~魔特隊杯 第二周目~
さぁレースが始まり、徐々に各者の位置取りがばらけてまいりました。
依然トップは後続を大きく引き離して園部亜月、持ち前の高速移動は伊達ではありません。
あの〝すぴぃど〟で迫られては生半可な相手は慌てふためくのみであろうな。
後続に続くのは、園部心輝、アンディ、ナターシャ、レンネィ、そこから少し離れてマヴォ、アージ、藤咲勇の後方集団、大きく離れて相沢瀬玲が最後尾。
思ったよりも荒れませんなぁ。
ご期待なさっていたのですね。
しかしどうにも各者、最初の周回ともあり慎重に事を運んでいる模様。
トップの亜月選手がほぼ独走状態に対し、後方はまだまだ余力を残すつもりでしょうか。
コースを知る為に各自が状況を確かめているのでしょうねぇ、とすれば勝負は二週目からが本番といったところでしょうか。
さすがに戦火を潜り抜けて来た彼等ですから、戦いの基本をわきまえてるのでしょうね。
それが果たしてレースにどこまで通用するか……。
冷静な状況判断有難う御座います。
本レース、3周となっております。
果たしてこのトップとの差を埋める事は出来るのかー……。
ヘアピンコースを曲がり、ダウン&アップストレートに差し掛かりました亜月選手。
ここで早速パワー全開です。
なかなかの馬力よ……しかしあれ程の力を出し続ける事は如何に強者といえど厳しいのではなかろうか。
といいますと?
命力は有限故、あづぅ殿が持ちうる命力が尽きた時……それが失速の時に御座る。
あれ程までに飛ばし命力が尽きようものなら……今先頭に立とうが直ぐに追い抜かれてしまおうな。
成程、彼女の底力が尽きた時が彼女の落ち目、という訳なのでしょう。
ん、お、おや……。
おやおや……ジョゾウさんの懸念が的中しましたね……。
おっと亜月選手、突然の失速ー!!
アップストレートが登りきれないー!!
「んうーもぉ~飛ばし過ぎたぁ!!」
残念亜月選手、完全にガス欠の模様……一気に失速し通常速度へ戻ってしまいました。
歩いておればいずれ回復するであろう……しかしこの調子であれば〝れぇす〟復帰は難しいであろうなぁ。
レースカーであれば本来加速が重要となってくるこの登り坂ストレート、人間の足には負担が大きかったかー?
後続からやってきました園部心輝、アンディ、ナターシャに抜かれ次々と順位を落としていきます。
順位が入れ替わり、間も無くスタート地点に各者がやってまいります。
一番手に加速するのはー……園部心輝選手。
後続のアンディ、ナターシャとの距離を大きく離しストレートを高速で一気に移動!!
あっという間に観客席の前を通り抜け今、一週目を終えました。
後続の選手達もやってきましたねぇ~。
後続が次々と一週目を終えます。
先程より順位が変わりまして……レンネィ、アンディ、ナターシャ、そしてすぐ後ろに追い付いてきたマヴォ、相変わらずアージと勇……徐々のその均衡が崩れつつあります。
アンディとナターシャ選手が位置を落としましたね、全体的に速度が上がっているからでしょうか。
言われて見れば……確かに一周目とは明らかに速度が違いますねぇ……。
先程の亜月選手とは違い、ある一定で加速を留めて距離を保ち続ける心輝選手。
最初のカーブ、おぉ、いい曲がりです、コツを掴んだのでしょうか。
車でならありえない直角ターン、これが人間の柔軟さかー!!
〝こぅすあうつ〟せねば基本的にどのように動いても問題はない故、あのように動く事は非常に有効と言えるであろうな。
おっと、ここでアンディとナターシャがマヴォ選手に抜かれ―……レンネィ選手と一騎打ち状態となっております。
お互い道を譲りません!!
ぶつかりあう二人が戦士の意地と根性がここに見受けられような。
二週目の中盤……トップは園部心輝、少し離れ後続集団が次点を狙い激しい道の奪い合いが続きます。
おや、少しづつアンディ選手、ナターシャ選手が失速していますね。
どうしたのでしょうか?
命力に関しては相当自信があったようですが……恐らく体力不足……なんだかんだ言ってやはり鍛えた地力は違うみたいですねぇ。
ここへ来て経験不足が露呈してしまった二人の選手、そこへアージ選手と藤咲勇選手が追い抜き順位を二つ繰り上げた~!!
さすが勇ど……選手、見事な走りに御座る。
しかし、本来命力が少ない事で有名な藤咲勇選手、ここまで戦えるのは一体何故なのでしょう?
拙僧の解釈であるが……命力は己が持つ体力や筋力を増幅し、常人には無き力を発揮出来るようになる触媒の様なものであるが……その依存は基本の体力等に随従するもので御座る。
いわば、基礎肉体能力が基本値に対して命力値分だけ乗算される様なもの。
しかし勇選手は命力の乗算値こそ少ないものの……その母数、基礎肉体能力の向上に重点を置いているので御座る。
つまり簡単に言うと、普通の魔剣使いが肉体1x命力2=2なのに対し、勇君は肉体2x命力1.5=3という訳なのですね。
左様。
力説、有難う御座います。
肉体を鍛える事を重視した藤咲勇選手の走りは、魔剣使いの中でも手練れと呼ばれるアージ選手に負けるとも劣りません。
徐々に第二集団のレンネィ選手とマヴォ選手に近づきつつあります。
心輝君も徐々に距離を詰められているようですねぇ、表情から焦りを感じます。
心輝選手、ヘアピンコースのS字ゾーンへ入りました。
ジグザグ走行が綺麗ですねぇ、手馴れた感じが見受けられます。
ショートカットを狙うかと思っていたのですが、意外と堅実派なのかもしれませんねぇ。
失速したようには見えない所を察するに……温存でしょうか、園部心輝選手。
そのままヘアピンカーブを抜けてダウン&アップストレートへ……。
おっと、後続からマヴォ、レンネィ選手の登場、どうやら順位が入れ替わったようですね。
少しずつですが、距離を詰めに行っていますねぇ……動向が怪しくなってきた様ですよ。
二つ目のカーブ、そこを過ぎればファイナルラップが待つストレートコース。
心輝選手、アップコースを飛び抜けて……そのまま一気にストレートに躍り出る!!
再びグワイヴの爆炎による加速!!
速い!!
しかしあの魔剣から噴出される炎、後続者に熱くないんでしょうか?
その心配は御座らぬ。
命力の力で具現化させた自然現象は敵意が無い相手には何の影響も御座らん。
大気に命力が吸収されていくので発火による熱の影響は無いと思うてよかろう。
ただし、茶奈殿の飛行の様な、周囲を押し出していく様な力には影響がある故注意なされよ。
あの飛行能力も攻撃技の応用らしいですからね、炎そのものに殺傷能力があると違うのでしょう。
そのまま心輝選手がトップに、二番でマヴォ選手、三番手レンネィ選手、そこを追従するアージ選手と勇選手がせめぎ合いながら後を追います。
さぁ選手達がファイナルラップ合図のフラッグを受け、最後の周回を回ろうとしています。
果たして最後まで無事にレースが終わるのか、そして栄冠は誰の手にー!?
ここで一旦の〝しぃえむ〟に御座る。




