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時き継幻想フララジカ 第二部 『乱界編』  作者: ひなうさ
第十八節 「策士笑えど 光衣身に纏いて 全てが収束せん」(分隊編 後編)
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~熊猫笑みし 引き裂かれた戦士達~

 黒煙が一杯に広がり、空一面を埋め尽くす。

 ごうごうとなお広がり続ける黒煙から無数の黒い筋が四方八方へと霧散していき、いくつもの黒い筋を形成していた。

 その中から一つ、飛び抜けて大きな塊が黒煙を纏いながら飛び出し、地表へ向けて弧を描きながら落下していく姿が在った。




 纏う黒煙が徐々に払われ、そこから姿を晒したのは茶奈であった。




 かろうじて命力の盾を展開して防いだのだろう。

 衣服は焼かれボロボロになっているが、彼女自身へのダメージは外観だけ(・・・・)であればそれほどでは無い様であった。




―――うぅッ……!!―――




 不意な爆発の衝撃を受けて手放してしまったのだろう、二本の魔剣は既に手元には無い。


 爆音と衝撃の影響で意識が遠のきそうになりながらも……茶奈はきりもみしながら落下していく自身の体を守ろうと頭を抱える様に丸まり、自身の周りに命力の盾を展開していく。


 高速で落ちていく自身を守れる確証は無かった。


 だが何もしなければ間違いなく転落死……それは一か八かの賭けでもあった。




―――




 煙を纏って落下していく茶奈を心配したマヴォが足を止め……踵を返して彼女の落ちた方へと向かう。


「女神ちゃんッ!!」


 だがその途端、マヴォの足を止めるかの様にベゾー族の集団が現れ、彼の進路を塞いだ。


「キッ、キサマら……ッ!?」


 焦りの顔を隠せない彼に間髪入れずベゾー達の命力を込めた矢弾が撃ち込まれる。

 それを空かさず躱すが……用意周到なベゾー族が逃げ道すら塞ぐ様に現れ、退避経路を巧みにコントロールしていた。


「こいつらの動きッ!? 俺達を理解しているのかァッ!?」


 両手に持った魔剣で矢を薙ぎ払い躱し続けるが……その位置は徐々に茶奈から遠ざかっていく。

 位置取りが把握出来ているからこそ、彼の焦りが募り始めていた。




―――




「茶奈殿……ぐッ!!」


 振り返り進路を変えようとするアージであったが……前のめりになるその体が急に動きを止め、プルプルと体を震わせた。


「これは……戦いだ……!! 目的を忘れるな……彼女もまた、戦士なのだッ!!」


 ギリリと歯を軋ませ、強く噛み締める。


 もし今ここで戻れば、ここまで進めていた事が無駄になる。

 ならば彼女を信じ、自分が前に進む事こそが己に課せられた最大の決断。


 ……彼はそう思い、振り返った体を再び予定進路へと向け直した。


「……マヴォが彼女の下に向かっているハズ……ならば俺は……本丸を討つ!!」


 鋭い目付きを浮かばせ、アージが飛び出す。

 茶奈達に攻撃が集中しているからこそ、アージはただひたすら王が居ると思われる場所へと勢いよく走りだしていた。




―――




 茶奈を襲う爆発が宙で形作っているその時……それを遠くから見つめる王の姿があった。


「イイネェ、イイネェ……ちャんとしッかり出来てる(・・・・)じャあないか……全く面白いモンだよネェ」


 満足する『爆弾の出来』についつい拍手を送り一人喝采する。


 そんな彼女の裏に並ぶのは……明らかに場違いな程に作り込まれた一つの木箱。

 中国語で書かれた文字が映るその箱の中には……銃、弾、爆薬……多数の武器の山。

 その横には(から)の箱が多く並び、既に中にあったであろう物はどこかへ運び去られた跡だという事を物語っていた。


「面白いモンだネェ人間ッて奴は……力を見せつければ簡単に屈服しちまう……ヒヒッ!!」


 その手に握る棒状の魔剣を構え……その柄を茶奈達が居る方向へと向け―――


「後は面倒な魔剣使い共の処理だけ……楽勝じャあないかネェ!!」


 高々と笑い声を張り上げ、王はただただ自身の引いた作戦の行く末を見守っていた。




―――




 一方その頃……作戦本部では、慌ただしい動きが見られていた。


「一体何が起きている!?」

「わかりません!! 次々とドローンが撃ち落されていきます!!」


 ドローン達が映す映像が指令本部に無数に下がる画面に映し出されているが……一つ、また一つと『NO SIGNAL』という文字を映し暗転していく。

 そして別のドローンを映した画面には、突如として何かがぶつかり空中で分解していくドローンの映像が流れていた。

 小さな何か(・・)に当たりローターを吹き飛ばしていくその様子……まるで何かに打ち抜かれている様であった。


「まるで……銃撃を受けている様な……」

「バカなッ!? 銃撃だと!?」


 林を映す画面を見るが、空からの低解像度映像では木々が邪魔をして詳細が確認出来ない。


 僅かに見える光の筋が、ドローンを貫き次々と墜落していく。

 気付けば残るは3基程のドローン映像のみ。


「ドローンの追加は可能か!?」

「予備の機体を調整するよう指示しました!!」


 想定外の事態に部隊員達が行き交い慌ただしく動き回る中……笠本と龍が指令室中心で状況を纏めていた。


「先程から茶奈さんとの交信が途絶えています。 このままこちらの状況が伝えられないとなると3人の安否が心配です!!」

「わかっている……救援部隊をこちらから送る様指示は出した」


 しかし笠本はわかっていた……彼等は支援など無くても、戦う以上最後までやり通す可能性が高いという事を。

 それ故に、今の不確定要素だらけの状況がそんな彼女達を逆に追い詰めかねないという事に気付き、らしからぬ焦りを募らせていた。




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