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時き継幻想フララジカ 第二部 『乱界編』  作者: ひなうさ
第十四節 「新たな道 時を越え 心を越えて」
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~それぞれの行く末~

 勇達は獅堂との激戦の末、辛くも勝利を収めた。

 だが……たった一人の悪意から始まった戦いは、勇達にこれまでに無い程の大きな傷跡を残す。

 決して拭う事の出来ない心の傷は深く……勇達の発展途上の心に暗い影を落とす事となった。




 あれから数日……。

 勇達は普段の生活へと戻っていた。

 しかし戦いで傷付いた勇の心は癒されぬまま……荒んだ心を隠しながら日々を過ごす。

 愛する人を失った悲しみ、踊らされていた苦しみ……その全てを理解出来る者など居はしない。

 友人達もそれを判っているからこそ、必要以上に干渉する事は無かった。




 そしてそれは勇達だけではない……この戦いで共に立った者には等しく何かしらの()を負ったのである。




 獅堂の凶刃によって倒れた剣聖。

 その刃は心臓を貫き、常人であれば即死してもおかしくない程の傷を負ったのだ。


 そこは幸いにも命力を極めたと言われる剣聖……彼は辛うじて生き延びた。


 体の操作を司る命力の使い方に長けていた事が功を奏し、その力を以って九死に一生を得たのである。

 しかしそんな彼であろうと心臓を修復する事など簡単に出来る筈も無く……生きる為に、起き続けながら命力をただひたすらに心臓を正常に動かし続ける為に使う必要がある。

 その為にも……彼の身柄は日本政府の管理の元、厳重かつ最高の環境下に移され治療を行う事となった。

 落ち着くまでは面会謝絶……勇達ですらその姿を見る事も叶わない。




 アージは獅堂との戦いで役に立つ所か、結果的に勇の足を引っ張ってしまった事に自分の不甲斐なさを感じていた。

 その原因は獅堂にあり、彼の致す所では無い……だが、それでも彼はただ自分の力の至らぬ所が堪らなく許せなかったのだ。

 彼等も人間と同じ感情を持つ魔者として……単にそう思っただけに過ぎない。

 武人だからではない……粋がって前に躍り出て醜態を晒す、これが恥と感じる事に何の違和感があろうか。


 彼はマヴォと共に世界を回ると言い残し、二人揃って特事部本部から旅立った。

 次に会う時はいつになるであろうか……それはきっと遠くない先の話だろう。

 勇はそう願い、彼等を笑顔で送り出したのだった。




 ジョゾウは獅堂との戦いの一件を経て、彼に続くカラクラの王として里を統べる者となった。

 だがそれはあくまでも仮の形……彼を慕う者こそ多いが、当人にはその自覚は無い。

 ただ、獅堂という存在に最も長く触れていたからこそ……その心境は複雑だった。


 一時でも彼を王として信用したからこそ……自分の立場そのものに疑念を感じていたのだ。


 獅堂という存在が彼等カラクラ族に残した爪痕は深く、多くのカラクラ族が人間との交流に否定的な意見を(ほの)めかす。

 しかしジョゾウは人と共に暮らす未来に想いを馳せ……例え批判されようと彼等を説得する為に敢えて王の座を承ったのである。


 戦いを終え、落ち着いた頃……ジョゾウは一人訪れた勇と言葉を交わす。

 いつかまた再び相まみえた時、それがお互いの再び訪れる新しい門出となるであろうと。


 再会を願い……勇はジョゾウと暫しの別れを告げ、その場を発ったのだった。




 レンネィは帰るべき故郷とも言えるフェノーダラ王国を失った。

 決してかの国は彼女の生まれ故郷では無かったが……彼女の人生で最も長く滞在した地であり、勇と懇意だったエウリィに至っては幼少の頃から良く知った間柄だった。

 だからこそ、獅堂にフェノーダラを焼かれた事を知った時……きっと彼女は勇以上に怒りに打ち震えたのだろう。


 それが獅堂の付け入る隙となってしまったのはなんという皮肉だろうか。


 彼女は今までに幾多もの戦いを退け、その心は強く気高い。

 近々立ち上がる【対魔者特殊戦闘部隊】の隊員第一号となるべく……彼女は今、福留の元で現代の事を必死に学ぶ。

 そんな彼女の心は既にそんな哀しみをも乗り越え、未来へ向けてその足を踏み出していた。


 時には勇達の元へ訪れ、彼等をサポートしながらも……今日もまた一人戦場へ赴く。

 全ては、彼女が出来うる事を成し遂げる為に……。




 例え彼等が幾ら傷付こうと、世界は止まらない。

 彼等を求め、協力を請う人々が居る。

 そしてそれに応えたい勇達が居る。


 心を蝕まれてもなお、彼等は抗い、前に進む事を選んだ。




 世界が変革を迎えておよそ1年……新たな年を迎え、少年達は行く。


 そこに護りたい者達が居るから。

 過ごしたい生活が在るから。

 笑い合いたいから。


 人並みの幸せを求める為に、彼等は人並みならぬ世界へ足を踏み出す。


 知ってしまったから。

 関わってしまったから。

 望んでしまったから。


 それが彼等の在り方。




 世界はなお、混ざり続ける。




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