:最強

スタミナ:最強

攻撃:最強

防御:最強

ーーーーーーー






「なんだよ、テンプレみたいなステータスしやがって!!」



そこらにある木を殴ってみる。


バチコーンッ!


木を殴ったつもりなのだが山が消し飛んだ。



「くそ!!これが最強か!!」



おれは頭を抱えながら転げ回った。

案の定このどちらかに当てはまってしまった。



「初手からいきなりテンプレだな、やってくれるぜ。」



異世界の見知らぬ場所に放られたのなら、手札は強ければ強いほどいいのだろう。

普通の人ならば大喜びなはずだ。

だがしかし、彼は違った。

このテンプレをひっくり返してやりたかった、そう願い続けてきた男なのである。


故におれは神様に言う。



「おれを最弱にしてくれ!!!!」



そう叫ぶとおれの周りに光が集まる。

その瞬間、力がドッと抜けるような感じがした。



「おおおおおおお」



おれの願いを聞き届けた暇な奴がいるな、と思いながら声を出す。

この感じは最弱になったに違いない。

確かめるために木を殴る。


ごりっ



「いってええええええ!」



思った通り力をなくしているようだった。



「ありがとう神様…強く生きていくよ。」



だが、ただ最弱というのも面白くないので、俺は魔法の踊りで、ステータスの見た目だけは最強のままにおいた。



「ステータス的には最強だけど、実は最弱……いいね!!」



テンプレ的展開からの脱出を図った俺は、次に馬車を見つける行動に出る。

すると俺のちょうど向いていた方に馬車がいた。

さっきまではいなかったはずだが、ステータスを見ていた間にきたのだろう。


あの馬車はテンプレ的に言うならば十中八九、襲われにきた馬車だ。

これは行かねばならない。



「ゴブリンか、盗賊か…。」



おれは泥まみれで駆け抜けた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




見える範囲に入ると、案の定馬車が襲われていた。

襲っているのはゴブリンだった。



(なるほど…ゴブリンか…。)


ゴブリン馬車イベントを考えながら馬車へと近づく。



ゴブリンA「ギギィ!ムギィ!!」

ゴブリンB「ギギィ!ムギィ!!」

ゴブリンC「ギギィ!ムギィ!!」



騎士A「くそ!!数が多すぎるぞ!」


騎士B「このままでは姫さまが…!」



弱気な空気が出来始めたのか、騎士達がしょしょぼした声で喋っている。


そんな空気を打ち破るかのようにおれは姿を現わす。



騎士A「なんだお前は!ゴブリンの仲間か!」



突然の来訪に騎士Aっぽい奴が声を荒げて口を開いた。



何故騎士Aはおれをゴブリンだと思ったのか。こいつらは頭がおかしいに違いない。

おれは一瞬でその考えに至り、ゴブリンに加勢することに決める。



天々ぷれお「ギギィ!ムギィ!!」



天々ぷれおと騎士団の戦いが始まろうとしていた。





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