~ヨクボウ ニ カラレ~
リジーシア領国……石と木材で構築された大きな壁に囲まれた、おおよそ直径1キロメートル程の領地を持った小さな国。
その中は実に簡素で、木材で作られた家が連ねて一つの集合建造物を形成していた。
農業も発達している様で、壁の内側すぐには現代の畑とも酷似した作りの立地が並び、気候や風土が変化したにも関わらずその収穫には影響が出ていない様子。
やはりフララジカが完遂されていないという事がそれらに悪影響を及ぼしていない理由なのだろうか。
……という事を考える事も出来ない程に勇達3人はその桃色の雰囲気に飲まれ尽くし、彼等は男女に別れそれぞれのもてなし部屋へと招かれていた。
表向きは木材で張り合わせられた様な様相が目立っていたが……内部は全く別物であった。
まるで日本家屋を彷彿とさせる様に木目に合わせて切り揃えられた板材が隙間なく張り巡らせられ、廊下や壁を彩っていたのである。
壁に刻まれた紋様は意匠すら感じさせ、その場所が彼等の様な客人をもてなす場としては最高な程の雰囲気を醸し出す。
まるで内面だけを徹底的に昇華させた構造……そのギャップの差に、誘惑された勇達の期待を更に膨らませた。
勇が誘われるがままに男性用のもてなし部屋へと迎え入れられる。
退屈そうなアンディはまた別の部屋に連れていかれ……勇はもてなし部屋の中心に備え付けられたふわふわのクッションを備えた椅子へと導かれた。
勇が荷物を降ろして椅子に座ると、不意に触れたクッションの感触を手で感じ取り、感心するかの様に「わぁ」と声を上げて愉しむ。
もちもちとした感触と、さらっとした肌触り……吸い込まれてしまいそうな程にずるりと埋まり、自然と彼の顔が悦に染まっていった。
するとそっと彼の裏から二人の美女が現れ……艶めかしい指使いで彼の肩へそっと触れた。
途端にその感触に「ゾクゾク」と背筋に快感が走り……思わずその背筋がピンと伸びる。
すると何を思ったのか……美女二人が空いた彼の背にそっとその顔を当てて寄り沿った。
「えぇ……っ」
突然の温かい感触に勇は興奮を隠せず……その体の動きを止めたのだった。
そんな彼の前に十数人の美女がズラァーと並ぶ。
「ようこそフジサキユウ様……我々リジーシアの民は貴方をお待ちしておりました……是非とも心行くまでお楽しみくださいませ……」
そう語るのは美女達の中心に立つ熟女。
その容姿もまた妖艶たるものであり、周囲の美女達はおおよそ16~25歳程度であるのに対して熟女はそれよりも高いと思えるものの……大人独特の雰囲気が色欲を誘い歳を感じさせない。
―――レンネィさんが言ってたのはこういう事なのー!?―――
一体何が始まるのか……その期待と興奮に勇の鼻息が荒くなる。
すると突如、熟女を除いた美女軍団が彼の周囲に集まり囲み始めた。
そして先頭に沿う女性から手が伸び……彼の体を妖しい手つきで触れ始めたのだった。
―――うおお!?―――
美女達は遠慮する事も無く彼を囲い……その空間はまさしくハーレムと化した。
「ユウ様とお呼びしてもよろしいですかぁ?」
「う、うん……!!」
勇には女友達や女仲間は居るが、「女性」として対応する相手は皆無と言っても過言ではない。
すなわち彼には……こんな状況に対する耐性など有りはしない。
紅潮し、高鳴る鼓動。
鼻は垂れ、間抜けなアヒル口が意識せず浮かび上がる。
そんな彼の頬へ突然の口付け―――
―――う、うわぁあああ!?―――
「ユウ様ぁ、私達をどうぞ自由にしてくださいませ……」
「え、じ、自由ってどういう……!?」
「こういう……事で御座います……」
すると彼の正面に屈み見つめる美女がその手を取り……ゆっくりとその豊満な胸へと手を手繰り寄せていく―――
「あ、そ、そんな……そんな事しちゃ!!」
「あぁん、いいんですぅ……どうぞ好きな様にしてくださいませ」
その言葉を聞くや……勇の理性が拒否して顔を背ける。
でも心を写した指は正直で……ぎこちない動きでワシャワシャと蠢かせていた。
―――理性が……もう……好きにしていいかなぁあーーーッ!?―――
情欲、期待、抵抗……様々な感情が心の楔を解き放つ。
たちまち浮かぶは……だらけきった締まりの無い顔。
目の前に並び立つ豊満な双丘が感情のはけ口として待ち構え、そこに導かれるように無数の手が彼の腕を誘う。
その行き着く先を、血走り震えた眼で見届ける事しか今の彼に許される選択肢は無かった。




