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時き継幻想フララジカ 第二部 『乱界編』  作者: ひなうさ
第十七節 「厳しき現実 触れ合える心 本心大爆発」(分隊編 前編)
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~ホンネ ノ カノジョ~

 満足そうな面持ちを浮かべる心輝。

 そんな彼の横で並び歩く彼女も妙に満足気な笑顔を醸し出す。


「よほど欲しかったのねぇ」

「当然っすよ、ダイジェンディ―ファンなら即買いですわ」


 大きな箱を前に、「帰りはどうするのだろう」などと思うレンネィであったが……彼の喜びを体現する朗らかな顔を見ていると、気付けばどうでもよくなっていた。


 その喜びがどこか彼女にも伝染(うつ)ったのだろうか……どこかソワソワとした態度を見せ始める。


「それじゃ……ちょっとだけ私の趣味にも付き合ってもらおうかしらね」

「レン姐さんの趣味って?」




 そんな二人が向かったのは1Fフロアの端にあるペットショップ。




 大型店舗ともあり、そこには多くの犬や猫の幼体、ハムスター、ウサギ、魚など多種のペットが取り扱われ、それらの育成道具などもしっかりと取り揃えられている。

 買おうと思う者だけでなく、眺める為に赴く者も多く見られ、雨天の今日でありながらも盛況な様を見せつけていた。


「レン姐さんってペット飼ってましたっけ?」

「いいえ、飼える訳ないじゃない。 ただでさえ出張が多いのに……」

「そうっすよね、なんでこんな所に?」

だから(・・・)よ」


 そう言い残し、首を傾げる心輝を置いて子犬・子猫の展示されているコーナーへと一目散に向かう。

 取り残された心輝の目に映ったのは……いつもとは全く異なる彼女の様子であった。




「あぁ~コーギーちゃんコーギーちゃん今日も元気ねぇー……ううーん!!」


 ガラス越しにコーギーの幼体が飛び跳ね、レンネィに反応する姿を彼女も歓びで応える。


「キャー!! ポメちゃーん入ってたー!! ウフフ、ウフフフ!!」


 人を見慣れているのだろうか、ポメラニアンの幼体が彼女の登場に尻尾を小さく振って応え、それに彼女も合わせるように指を振って応え返す。


「あらっ、今日もみんな元気ねぇ~!! ぴょんぴょーん!!」


 子猫のコーナーに行くと、小さな猫達が元気よくじゃれついているのを見て反応しつい挙動に合わせて体を揺らす。


「あらっ、コロコロ……ででーん!!」


 猫達の仕草に合わせ、ついつい声に出しては仕草を擬音で口ずさむ。


 すると……そんな彼女の事を良く知ってるであろう女性店員が寄って来た。


「今日はどの子抱かれて行きますか~?」

「じゃあねぇ~今日はペルシャの子にしようかなぁ!!」


 既に常連なのだろう……店員が手馴れた対応でレンネィの要求に応える。

 笑顔で「わかりましたぁ」と応え、店内に入っていくと……ペルシャ種の個体を抱きかかえてレンネィの元へ戻ってきた。


 そして抱えられた子を受け取ると、嫌がる素振りを見せない猫を体全体で抱きかかえる様にうずくませる。


「う~~~モフモフいいわぁ~……ぎゅう~!! ぎゅう~~~~!!」




 そんな一連の……普段のレンネィからは考えつかない仕草や言動を前に……心輝はただ固まり見守る。




 だがそれは決して呆れや落胆によるものでは無かった。




―――か……カワイイ……!? めっちゃカワイイ!!??―――




 その威力や……手に持ったプラモデルの箱をつい落としてしまう程に……衝撃的。




「うう~ん、チュッチュしたい~!! うーん悩ましいー!!」




―――チュッチュされてぇーーーーーー!! ……ハッ!?―――




 その時彼は気付いてしまったのだ。




 彼女が皆に構ってくる態度こそ違うものの……本質は同じなのではないか。

 彼女が皆を心配し手を差し伸べてくれるという事は……こういう事なのではないか。


 つまり、今の姿が本当の彼女の在りたい姿なのではないか……と。




 それに気付いてしまった時……心輝の心に強烈な衝撃が電撃の如く(ほとばし)った。




―――ヤベェ……ヤベェーーー……!!―――




 ペルシャ猫が元の場所へ帰され、ペット達との触れ合いが終わりを告げる。

 僅かな時間ではあったが、彼女にとってはとても有意義な時間であったようだ。


 レンネィが惜しげも無く満足げな表情を浮かべ、自分の車のある場所へと向かって歩く。


 心輝もその後を付いて回る様に……僅かに距離を空けて歩を進めていた。

 その頬をなにやら赤く染め上げて。


「このままちょっと家に帰るわね。 荷物降ろし手伝ってもらっていいかしら?」

「ウス……」


 車へと辿り着くと、心輝は無心でプラモデルの箱を無理矢理後部座席に押し込む。

 そして二人を乗せた車は何事も無かったかのように軽快に駐車場から発進したのだった。




 

 先程まではイキっていたシンが妙にしおらしい。

 そんな彼の様子を妙に思うレンネィであったが……静かなら好都合とばかりに駐車場内を軽快に走らせた。


「玩具の箱だいじょうぶ?」

「へ、平気っす……」


 焦る様にねじ込んだパッケージは車の壁面と他の荷物に揺られ大きく歪んでいた。

 本来のファンであればこんな事は許せないであろうが……今の彼はそんな事が考えられる様な精神状態では無い。




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